助詞の2回目です。助詞を理解するには、その助詞ごとに理解のポイントを変える必要があります。今日は、副助詞・係助詞・終助詞をまとめます。
助詞は前回に、格助詞・接続助詞を中心にまとめました。今日はそれに引き続き、副助詞・係助詞・終助詞をまとめていきたいと思います。
意外と、このあたりから入試の得点にからむことが多くなりますので、しっかりおさえておきましょう。
副助詞は、読解問題で頻出。隠れている比較を探す必要がある!
副助詞は、文章読解の上でカギをにぎるものがいくつかあります。「だに」「すら」「さへ」ですね。このあたりは、難関大学や国立の2次の記述などで意外と出題されています。まずはこのあたりを理解しましょう。
「だに」「すら」は「~さえ」。だったら、〇〇はなおさら…
「だに」「すら」は「~さえ」と訳します。
「こんな問題小学生でさえわかるぞ」
というような感じで使うわけですね。この文章、読んでみるとわかりますが、言いたいことが隠れていませんか?
「小学生でさえできる」
「ごはんさえ食べられない」
言いたいことが隠れてますよね?そうなんです。本当はもっとほかのものがあるんです。
小学生でさえできる→中学生か高校生か大学生か大人か、それはわからないけれど、小学生よりも大人である人はできるに違いない。
ごはんさえ食べられない→ごはん以外に本当は食べたいものがあるのに、そもそもそれが食べられない。それどころか、当たり前であるはずのごはんも食べられない。
だから、「だに」「すら」を見つけたら、本当はどこまでほしいのか、何を求めているのかを意識する必要があって、こういうところが解答にかかってくる可能性が高いんですね。
だから、
- まず第一に「~さえ」と訳す。
- 次に本文から、本当に言いたいことを考える。
という作業をやる必要がでてきます。
本文に「まいて(=まして)」とか「いはんや」とかあったら、そこが隠れていた部分というか、隠れてないパターンになります。
「だに」+願望=せめて~だけでも~たい
もうひとつ、「だに」で忘れがちなのが、願望表現とセットになって、「せめて~だけでも~たい」という形になることです。
これも頻出ですね。
しっかりと頭に入れておきましょう。
「さへ」は「~までも」。〇〇だけでなく、~までも。
今度は「さへ」です。厄介なことに「さへ」は「~さえ」と訳さないんですね。面倒ですね。でもしょうがない。「さへ」は「~までも」と訳します。
「お前までそんなことを言うの?」
みたいな感じで使うわけですが、やっぱり、言いたいことが隠れていることがわかりますか?
そうです。前に「~だけでなく」がついてません?
「他のやつ、仲よくないやつが俺の悪口をいう。それだけでなく、それに加えて、仲のいい、信頼しているお前までそんなこと言うの?」
ですね。
こういうの、読み取らせるんですね。定番です。記述で書かなきゃいけない。選択肢でそこまで読み取らないといけない。
たとえば、源氏の桐壷です。
前の世にも、御契りや深かりけむ、世になく淸らなる、玉の男御子さへ生れ給ひぬ。
「男の子まで生まれなさった。」とあります。「~だけでなく、それに加えて」ですね。こういうのが正解選択肢に入り込んだり、あるいは「足りないものを補って」などという表現で記述させられたりするわけです。
こうなってくると、本文を読むことと、その表現自体をしっかり見ることにかかってきます。「男の子が生まれること」は「いいこと」ですから、何かいいことがあったけれど、それだけでなくさらにいいことがあった…という形になりますね。
しかも、このいいことは、桐壷が帝の子どもを生むことですから、おそらく、それに類する「いいこと」のはず。
というわけで、この場合は、「帝の特別な愛情を受けるだけでなく」というあたりが隠れていることになります。
むずかしいですが、こういうところが入試で問われるポイントなんですね。
強意の「し」は、とってもつながるかどうか。
もうひとつ、入試で問われる副助詞といえば強意の「し」です。間投助詞とされることもありますが、まあ、どうでもいいです。
- 「し」は強め。
- 強めの訳は、「そのまま」。つまり、無視。
- とっても意味が通じる場合、つまり、唐突に「し」が挿入されてきたときがこれ。
- テストで出るときは、たいてい識別の問題。「過去の助動詞「き」の連体形」、「同じく已然形の一部」、「形容詞の活用語尾」、「サ変動詞など」、たまに指示語、などと見分ける問題として出題される。
こう考えてみても、結構異質なので、気が付くことが多いと思います。
ポイントはとにかく( )に入れてしまうこと。これで文が続いていくなら、強意です。
たとえば、「いつしか」という古文単語は「早く」ですよね?
