というわけで、古文単語を進めてまいります。
単語は覚えれば文章が読めますし、テストでも点がとれます。センターの選択肢だって、単語がわかれば、「ここをこう訳してないから×」と自信を持って選べます。
今回は恋愛ものには必須。「美」をあらわす単語。ではいきましょう!
- 古文はほとんど恋愛もの
- セレブのイメージの美しさ~きよし・いう・やさし
- 守りたくなる小さくて弱いものの美しさ~うつくし・らうたし
- こどもっぽさと大人っぽさ、親しみやすさときちんとしている感じ~うるはし・なつかし・なまめかし
- じゃあ、本当にかわいい女の子っていうのは?~あはれ・をかし
古文はほとんど恋愛もの
古文なんてほとんど恋愛がらみです。
だから、「美」をあらわす単語がわからないと話になりません。
相手は立派な男です。だから「評価」「不評価」をあらわす単語もわからないと男の評価はできません。
たいていは片思いです。だから「不快な思い」をあらわす単語は山ほどあります。
「日常生活」を表す語でも特に「恋愛関係」の単語は多いです。
「時間を表す語」「場所を表す語」。「程度を表す語」も必要です。
病気になって死ぬ話もここに加わります。だから「病気や死にまつわる語」も必要です。
舞台は宮中。だから「宮中にまつわる語」や「身分にかかわる語」「敬語」も必要ですね。
出家もよくします。だから「仏教にまつわる語」も覚えないと…
まあ、こんな感じ。
残ったのが「学問に関わる語」ですが、これは恋愛もの以外といってもいいかもしれませんね。
知らないとまずいし、とりあえず、単語早くやりたくならないですか?
では行きましょう!今日は美を表す語です。
これから説明していきますが、この表を再現できるようなイメージ覚えてください。何も見ないで、この表を思い出してつくる感じ。
単語がいえればいいということですね。
セレブのイメージの美しさ~きよし・いう・やさし
美しいの最上級は「清し」です。これがもっとも美しい感じ。でも、これは、「神々しさ」「後光が差す」イメージです。「清げなる僧」なんていう風に使われますから、かなり精神性が入ってきますね。
身分の高さとこれをみると、「艶」とか「いう」「やさし」になります。「いう」は「優」。「やさし」は「優し」で、「優美」つまり、セレブな金持ちのイメージです。身分が関係してしまうのですね。
「やさし」の語源は、「痩せし」です。つまり、「痩せ細るような気持ち」をベースにしています。ポジティヴに言えば、それをいたわり、「優しい」ですが、ネガティヴだと、そのまま「つらい」というような気持ちになります。
動詞にすると「やさしむ」で、それを「いたわる」ような感じです。
身分だけなら、「やんごとなし」「あて」、評価をいれるなら「めでたし」「はづかし」なんかと一緒。でも、これらは「美」の感じはないです。身分が高くて上品な、というところで「やさし」です。
で、この「やさし」ですが、語源的には「身もやせ細るような」という意味があります。「相手が素晴らしくて」というのが、この「優美」ですが、単純に意味をとると、「はづかし」にかなり近いです。「つらい」とか「気が引ける・恥ずかしい」ですね。
守りたくなる小さくて弱いものの美しさ~うつくし・らうたし
じゃあ、かわいい女の子って何?
浮かぶのは、「うつくし」と「らうたし」。
うつくし=慈しむ、が語源です。
らうたし=労甚し、で、労力を甚だしくかけること。
つまり、両方とも、小さくて弱いものを労力をかけてなんとかしてやりたい、という感じ。守ってあげたい感じ。
だから、赤ちゃんなんです。竹取物語は「うつくしき女児」ですが、当たり前で、巻き髪した化粧ばっちりの赤ちゃんはいないからです。
古文の先生が、「うつくし」を「かわいい」とこだわるのもこれが理由。
広瀬すずちゃんが、かわいいかうつくしいかは主観でどっちでもいいじゃん、と思うのは、「かわいい」がこの単語の役としてぴたっとはまっていないから。
だから、外見の美でこれらの単語を使っていないんですね。
こどもっぽさと大人っぽさ、親しみやすさときちんとしている感じ~うるはし・なつかし・なまめかし
美を表す単語で種類分けをしていいなら、
「なまめかし」と「うるはし」が浮かびます。
なまめかし=「生」「めく=ぽい」という感じですので、未熟っぽいということになります。ほめると、「若々しい」「みずみずしい」という感じ。ピチピチ。です。まれにネガティブになって「未熟」。「生坊主」「生学生」なんてきたときは美のイメージはなくなって、半人前ということです。
うるはし=麗はし、ですが、「容姿端麗」を思い浮かべてもらうといいです。これは「整った美しさ」「モデルさんのイメージ」です。結構美しそうですが、残念ながら、性格的な部分も入り込んで、「ちゃんとして近寄りがたいイメージ」。「クラスにいるような」と形容されるアイドルの真逆。高嶺の花です。
いろいろな意味でちゃんとしている感じですから、たとえば、言葉遣いとか。「〇〇さん、〇〇してくださいませんか。」とか来たら、距離感がありますね。
この逆で考えると、
「しどけなし」と「なつかし」が入ります。この二つには美の概念はないですね。距離感とだらしなさです。
しどけなし=だらしない、というイメージ。制服のボタン、あけたり、リボンをゆるめたりすると、「だらしない」けど「近づいていいのかな?」みたいな感じになっちゃいます?
なつかし=懐かし、ですが、「懐=ふところ」「懐く=なつく」なんていうように、距離感が近づいて、ボディタッチが増えていく感じ。名前呼び捨てにして、袖口つかんで、「〇〇、マックいこ。」みたいな感じです。
じゃあ、本当にかわいい女の子っていうのは?~あはれ・をかし
となると、要するに現代の「美しい」「かわいい」がないんですね。古文は擬音的なイメージや名詞的なイメージで、論理的な分類ではないからです。
というわけで、ひとつが「にほふ」
におふ=匂いだけでなく、見た目にも使うんですね。これがくれば、ルックスがよいことは明らか。
もうひとつが、「あはれ」と「をかし」
あはれ=じーん
をかし=くすっ
ですが、きれいな、かわいい女の子を見ると、じーんときたり、思わず笑みがこぼれたりりますよね?
あはれ=イメージとしては、物静かで、口数が少なくて、見ていて、涙がでちゃう感じの美しさ。病弱でもこっちかな。
をかし=元気で、快活で、友達になりたいような感じの美しさ。
だから、大学入試で、あはれ・をかし、が出たら、たいてい、「美しい」が答えだと思います。意外と「をかし」あたりが、現代語のかわいいに一番近いような気がします。だって、いろいろなものに「をかし」っていいますしね。
見た目だけなら「めやすし」=「目安し」で、見てて安心できる感じでしょうか。
これで今日から、古文に出てくるきれいな女の子を見落とすことはありません。きれいな女の子を見落とす恋愛ものなんてもったいないですよ。