今日は漢文句法の説明に入ります。
「否定」ですね。句法、句形別に覚え方のコツが変わるんですが、今日は「下を否定する」、構造で理解します。
漢文の学習方法の説明を進めていきたいと思います。横書きと、返り点がどうしても横書きのブログに向きませんが、まあ、なんとか書かないよりはマシだぐらいのつもりで進めていきたいと思います。
漢文のポイントは
- 構文
- 句法
- 漢字A覚える
- 漢字B日常
で、これにプラスして読解ですね。
漢文の場合、読解要素が非常に弱く、覚えることが多いので、短期間で成果をあげることが可能です。
塾や予備校では「句法」が大事と言いますが、もちろん句法を覚えていないようでは話にならないことは間違いないですが、答えを決めるというレベルで言うと、はるかに漢字の読みの問題と構文の理解の方が多くなります。
だから、そこまで説明したいところ。
というわけで、次に説明したのが、構文ですね。
そして、これから句法の説明です。
句法の覚え方にはコツがある。
それでは、句法の学習に入っていきましょう。
句法を覚える前提は、
「漢字だけの状態からすべてを言えるようにする」
ということです。
「すべて」というのは
- 返り点がつけられる。
- 送り仮名がつけられる。
- 漢字が読める。
- 意味が言える。
ということ。
私が見ている限り、多くの参考書は、
返り点や振り仮名、送り仮名がある状態で、上に書いてあり、下に意味と書き下し文が書いてあるような形式になっています。
こうすると無意識に、
「送り仮名や振り仮名、返り点がある状態」
から、
「書き下し文にできる。」
そして、
「書き下し文の意味がわかる。」
ということが、句法の学習になってしまうケースがあるのです。普通は(と書くと怒られそうですが)模試をうけていくうちに、それでは点が取れないことに気が付くはずなのですが、場合によっては「やってもできない」「やってるのにできない」というように感じることもあるようです。
そして、これらの句法を覚えるにはコツがあります。たとえば、うちの学校で使っている参考書には、120の句法がまとめられているのですが、これをできるだけ、少ないイメージで押さえていきたいわけです。
そのためには、句法を整理して、できるだけシンプルにすることが必要です。
そのうえで、その句法ごとに、覚える際に障害になっている部分を考えていくことが大事です。
というわけで、一言でまとめると、
「句法ごとに覚えるコツがある」
ということになります。というわけで、今日は、まず否定形です。
否定形は構造で覚える。「不・無・非」
否定形は、基本的に下を打ち消します。
不=助動詞に当たりますが、動詞の前に来ます。
無=返読文字で、下が主語。やはり戻ります。
非=あらず、ですから動詞。やはり、下に目的語が来ます。
というわけで、この3つの否定の字は「下を打ち消す」わけですね。
まずはこの理屈を叩き込みます。
そして、
整理すると、
不の後は、動詞=V
無の後は、名詞=n
非の後は、名詞=n
であることがわかりますね。
もちろん、名詞と書いていますが、動詞がくることもあるわけです。その場合、動詞は連体形となると考えればいいですね。
不=不咲 咲かず
無=無花 花無し 無咲 咲く無し
非=非花 花に非ず 非咲 咲くに非ず
ということです。
ここで、覚え方の注意。
無=~は無し
非=~に非(あら)ず
と、それぞれに「は」「に」を補って覚えておきましょう。
特に、「無」については、たとえば「無咲」は
咲く無し
でも
咲くこと無し
でも
咲くもの無し
でも
咲くは無し
でもいいのですが、要は「咲く」が連体形として、「咲くこと」「咲くもの」という意味になっていることは間違いないんですね。
それをさっと理解するために、いったん「~は無し」と頭に入れましょう。
これで、実は否定形はほぼ終わりです。
二重否定はこれで読める。
二重否定形はなんて読むか、混乱することが多いですよね。で、3つの否定辞がありますから、組み合わせがたくさん。なおかつ、「不〇不~」という可能性もあったりして、面倒になるわけです。ちょっとまとめてみます。
無不咲
無非咲
非不咲
非無咲
とりあえず、こんな感じ。
ここで使うのは、
否定形は下を打ち消す
「~は無し」「~に非ず」
のふたつ。
無不咲
で考えてみましょう。
最初は「無」。これは「~は無し」ですね。
無(不咲) というように見ると、( )は無し です。
( )の中は「咲かず」。つまり、(咲かず)は無し。
「~は無し」ですから、最後は名詞=連体形。だから、「咲かずは無し」はちょっと変。というわけで、「咲かざるは無し」です。
どうですか?
