さて、夏も終わる今日このごろ、助動詞の活用の説明に入ります。
活用も丸暗記ではなく、いくつかのポイントを中心に理解するというのが今日の重要なところ。
まずは、助動詞の理解のポイントです。
で、「接続」と「意味」を使った品詞分解のやり方。
そして、活用に関わるもの。
こんな感じです。
そして、いよいよ、今日は助動詞の活用です。
「活用」って何?
さて、ここまで活用についてもある程度説明してきたつもりです。
日本語は、下に言葉が続くときに形が変わることが多いんですね。どんな風に変わるか、というのがとても難しいわけです。わたしたちは普通にしゃべっているつもりでも、外国の人から見れば、「?」なわけです。そういうことを論理的に、法則性を見出して説明するのが、文法。
それが、下に続く言葉によって、未然形・連用形・終止形・連体形・已然形になっていくわけです。
一応、大雑把に説明。
未然形になるとき
「~ば」「~で」がつくときは未然形ですね。
あとは未然形接続の助動詞。「むずむずするじんましんで、まあ、おしりかゆい」ですから、「む」「ず」「むず」「す」「る」「じ」「まし」(で)「まほし」「り」とほとんどが、
「ず」「で」…否定。まだそうなっていない
「む」「むず」「じ」「まし」「まほし」…未来。まだそうなっていない
というように、「未だ然らず」「まだそうなっていない」時の助動詞につくわけで、未然形。
「ば」だって、「まだそうなっていない」「ならば」ですから、「~なら」に決まってます。
「ばや」とか「なむ」とかが願望の終助詞、ですが、これも未然形接続。「まだそうなっていない」形だっていうのはよくわかります。
連用形になるとき
「て」「つつ」「ながら」「、」などなど、文章が続いていく感じ。
と聞くと、結構ありそうな気がしますが、時制の助動詞で、点をうつって、ないでしょ?日本語だと、だいたい現在形で、点をうつんですね。だから、使役とか、受身とか、そして打消しとかでしょうか。
そして、動詞や形容詞につけるとき。
あとは「連用形接続の助動詞」ですね。「きつねけむたし、けりたり」ですから、「き」「つ」「ぬ」「けむ」「たし」「けり」「たり」につけるときです。
終止形になるとき
「。」、つまり文が終わるとき。これは全部の助動詞に必要ですね。
終止形接続の助動詞の場合は、基本u音に限られます。だから、ラ変型はu音の連体形が代替になります。
連体形になるとき
名詞、体言につくとき、ということですが、意外と重要なのは、いわゆる「てにをは」(「て」はもちろん連用形ですよね。)と言われる助詞がほとんど、連体形につきます。
~は 遊ぶのは
~が 遊ぶのが
~も 遊ぶのも
~に 遊ぶのに
~を 遊ぶのを
などなど、動詞をつけようとすると、「の」をいれたくなります。ということで、連体形ですね。
已然形になるとき
「ば」「ど・ども」と「り」が目立ちます。
已(すで)に、然り=すでにそうなっている形、ですね。
命令形になるとき
命令、という感じ。
上が理由で変わる
というわけで、下につく語に合わせて、微妙に形を変えるのが活用、ということなんですが、変わる理由が上にあることもありますよね?
そうです。
係り結び
ですね。
ぞ・なむ・や・か…連体形
こそ…已然形
という形で、活用させます。
というわけで、上か、下か、に形を変える理由があり、(もちろんまれに形としては理由がなく変わることもあります。突然、連体形になって、「。」がつくケースなんかがあるんですね。)それで形が変わるわけです。
「活用」のパターン
さて、こんな感じで、活用を考えていくと、実は分類ができるんです。
こんな感じですね。では説明しましょう。
「現代語グループ」
まず、この表にはいっていないのが「現代語グループ」。
何度か説明してきましたが、
受身…る・らる
使役…す・さす
です。
それぞれ、受身は現代語の「れる・られる」、使役は「せる・させる」に当たります。
動詞のところから説明してきたように、「~る」で終わる語は、古文では「『る』をとってu音に変える」ですから、これも同じように変えればいいわけです。
そうすると、ほぼ動詞にしか見えなくなってきます。だから、助動詞の活用という感じではないんですね。
やってみましょう。
たとえば、「書く」を受け身にします。
「書かれる」ですね。これが古文では「『る』をとってu音」ですから、「書かる」になります。
活用そのものは、「書かれる」のイメージですから、
書かれず。
書かれて
書かる。
書かるるとき
書かるれど
書かれよ。
という感じ。
動詞とその他とわけると
書か・れ・ず。
書か・れ・て
書か・る・。
書か・るる・とき
書か・るれ・ど
書か・れよ・。
です。下二段活用ができるなら、簡単ですよね?
