今日から漢文の具体的説明に入ります。
今日は「構文」。意外と軽視されておりますが、国立や難関では、この知識がないとたちうちできない可能性が生まれます。SVOですね。
漢文の第一回は比較的シンプルに説明しました。
が、思ったより、スターがぱぱぱとついてもしかしたら、漢文の学習方法にニーズがあるのか…なんてことを思いつつ、第二回目も書き進めます。
まあ、受験のためのページですから、大人たちにとってはあまり関係のないページかもしれませんが、書きたまって参考書のようになったらいいなあ、というのが、今のところの目標です。
- 漢文の学習ポイント
- 構文 基本は英語と一緒。だから、返り点が必要になる。
- 返り点がつくのは…
- 返り点のつけ方・打ち方
- SVOを意識する。
- 有無多少難易は下が主語
- この構文を覚えておこう!「先生有怒買」
漢文の学習ポイント
前回のところを読んでいただければわかりますが、漢文の学習には、次の観点で理解することが大事です。
前回のものをコピーします。(できれば全部読んでくださいね。)
構文
要はSVOの語順ということ。これだけで選択肢がしぼれたりします。最近のセンターは全部ちゃんとしてたりしますが、それでも知っている必要があります。助動詞にあたる助字や置字なども、役割をわかっていることが実は大事。
句法
よくどの参考書でもどのブログでもやれといわれるものですね。
漢字だけの状態から
1 返り点
2 送り仮名
3 意味
まで言えるようにすればOK。句法ごとに覚え方にコツがあります。
漢字1 覚える
思っている以上にテストで問われやすく、また、本文に句法よりも出現するのが覚えてほしい漢字の読み。
リストを手に入れて覚えましょう。同訓異字とか、和漢異義語までちゃんとやりたいところ。
漢字2 日常生活
こればかりは言語感覚を働かせる練習をするしかない部分。漢文でいうなら、注がついているときに、「この漢字がこういう意味なのか」と考えたりすると練習になります。満点とりたいなら、ここまでやらないとね。
そして、読解
もちろん、読解も必要です。
特に最後の漢字2日常生活、なんてのは、読めば読むほどふくらみます。
というわけで、今回は構文の話です。
で、一応ことわっておきたいと思います。私は国語の教員なので、大学で中国文学を学習はしています。でも、何を血迷ったか、第二外国語に中国語を選択しませんでした。だから、ある意味では、大学での中国文学も、日本文学として中国文学を勉強したようなものです。
何が言いたいかというと、これから偉そうに説明していきますが、中国語をまったく理解していないで説明しているということ。
本当は、中国語を理解して、中国文学をきちんとわかる先生に教えてもらうのがいいのかもしれませんが、国語の授業では必ずしも中国語をやっているわけではないし、中国語の知識を学ぶことが受験でマストか、と言われれば、必ずしもそうではないと思うので、書いてしまいます。
だから、専門的な説明がほしかったら、塾や学校で、中国語を知っている先生に聞きにいくことをおすすめします。
でも、とりあえず、受験を突破しようぐらいなら、たぶん私程度の説明でもあまり問題ないと思います。
構文 基本は英語と一緒。だから、返り点が必要になる。
中国語は基本的に英語と同じ「SVO」の語順です。そうすると、日本語の語順と異なります。
もともと、日本人は中国から字を借ります。言葉を借りるわけではありません。日本語を、中国の文字で書き表そうとするわけですね。
最初の発想は音を借りる。昭和のわたしたちでいうと「よろしく」を「夜露死苦」と書く昔懐かしい暴走族のようなものです。
ただ、これ、面倒くさい。なので、省略するパターンとして「本当の字」「真名」という漢字に対して、「仮の字」であるところの「仮名」が生まれますが、全部ひらがなで書けば、これもまた面倒ください。
もう一方の発想は、中国の言葉で書いたものを、そのまま、日本語として読んじゃおう、というものでした。
だから、漢字一字を日本語として読むわけで、その際、仮名なんてないですから、助詞とかも読むときには適当に補って読むような発想になるわけです。
そうすると、中国人が
「読書」
と書いても、
私たちは、
「よむ」と「しょ」になるわけで、そうなれば「しょをよむ」と戻る必要が生じてくるわけです。
英語 I read a book.
