漢文句法は今日は疑問と反語です。句法、句形の覚え方は、句法ごとに変えるのがコツです。前回は構造で否定をおさえましたが、今回は漢字でおさえます。
疑問・反語は、漢字で分類して、読みを覚える
疑問・反語句形はまとめてしまって、
漢字で整理して読みを覚える
というのが基本です。
多くの参考書は、意味別に整理されていますが、漢文の試験の場合、
- ひらがなで書き下せ
- 意味を書け
- 空欄に入るものを選べ
など、意味や意味に通じる読みが隠されている場合がほとんどです。
そもそも、後で説明はしますが、「読める=意味がわかる」がリンクしているんです。したがって、意味別で整理されていれば、読みはわかるし、読みが見えていれば意味はわかってしまう。
だから、試験では、
読みを隠して、読みそのものや意味を問う
という形になっているわけです。
こういう状況の中、意味別で覚えていると、
- 無意識に意味がわかっているので、なんとなく読みがイメージできてしまう。
- 意味別に同じ漢字が何度も登場するので、その漢字がその時そう読むことが理解できても、ほかにどんな読み方をする可能性があるかがイメージできない。
などの問題が起こります。
たとえば、
「何」の読み、どう読むかわかりますか?読みそうなものに全部〇をつけてください。
- なに
- なんぞ
- いづくんぞ
- いづくにか
- いづれ
- だれ
- なんすれぞ
- なにをもってか
- いくばく
- いかん
さあ、どうですか?
今度は、「孰」はどうでしょう?なんて読みますか?
「何」の正解は4つ
- なに=What
- いづれ=Which
- なんぞ=Why
- いづくにか=Where
です。
他のものは、全部漢文の疑問の読みとしては存在するので、「ああ、なんかもしかしたらあるかも…」を生み出すわけです。「たぶん、これだと思うけど、ぼくが知らないだけでもっとあるかも」みたいな感じです。で、当たり前の「なに」とか「なんぞ」を切って、「いづくんぞ」を選んで、実際には「なんぞ」で「裏の裏か…」みたいなこと言ってません?
これをふせぐには、「何の読みは4つ」と言えればいいわけです。
逆に「孰」になってくると、全部( )の中に入ってくるんですね。そもそも「こんな字あった???」みたいになっている人は、代表の一字だけ見て他は見ない。
まだ、「何」と「〇」は同じだから全部同じね、ならいいんですが、
「孰」の場合
- だれ
- いづれ
と置き換えられるわけではありません。
こういうのも漢字で整理する必要がある理由なんです。
疑問・反語は「一粒で二度おいしい(古い)」
さて、それでは説明に入る前に、もうひとつの説明。疑問は反語とイコールであるということです。
ただ、漢文の場合、慣例的に(したがって絶対とは言えません)文末の送り方で、疑問か反語かを区別してきているんです。日本語としてはそんなことはないはずなのですが、センターで、文末の違う二つの選択肢が並び、片方が正解になりましたから、「疑問の文末か、反語の文末かを見極めて、正しい方を選べ」ということをセンター試験が認めたということでしょう。
そして、本校で使っている参考書も、疑問と反語で文末が書き換えられています。
疑問=~スル(カ)
反語=~ンや・ン(ヤ)
というイメージです。もし送り仮名が本文についていれば、原則としてこれを信じて訳すことが可能です。逆に、書き下し文を作るときに、送り仮名を自分で考えるとするなら、これに合わせて送る必要がありますね。
ただ、原則として(細かく言うといろいろ違いはありますが、受験生レベルではこのぐらいで十分です)これ以外に違いはありませんから、
漢字で整理して読みを覚える
と、
疑問と反語の両方が一気にクリアできてしまうんですね。
漢字で整理する
というわけで漢字で整理すると、次のようになります。
こんな感じです。
では、それぞれ説明します。
何
- なに
- なんぞ
- いづれ
- いづくにか
3番目の「いづれ」は疑問文ですから、「どちら」です。「いずれかを選びなさい」の奴です。「オレはいずれビックになる」では、疑問文ではありません。