使役です。投げる、でやってみましょう。
使役は「投げさせる」で、古文では「投げさす」ですね。「る」をとってu音です。
活用は、投げさせる、のイメージで。
投げさせず。
投げさせて、
投げさす。
投げさするとき
投げさすれど
投げさせよ。
です。
「~り」で終わるラ変型
つづいて、「~り」で終わるパターン。これは、「あり・をり・はべり・いまそかり」というラ変動詞と同じ活用です。
あり、でやってみましょう。
あらず。
ありて
あり。
あるとき
あれど
あれ。
でしたね。
これをもとにおきかえればいいわけです。
「~り」で終わる助動詞がわからない?そんなことはありません。
接続の箱をあけてみましょう。
む・ず・むず・す・る・じ・まし・まほし・り
き・つ・ぬ・けむ・たし・けり・たり
らむ・まじ・めり・なり・べし
なり・たり・ごとし
り
です。
む・ず・むず・す・る・じ・まし・まほし・り
き・つ・ぬ・けむ・たし・けり・たり
らむ・まじ・めり・なり・べし
なり・たり・ごとし
り
できていますよ。
意味の箱でもやっておきましょうか。
当り前…ず・なり・たり
現代語…る・らる・す・さす
時制
未来…む・べし
過去…き・けり
進行…たり・り
完了…つ・ぬ
未来の輪
む
べし
らむ・けむ
めり・なり
まし
まほし・らし・たし
じ・まじ
です。
当り前…ず・なり・たり
現代語…る・らる・す・さす
時制
未来…む・べし
過去…き・けり
進行…たり・り
完了…つ・ぬ
未来の輪
む
べし
らむ・けむ
めり・なり
まし
まほし・らし・たし
じ・まじ
ね。できてます。これらが、ラ変と同じです。
「~し」で終わる形容詞型
「~し」で終わるといえば形容詞です。
形容詞の活用は、
で確認をお願いします。
ポイントは、
- 「~い」ク活用、「~しい」シク活用
- 最初が「ク」または「シク」
- よく・ず、は変だから、よく・あら・ず、でよからず。
- 次は「よくて」
でほぼ大丈夫。この活用型が「~し」で終わるものです。わからない?わかります。
接続の箱をあけてみましょう。
む・ず・むず・す・る・じ・まし・まほし・り
き・つ・ぬ・けむ・たし・けり・たり
らむ・まじ・めり・なり・べし
なり・たり・ごとし
り
です。
意味の箱でもやっておきましょうか。
当り前…ず・なり・たり
現代語…る・らる・す・さす
時制
未来…む・べし
過去…き・けり
進行…たり・り
完了…つ・ぬ
未来の輪
む
べし
らむ・けむ
めり・なり
まし
まほし・らし・たし
じ・まじ
です。
ただ、この中に、形容詞型でない活用をするものが、3つまぎれています。というわけで、まず、覚えてほしいのが、
じらしてごめんね
です。
ストーリとしては、告白をするんだけど、返事をじらされる。待ってまた告白するとじらされる。そして永久にじらされる。
ごめんなさい。じらしているけど、私の気持ちは変わらないの。
ということです。
つまり、
「じ・らし」のふたつは変わらない=無変化型、です。じ・じ・じ、らし・らし・らし、です。
もうひとつは「まし」です。
「まし」は、
「~せば~まし」「~ましかば~まし」でよく出てくる助動詞。なので、この「まし」は活用を覚えるというより、用法で覚えておくのがよいでしょう。
覚えるべき「4つの助動詞」
というわけで、残りがだいぶ少なくなってきました。これをさらに分類すると、覚えるのはたった4つになってしまうんです。では、これをやっていきましょう。
き うさぎ追ひし彼の山
最初は過去の助動詞の「き」です。
全ての文章は、過去のことを書きますから、わからないではすみません。
咲きき。
咲きしこと
咲きしかど
とまずは唱えましょう。
こいつのポイントは、連体形の「咲きしとき」です。「き」から「し」に変わるので、理解できるかどうかです。
でも、「うさぎ追ひし彼の山」とか「過ぎ去りし日々」とか「若かりし頃」とか「在りし日の」とか、意外と使ってますよね?