中国語? 我 読 書
日本語直訳 私 読む 本
正しい日本語 私は 本を 読む ※順番が入れ替わる
したがって、返り点が必要になります。
大丈夫ですか?
英語 I want to read a book.
中国語 我 欲 読 書
日本語直訳 私 欲する 読む 本
正しい日本語 私は 本を 読み たい
大丈夫ですか?
じゃあ次に行きます。
英語 I don't read a book.
中国語 我 不 読 書
日本語直訳 私 ない 読む 本
正しい日本語 私は 本を 読ま ない
です。
要するに
- 日本語はあったけど、日本の文字はない。
- だったら、中国語で書いちゃえ。
- でも、読む時は日本語だよ。
- 仮名は正式なものではないし、漢字と仮名の整理はついていないから、漢字に仮名をおくるっていう発想はないよ。
というようなことで、漢字だけ、それも中国語のように書いていく、という感じでしょうか。
返り点がつくのは…
というわけで、返り点がつくのは、英語との語順の違いを考えるとほとんどわかります。
動詞
まずは動詞は先に来ますから、たいてい返り点が必要になります。
助動詞にあたるもの
漢文では助字という言葉を使うのですが、いわゆる助動詞のような役割を果たすもの、
不・可・能や再読文字など
は、動詞の前に来ますから、返る=戻る 必要があります。
前置詞にあたるもの
前置詞といっていいのかわかりませんが、そういう言葉は名詞の前に来ます。
たとえば、
from school
中国語 自 学校 自=より
日本語 から 学校
のような感じになりますね。これも読む時に戻ります。
こうした語は、たとえば、置き字なんていうことにもつながります。
at school
中国語 於 学校
となるわけですが、「於」は読まないで、学校の後に送り仮名としてつけてしまうなんていう手も使います。
与 は「と・ともに」などと読むように、and や with に近い役割を果たしています。
だから、太郎 与 花子 となると、意味としては「太郎と花子」なんですが、
漢文として読む時は
TARO with HANAKO のイメージにして読む必要がありますから、
太郎 与(二)花子(一)
太郎と花子と(与)
と読むわけですね。
こうした文字はいわゆる「返読文字」として、参考書にまとめられているわけですが、大きくわけるとこの3つだと理解しておくといいですね。
そのほか、といっていいのかどうかは私には正確にはわかりませんが、
「所」などは、大体下に動詞が来て戻る感じになります。
返り点のつけ方・打ち方
返り点をうつ場合は、次の法則でやると間違いが減ります。
- 日本語としての文章を決める=書き下し文が示されているならそれを使う。意味しか与えられていないなら、書き下し文のイメージを作る。
- 漢字を読む時は、何もつけない。そのまま。
- 読まない時は、返り点をうつところ=左下に○をつけておく。
- 読む順番に返り点を打ちながら上に戻る。
- 一字戻る時はレ点
- とぶ時は、一・二点。
- 一・二点をとびこえる時は、上・中・下点
- それを越える時は、甲・乙・丙
これだけです。○を打っておいて、下から順番に打っていけば間違いません。注意点は、一字の時はレ点なので、下から、「一・二・三」と戻りたくても、「二」から一字しか戻らない時は「三」ではなく、「レ」を使う、ということです。
やってみましょう。
我 為 人 所 怒
受身構文ですね。
我 人の 怒る 所と 為る
と読むとわかります。
我 は読むので何もつかない。
為 は読まないので、とりあえず○。何かがつきます。
人 は読むので何もつかない。
所 は読まないので、○。
怒 は読みますが、所に戻りたい。一字ですから所がレ。
所から為に戻りたいのですが、とんでいるので、一・二
所に一、為に二 です。
結果として 所は 一レになりましたよね?