無非咲
同じように行きますよ。(非咲)は無し です。
(咲くに非ず)は無し。
咲くに非ざるは無し。
意外と簡単でしょう。「は」はなくてもいいし、「もの」「こと」でもいいんですけど、これをやるには「は」をつけておくとやりやすいんです。
非不咲
(不咲)に非ず。
(咲かず)に非ず。
咲かざるに非ず。
最後です。
非無咲
(無咲)に非ず。
(咲くは無し)に非ず。
ここだけ、パターンが変わりました。「~ず」ではなくて、「なし」と形容詞になったからです。連体形ですね。
咲くは無きに非ず。
です。
単純に覚えるのではなくて、考えてふっていくだけでだいぶ簡単になると思いませんか?
最後に、
不不咲
不無咲
のパターンです。実際は「未嘗不咲」だったり、「不必不咲」だったり、間に何か入るパターンなんですが、「原理として」ということで覚えてください。
不(不咲)ですよね?
そうすると(咲かず)ず、ということになるわけです。
これはちょっと変。なので、(咲かず)のあとの「ず」に動詞をつけたい。というわけで、
(咲かず)あらず。
というように、動詞を補ってしまうんです。
とすると、動詞がふたつ、つまり文がふたつになるので、つなぎたくなる。
というわけで
(咲かずんば)あらず
という感じになります。
ちなみにですが、送り仮名を入れると
不不(んばあら)咲(か)
となりますね。
というわけで、
「ズンバ・クンバ」と5回ぐらい繰り返してみましょう。なんかダンスみたいですね。「ズンバ・クンバ・ズンバ・クンバ…」
はい。では、次。
不無咲
不(無咲)
というわけで、
(咲くは無し)ず。
(咲くは無し)あらず。
咲くは無くんばあらず。
です。
部分否定と全部否定
ではつづいて、部分否定と全部否定です。
必不歌
不必歌
意味が違うんですよ。
読むと、
必不(レ)歌 なので 必歌不
不(二)必歌(一) なので 必歌不
で、同じになりますが、意味は異なります。
否定は下を打ち消すんですから、
必(不歌)
と
不(必歌)
の違いです。
上は、(歌わない)ことが必ず、です。
下は、(必ず歌う)、いやそんなことはない、です。
つまり、上が「毎回毎回必ず」「歌わない」人。下は、「必ず歌う」。そんなわけないじゃん、「毎回必ず歌う」なんてことは「ない」人。
わかりましたか?
じゃあ、もう一回。
常不歌
不常歌
上は(歌わない)が常ですね。
下は、(常に歌う)?そんなことないよ。
ですね。
不必歌 は 必ずしも歌はず
不常歌 は 常には歌はず
とやっておくといいわけです。最初の話に戻りますが、送り仮名があれば意味がわかるのは当たり前。消された状態で、送れないといけないわけです。
最後。これができれば完璧です。
復不歌
不復歌
やることは一緒ですよ。
「復」は「また」と読みます。
上は、(歌わないこと)が「また」ですね。まただよ。あいつまた(歌わない)よ。
下は、(また歌う)ことがないんですね。(また歌う)ってどういうことですか?そうですね。歌うことをまたやるんですね。それが違うと。
上は、歌わないことを繰り返した。一回目も歌わず、二回目も歌わない。だから、「また歌わない」
下は、「また歌う?そんなことしないよ。または歌わないよ」です。一回目は歌いました。でも、もう一回は歌わない。つまり、「復たとは歌はず。」です。これを「二度と歌わない」と言います。二度と歌わない人は一度歌ってますよ。一回も歌ってないのに、二度と歌わないっておかしいでしょ?私があなたの顔をみたことないのに、「二度と会わない」っていえないですよね?
とりあえずこんなところです。
否定形はまだいくつか覚えるパターンがありますが、一回目はここで切ります。