これが出れば、已然形の「しか」は何とか出てきます。
ず 武士は食わねど高楊枝 やるならやらねば
つぎは、打消しの「ず」です。これもわからないと意味が崩壊します。
咲かず。
咲かぬこと
咲かねど
です。唱えてくださいね。
こちらのポイントは、已然形の「ね」です。
連体形の「ぬ」はほとんど現代語です。
武士は食わねど高楊枝 武士は食べていないけど楊枝をくわえて食ったふり、
やるならやらねば やるのなら、やらないと
両方とも「ない」というイメージの「ね」ですね。
つ・ぬ 風と共に去りぬ・風立ちぬ・夏は来ぬ。
続いて、完了の「つ」「ぬ」
咲きぬ。
咲きぬること
咲きぬれど
唱えてくださいね。
これはむしろ、終止形が完了でとらえられるかどうか。
風と共に去りぬ=去った
風立ちぬ=立った
夏は来ぬ=来た=きぬ、ですね。
この感覚がないと最悪です。ちなみに、打消しなら、
去らぬ・立たぬ・来ぬ(こぬ)
ですが、さらに、そのあとに「こと」「とき」や「を・に・の」など、連体形になる根拠がないといけません。
まずは、完了で意味がとれることが大事。
で、未然形や連用形があるんですが、それは、たいていの場合、推量系の助動詞や過去の助動詞との組み合わせなので、
こちらで復習を。
最後に、命令形がありまして、こいつは、
咲きね。
のような感じになるんです。これは何と間違うかというと、やっぱり打消しの已然形の「ね」と間違うので、最初ができていれば、間違う確率は低いですし、已然形なら、「ば」「ど」、あるいは「こそ」などが必要ですから、そこも違いです。
でも、ひっかかるとするなら、最後が「。」になっているときでしょうから、動詞の活用と、「こそ」があるかで見分けることになりますね。
む 今こそ別れめ。
最後に「む」です。
別れむ。
別れむとき
別れめど=本当はこんな形にはなりません。「む」が未来で「ど」が確定条件だから、くっつきにくいんです。
です。唱えてください。
これは、なんといっても、仰げば尊し。
まず、最初から大丈夫ですか?
「仰げば尊し」訳せますか?
仰いだら、尊い、じゃないですよ。卒業式で「もし、あなたを師と仰いでいたら尊いですけど仰いでないですからね」なんて歌を歌ったら最悪です。まあ、もはや、先生に対する尊敬を歌う時代ではなくなりましたから、どんどん消えるんでしょうけど…。
已然形+ば、ですから、すでに仰いできたので尊い、ですね。
本題。
いまこそわかれめ
さあ、なんて訳していましたか?「あなたは、このあとこっち、ぼくはあっち。ああ、今は分かれ目だ」ではありませんよ。「こそ」があるから「強調」しているだけ。
さあ今、別れよう
です。
というわけで、ここには「らむ」と「けむ」を同じ活用のグループとして入れてください。
…終わってしまいました。
こんなもんなんです。
咲きき。咲きしこと、咲きしかど
咲かず。咲かぬこと、咲かねど
咲きぬ。咲きぬること、咲きぬれど
咲かむ。咲かむこと、咲かめど
これを唱えれば、あとはいらなかったんです。
じゃあ、あとは何をするか、というと、今回も少しやりましたが、間違えやすい、一見すると同じような形になってしまうパターンをあらかじめ知って間違えないように注意することと、だいたちこういうパターンで出てくるぞというのを暗記することなわけですね。
では、これで助動詞がらみはおしまい。
あとは、敬語、助詞、紛らわしい語の識別、といったあたりと、読解の実践練習、そして、単語の整理というあたりになるのでしょうか。
助動詞が終わったからといって、まだまだ、です。私の経験では、単語と読解、ここには敬語の理解がすごくからむのですが、ここが重要になります。
では。