こんな感じ。
じゃあ、これはどうでしょう?
先生 使 人 買 弁当 食 飯
先生 人をして 弁当を買い 飯を 食はしむ
使役構文です。またあとで説明しますが、「弁当を買い、食はしむ」と読んでいますが、意味としては「弁当を買うこと、飯を食うこと、の両方をさせている」となります。
さあいきましょう。
先生 読むのでつかない。そのまま。
使 よまないので、○。保留です。
人 読むのでつかない。
買 読まないので、○。
弁当 買うに戻りたいですから、ここに一、さっきの買うは二です。
食 読まないので○
飯 食うに戻るのでレ。
そして食うから、使に戻りたい。とんでいるのから、一・二といきたいところですが、一・二点を飛び越えるので、上・下とうちます。
先生 使(下) 人 買(二)弁当(一)食(上レ)飯。
です。
SVOを意識する。
枝 折 。
さあ、何て読みますか?
「枝を折る」
読みたくなりますよね?でもだめです。
「枝を折る」なら
折(レ)枝 。
のはずです。
動詞が枝だとするなら、上に来る可能性は二つ。
- 主語。つまり、「枝が」と読む。
- 修飾語。動詞にかかる修飾語なら上に来ます。
この場合、修飾語ととるのは苦しいですから、やっぱり主語?
となると、動詞の読み方を変えるというのが無難です。
枝 折らる。
というように受身で読む、なんていうことが漢文ではおこるんです。どうして、受身にできるの?というのは、中国語を勉強していない私には、答えられません。ごめんなさい。でも、そんなことが起こるのが漢文です。突然使役でとるというのも、当然関連する語があるとはいえ、そういう風に読むと通じる、というのが日本人の感覚だと思います。
有無多少難易は下が主語
この例外にあたるのが
「有・無・多・少・難・易」の6文字。
ぶつぶつと唱えて今、覚えましょう!
この6文字は下が主語。
無人島
は「人がいない」修飾語は上で、「島」。
司会者なら
「会を司る」「人」。
この構文を覚えておこう!「先生有怒買」
さあ、この文の意味は?
考えてみてください。
まず、「有」が動詞だと気づきます
有は下が主語ですよね?
だから選択肢に
「先生がいる」となっているものがあれば、それは×です。下が主語ですから。
では主語は何かといえば、
(怒買)ということがある、あるいは、(怒買)という人がいる
ということになります。
次に
怒 買
です。これは動詞を並列とみたり、いくつかの可能性が考えられるのですが、すくなくとも、選択肢に次のものがあれば×です。
怒りを買う。
なぜなら、「怒りを買う」なら「買(レ)怒」という語順でなければいけません。
もし、VOという語順とみるなら、
「買うことを怒る」です。それがある。
買うことを怒ることがある。
買うことを怒る人がいる。
となると、先生は何か、ですね。
動詞の上にあるのは、主語でなければ、修飾語だと考えましょう。
先生に
と読めばつながります。有の上は、「~に」とふることがほとんど。
というわけで、
先生に買ふを怒る有り。
です。
先生の中に買うことを怒るやつがいる。
買い食いするな!という感じ。
センターの選択肢を選ぶときに、本文の内容とか展開とか前後関係で選ぶだけでなく、そのものの語順を見て、あり得ない、ということを知っていてください。
ただ、残念なお知らせもありまして、昔のセンターは結構これで答えが決められているんですが、最近のセンターは、ほとんどの選択肢があり得るな、こうも読めるなという選択肢ばかりになってしまっています。
でも、ひとつでも選択肢が減ればありがたいですよね?
というわけで、構文の話でした。
では。
次回からは句法の説明をしていきます。