いよいよ、古典文法、助動詞の理解のクライマックスがやってまいりました。
今日は古典助動詞の「意味」、職能や文法的意味と呼ばれていますが、要は「訳す」「現代語訳にする」ということに入ります。
ここまでが
1 助動詞を「接続」「意味」「活用」で整理すること
2 助動詞を「接続」で整理するmanebikokugo.hatenadiary.com
でこのあとが
3 今回ですね。助動詞を「意味」で整理する
4 助動詞を「意味」で整理する その2 未来形の助動詞をまとめる
5 いったん復習 品詞分解をやってみよう
6 助動詞の「意味」の補足集
7 助動詞の「活用」を覚える
というような感じの予定です。6の前には、疑問文の話をいったんはさまなければいけないんですけでね。まあ、こんな感じで助動詞を説明する予定です。夏休み前には、全部説明しなきゃ受験生のみなさんに間に合わないと思うので、なんとかがんばりますが、とにかく、今日がひとつの山です。がんばりましょう。
- 「意味」でまとめるってどういうこと?
- 「意味」は訳と職能。訳が決まって職能が決まる
- まずは整理する「箱」を覚えよう。「当たり前」「現代語」「時制をあらわす助動詞」の3つだけ。
- 箱に助動詞を入れていこう!
- 助動詞の2/3が終わり
「意味」でまとめるってどういうこと?
まずは、「意味」でまとめるっていう方針を説明します。私の文法の説明は、「使う形」で整理するということがひとつの方針でした。さっきの3つの箱の話でやりましたね。
使う形とは、品詞分解のことです。
品詞分解の順番は、
- 動詞を現代語でみつけて活用させる
- 活用形から接続の箱を使って助動詞にあたりをつける
- 助動詞が予測できたら、意味の箱を使って意味をみつける
ということですね。
もちろん、この段階で、助動詞がだいたい何か見当がついているわけですから、覚えてさえいれば、なんでもいいんです。
でも、その場合って、ひとつの助動詞に、いくつかの意味が紐づいていますよね?
たとえていうなら、28人の生徒それぞれを独立して、28人に紐づいた28個のことを覚えている状態です。
これでは、
- 記憶の限界を超えている=記憶の限界は7つ
- ド忘れしたときにリカバリーする方法がない=それぞれが独立している
というような状態なんですね。ですから、ここに「箱」を並べてリストを作って、忘れたとしても、そのリストを全部広げるような方法をとりたいんです。
ちなみに記憶の話は、こちらです。
つまり、品詞分解をしていくときに、ある助動詞が見つかって、ぱっと意味が浮かぶならそれでよい。でも、浮かばなかったときに、この「意味」のリスト=箱を順番にあけて、どこに入っていくか探していく、そんな状況を作りたいんですね。
「意味」は訳と職能。訳が決まって職能が決まる
では、「意味」とは何なのか?
これは、「訳」ということですね。
「き」=「~た」
咲きき。=咲いた。
というように訳ができること。これが大事です。だって、本文にしたって、問いにしたって要は訳がほしいわけですから。
そして、その訳が何という職能(文法的意味、なんて言いますね)かを知っていること。
この二つ目の職能は、本当はどうでもいいんです。だって、わかれば、訳せればいいんですから。
ところが、訳「~た」なんて言っているとよくわからないから「過去」なんて名前を付けた方がわかりやすい、説明しやすい、となるわけです。
そうすると、今度は入試で、「過去」とか「完了」とか「意志」とか、そういう職能自体を答える問題ができて、そして、試験で問われる。つまり、覚えないといけないわけですね。
こうなると、学習者や先生の意識が逆転して、「職能」で整理して、その「職能」の訳を教える、という逆転現象が起こります。これも古文がわからなくなるひとつの要因。
順番は逆です。決めるのは、「訳」。そう訳すから、ここでの職能が決まる。
これはとても大事なことなので、知っていてくださいね。あとで、未来形の助動詞のところで具体的に説明します。
まずは整理する「箱」を覚えよう。「当たり前」「現代語」「時制をあらわす助動詞」の3つだけ。
というわけで、さっそく、意味の箱=リストを覚えましょう。
実は用意する箱はたった3つだけです。
- 日本人なら知っていて当たり前=当り前グループ 2つ
- 現代語とまったく同じ、覚えなくていい=現代語グループ 2つ
- 残りは全部「時」をあらわす=時制のグループ 2つ + 2つ
です。
当り前グループ
ここは「打消し」と「断定」のふたつを入れておきます。
打消し…~ない
断定…~だ
現代語グループ
ここは「受身」と「使役」のふたつ。
受身…れる・られる
使役…せる・させる
時制のグループ
まず、「過去」と「未来」。現在形は助動詞はいりませんね。
もうひとつは英語をイメージすればわかりますが「進行形」と「完了形」です。
過去…~た・未来…~だろう
進行…~ている・完了=これが現代語では死んでしまっているので対応が難しいのですが、(場合に応じて訳し分けが必要になります)とりあえず、「~てしまう」で覚えましょう。
進行:「~ている」、完了:「~てしまう」ですね。
まずこれを覚えてください。
この図が頭の中で再現できるようにしたら、先に進みましょう。
必ず、思い出せるようにしてくださいね。
箱に助動詞を入れていこう!
