夏休みが終わって、そろそろ焦りも出てくるころ。焦りの克服については「学び」の方のページに書くとして、いろいろと手を広げているこちらのページも、少しずつ進めていかないと受験に間に合わなくなります。
センター、古典文法、漢文句法、漢字、文学史、評論、小説、小論文…というような中、どうしてもやらないといけない古文単語に手をつけることにしました。
単語は即効性がありますし、やった分点があがる。そして、ありとあらゆる分野に効く。というわけで、点をとるなら、まず単語、ということもありまして、これを書き始めたいと思います。
今年の受験までに、はたして全部書けるのか…
まあ、仕方ないです。進めましょう。今日は第一回目なので、古文単語を学習する上でのポイントをおさえたいと思います。
古文単語=日本語の成り立ち
これはまだ自分自身が学習中なので、あまり断定的なことは書けませんが、古文単語を教えていると徐々に気が付いてくることがあります。
まず第一に、日本語は、論理的な意味で出来上がるのではなく、擬音的なイメージで出来上がっているケースが多いこと。
たとえば、有名な「あはれ」についていえば、「感動」と「同情」という二つの意味を教え込まれますよね。感動も同情も、両方とも「漢語的」、つまり中国の言葉ですが、(英語的と考えてもいいのかもしれませんね)要は、意味で整理されているまったく違う二つの言葉です。
どうして、こんな違う意味の言葉が、同じ単語だったのか、と考えていくと、「あはれ」っていうのは「じーん」というイメージなんだろう、ということが見えてきます。「じーん」とくるというものを「あはれ」と表すと、それが感動なのか同情なのか、はたまた美なのか、ともかく全部「じーん」につかえちゃうわけです。でも、現代を生きえる僕らはそれが不自由で、「その『じーん』は、何なの?じーんじゃわからないでしょ?」みたいなことになって、訳し分けが必要になるわけですね。
「をかし」は「くすっ」です。思わず、笑みがこぼれちゃう感じ。興味深いのか、おかしいのか、かわいいのか、ともかくもそんなイメージです。
同じ「おもしろい!」でも、「じーん」と来てれば「あはれ」だし、「くすっ」ときてれば、「をかし」ですね。
「おどろく」なんていうのを、古文単語集では「起きる」と覚えさせます。間違っているわけではないんですが、当然「驚く」の意味の場合もあるわけです。これは「はっ」というイメージに近い。「はっ」とするのは、「驚く」ときと、「起きる」とき。だから、古文単語は、語義というかイメージをつかんでおくと応用が利く場合が多いんです。この語義を無視すると、機械的に暗記をしなければいけなくなります。
もうひとつ、多いのは、この「擬音」と「名詞」を、動詞化したり、形容詞化したりして成り立っている言葉です。
たとえば、
「ざわめく」「ささめく」なんていうのは「ざわざわ」「ささささ」という擬音に「~めく」=「ぼくなる」という接尾語をつけているイメージです。
「春めく」なんていう風になると「春」という名詞に同じ「~めく」をつけるわけですね。
「ときめく」は本当は「時めく」。つまり「今の時代ぽくなっている」こと。今を時めくスター、ってやつです。だから後者。でも無意識に前者だと思うと、「ときとき」「めく」わけで、これで胸がトキトキとときめいちゃうわけです。
この名詞や擬音の動詞化、形容詞化は非常に多い。で形容詞も動詞になるし…。
たとえば、「ものし」なんていうのがあります。単語集には載ってないかな。
どんな意味でしょう?
「~し」ってなっているところを見ると形容詞ですね。
だとすると、「もの」「し」です。となると「物」「者」しか浮かびません。
で、これは「物し」です。つまり、「物」「しい」という感じ。よくわかりませんね。でも、たとえば、これが人につかわれるとするなら、人なのに物のよう、という感じになっているわけで、「障害物」「邪魔者」のようなイメージに使われていくわけです。
で、これが、中国から漢語=音読みが入ってくるわけで、これがまた動詞化していきます。勉強する、お茶する、告る、なんて現代でもどんどん動詞が生まれるわけですが、そういうことも起こります。基本的にサ変動詞、「念ず」「困ず」なんていうパターンです。
単語集の使い方
というわけで、本当は辞書を引くに限るわけですが、辞書を引くなら、この語源を読まないとしょうがない。でも、だいたい生徒はそんなところは読まない。電子辞書ならなおさら。しかも、単語集もよくできていて、語源の説明がある。
というわけで、私は辞書でなく、単語集を使っていいと思います。ただ、単語集に載っていない単語をどうするか、という問題は起きますが…。
というわけで、だめな単語集の使い方。
古文単語を見る→現代語訳を覚える
これを次の順番でやるとよいです。
- まず、古文単語にあてられる漢字を見てイメージする。
- 単語集の語源、語義の説明を読む
- 意味をイメージしながら、例文を音読する。=訳の理解
以上。極端なことかもしれませんが、単語と現代語訳のつきあわせはなくてもいいぐらいです。
単語集の弱点
で、単語集の大きな弱点なんですが、これは実は辞書でもたいして変わりませんが、意味の分類がされていない、ということです。
記憶をするには、「整理」が重要です。整理されていないものを覚えるのと、整理されたものを覚えるのでは、効率がまったくちがうんですね。
これを単語の覚え方で説明したのがこちら。
古文の単語集はおおかた、ランダムに並んでいます。したがって、覚えるための単語集ではなく、思い出すための単語集だといえます。
覚えるためには、似た意味であるとか、反対の意味とか、そういったものをまとめておく必要があるのです。
しかし、古文の単語集はランダム型が多く、覚えたことを確認するのには向きますが、覚える段階では、400ぐらいの単語がひとつひとつ独立してしまっているわけで、あまり効率がよくありません。
意味別に分類をする
そこで、必要になるのが、意味別の分類です。同じような意味をできるだけ近くに配置したマップを作ります。
そうしておけば、ひとつの単語に対して、いくつもの周辺情報を得ることができるのです。
私は生徒に次のようなマップを渡します。
- 美を表す語
- 評価・すばらしい
- 不評価・ひどい
- 不快な気持ち
- 日常生活
- 恋愛に関わる語
- 病気や死に関わる語
- 場所や動きに関わる語
- 時間に関わる語
- 程度に関わる語
- 宮中・身分に関わる語
- 敬語
- 仏教に関わる語
- 学問に関わる語
- 指示語と疑問
- 接続詞と感動詞
- 「~ゆ」受身動詞
- 呼応の副詞
- 反対の意味を持つ語
- 接尾語
という感じです。
なんていう見出しだけ説明されても…と思うので、順番に説明していく予定。これだけで最低20回…
がんばります…