何=奚のイメージです。
なんぞ=奚・胡・曷
などもよく見ます。
安
- いづくんぞ
- いづくにか
「いづくにか」は「いずこ」のイメージがあるので、なんとなくわかってもらえるでしょうか。Whereですね。
いづくんぞ=悪・焉・寧
いづくにか=悪・焉・何
をほかの漢字として使います。
孰
- いづれ
- だれ
忘れがちですが、意外と入試でよく出題されていますので、しっかり覚えておきましょう。
誰
書くまでもないです。「だれ」
二字グループ
ここから二字のグループ読めるように頑張りましょう。
何為
なんすれぞ
「為」は行為というように、「する」という動詞ですね。
何以
なにをもってか
「以」は「以て」。
前置詞のように使われて、byに近いかもしれません。
幾何
いくばく
幾何の他に幾許もありますね。
どのくらい、というイメージ。英語だとhowの後がいろいろと変わりますが、漢文は基本的に一緒のようです。
如何と何如
両方とも
いかん
ですが、意味が変わります。私のごろ合わせの教え方では、
如何=女難、なので、「やばい、女難の相が出てる。どうしよう」
何如=男女、なので、「男女の関係だって。どうなってるの」
という感じ。
前者が
いかんせん。
後者が
いかん、いかんぞ
という感じ。試験では送り仮名がつきませんから、テキストではわかっていても、試験で混乱する一因です。
豈
最後は、豈。
これが独立しているのは、疑問にならないから。
全部反語です。したがって、最後は「~んや」となります。
本当は、詠嘆形もあるのですが、今回は骨格なので、またいつか整理し直します。
意味は覚えなくていいの?
読みで整理するだけだと、意味を覚えていることになりませんよね?
これで終わっていいのか、という気持ちになりますが、いいんです。
だいたいこれで意味がわかるからです。
日本語なんですから、読めれば意味がわかる。では全部列挙してみます。
- なんぞ=?
- なに=what
- いづれ=which
- いづくにか=where
- いづくんぞ=?
- いづくにか=where
- いづれ=which
- だれ=who
- なんすれぞ=?
- なにをもってか=?
- いくばく=how many ,how long,などなど
- いかん=女難=どうしよう
- いかん=男女=どうなってるの
- あに=?
です。
確かに「あに」や「いづくんぞ」など、現代を生きている私たちはあまり目にしない表現もありますが、この「?」をつけたものは全て
why
なんです。
だから、読めるものがわかれば、あとはwhyと思ってしまえばよい。
で、文末が疑問か反語か見分けられれば、訳は問題がないんですね。
というわけで、ここまでクリアできると、だいぶ漢文はわかるようになりますよ。
その他疑問形に分類される句法
これでほとんどの疑問形を説明したわけですが、最後に疑問形に分類される句法を書いておきます。
否定語や否定文を用いるパターンです。
たとえば、文末に「~不」とついたり、「~否」とついたりするパターン。
たとえば、「在否」なんていう風にきたら、「在りや否や」なんていうふうに読みます。そうすると、疑問ですね。「あるのか、ないのか」とか「あるのかどうか」みたいに訳します。
文としてまとめていくこともありますね。「見、不見」のような形です。「見るか、見ざるか」なんて言う風に読みます。
「~未」とすることもできます。結局「未」っていうのも否定の助動詞ですから。
読みは「~や、いまだしや」です。「もうそうなったか、まだだろうか」ですね。
この「~ずや」という感じが、文頭にくると、反語パターンでもあります。
「君不見、~」なんていう感じ。「不聞」「不知」などで使われます。
「君はみていないのか」というのが直訳風の感じなんですが、「君は見たはずだ。」という反語の解釈でもっていきます。「聞いたはずだ」「知っているはずだ」ですね。
最後に「~諸」がくると、これも疑問形になることが多い。「諸」は「これ」ですね。たとえば、「~有諸。」と文末が終わるなら、「これありや」と読むわけです。
次回は、使役句形から受身句形を説明します。