さて、この箱の引き出しの中に、助動詞を入れていきますが、原則的には2つずつ入ります。この2つを唱えるといいですね。
ひとつのグループに二つの箱があり、その箱にふたつの助動詞が入ります。
日本人なら当たり前に知っている=打消し・断定
打消はひとつだけ 「ず」です。
訳は~ない。
ひとつ、というのもすごいこと。「ず」以外の助動詞に、「打消」と書いたら絶対に×です。だって、打消は「ず」ですから。
断定は「なり・たり」。5回ぐらいとなえてください。
訳は「だ・である」
10円なり、100円なり、というアレです。「たり」は「受験生たるもの」とか、「紳士淑女たれ」とかのやつです。
キテレツ大百科のコロ助は、「キテレツ遊ぶなりよ」なんてしゃべるんですが、別名断定のコロ助、でして、「キテレツ遊ぶんだよ」としゃべてるので、口は悪いですね。
現代語と何も変わらない=受身・使役
現代語グループなので、
受身=れる・られる=る・らる
使役=せる・させる=す・さす
ここまで何度も説明してきましたが、「る」をとって上の音をuにするのが古文ですね。
というわけで、簡単ですね。
残りは全部時制をあらわす=過去形と未来形、進行形と完了形
というわけで、残りは全部、時をあらわす助動詞なんですね。基本的そうまとめて問題ないと思います。
過去:き・けり
訳は「た」ですね。厳密な違いは後でしましょう。今回は説明せず、です。
未来:む・べし
訳は「だろう」でとりあえず。でも、本当は主語で訳し分けをしますよね?その話はまた次回、です。
雨降るべし=雨が降るべきだ、ではなく、雨が降るだろう、ですね。
進行形:たり・り
訳は「ている」。あとで説明します。
ポイントは、文法の教科書に存続・完了とあるからって、勝手にかえて「完了」だけにして、まとめて4つ、としないこと。すぐ説明します。
完了形:つ・ぬ
訳は「てしまう」
単独になったときは、「てしまう」は変に感じるので「た」としてもいいのですが、「た」としてしまうと、過去との差が出なくなり不都合がでてきます。なので、ひとつなら「てしまう」
ここのところ、書いているので、わかっていただけると思いますが、勝手に覚えることを減らさない。何個も訳があるなら、何個も覚えなければいけない。何個もあると混乱する、だから、整理して幹を作る。それから細部にいく、という考え方です。
あれ?
もう少しあったような…
そう思ったあなた。
正しい。
残りは全部、「未来形」の仲間。というわけで、「未来の輪」として、次回まとめて覚えましょう。なので、まずはここまでです。
では、助動詞が言えるかも含めて、もう一度思い出しましょう。
進行形の助動詞って何?
さて、今日の最後です。
進行形の助動詞としていますが、古文では「存続」といいます。なぜ、進行形かというと、もともと
咲きて・あり
が、つまって
咲きたり
になったからです。
咲きて=咲いて+あり=いる
つまり、咲いている。
なので、進行形のイメージです。でも、古文では「存続」ですね。覚えなおしです。
では、これがどうして、完了にもなるのか、ですが、
花なら
咲きてあり=咲きたり=咲いている
なんですが、
雪の場合だと、困る
雪振りて=雪が降って=まさに降っている感じ
あり=それがとけずに目の前に 残っている。
つまり、昨日雪が降って、今日はやんだけど、まだとけないでつもっているよ、が
雪降りたり。
になってしまう。これを「降っている」では困るわけで、これは「降った」の方がよい。だから完了ですね。
花や雪なら明確にわかりますが、人になるとあいまいです。
なので、
原義は「ている」、困ったら「た」
がいいと思います。
助動詞の2/3が終わり
これで助動詞の2/3がほぼ(未来の輪がまだですが)終わりです。助動詞なんて楽勝、というのは未来の輪を説明した後にしましょう。