これも厳密には「いつ(し)か」です。
つまり、「いつか」を強めている。「いつか君とデートしたい」を強めていくと、「今すぐにでもデートしたい」になりますよね。そんな感じなんです。
係助詞は結びよりも、まず、「意味」が重要!疑問形は絶対に落とさない!
続いて係助詞です。まず、係助詞といえば、
「や・か」と「ぞ・なむ・こそ」
ですね。係り結びというやつです。これはすでに説明をしました。
とにかく、疑問文という考え方は重要ですので、しっかりと理解をしてください。
疑問文は
- 疑問=答えを期待している時
- 反語=答えを期待していない時
- 詠嘆
の3つの可能性が出て来るわけですが、まずは、「や・か」が疑問であるということがわからないとだめです。
たとえば、
「いかが」は「いか」「か」
「いかでか」は「いかで」「か」
というように、疑問の係助詞があることに気付いていないと、くだらない文法題でも落としかねませんから、まずはしっかり理解しましょう。
で、今日は、その上で注意が必要なことに進みます。
「は」は強意の係助詞。「やは」「かは」「をば」
「は」は主語を表す…なんて小中学校で習ったかもしれませんが、厳密には正しくなくて、係助詞ですね。強めている感じです。
「違い」「限定」を表すといってもいい。
「ぼくはやってません」という言い方は、「他の人はやった」ということを示していて、要は区別したいんです。
「ぼくは富士山が見える」というのは、どっちが主語か、というのはわかりますか?受身動詞の話です。
「見える=見ゆ」が受身動詞だとわかると、
「僕は富士山が見られる」で、富士山が主語の受身構文です。だとすると、
「ぼくは」は「ぼくには」であることがわかってきます。あくまでも限定で区別しているんですね。見えない誰かと。
さて、というわけで、「は」は係助詞で強調。
疑問文のところで、説明しましたが、疑問文を強調する形、たとえば
「~やは」「~かは」
は、反語になる確率が高い。
やさしく「わかりましたか~?」と聞くと疑問。
大きな声で「おい、わかってんのか、おい!」と聞くと反語で「わかってねえだろ!」ということになります。
よく先生が、「話聞いてたか?」と聞かれて「聞いてました!」なんて答えると、「聞いてました、じゃねえよ!」って怒り出すパターン、ありますよね?聞いてたか聞かれたから、聞いてるって答えたのに、怒るって何?ってやつです。
これは、受け手は疑問でとってますが、話し手は反語でしゃべってる典型です。「お前聞いてないぞ」と言ってるのに「聞いてます!」と口答えするから怒られるわけです。正解は「すいません」ですね。謝ったら謝ったで、「聞いてたか聞いてるんだよ」とくる先生は面倒くさいです。もうどうしようもないから、怒られるしかありません。
ただ、絶対に反語かと言われればそうではない。「強い疑問」のケースもあります。これはわかりません。また、「は」がついていなけど、反語でとるケースもたくさんあります。だから、
「やは」「かは」は反語の確率が高い
というそれ以下でもそれ以上でもないです。
たとえば、次のケースを見てみましょう。
「いかがはせむ」
「いか」「が」「は」「せむ」
ですね。
最後は「し・よう」です。「が」は疑問の係助詞が濁っているので、最後に疑問をつけて、「どうしようか」なんですが、ここに「は」がついているのは「かは」で、反語と見るべき。
したがって、「どうしようか、いや、どうしようもない」というのが正しい訳になります。
「も」は危惧を表すことがある。「もぞ」「もこそ」は頻出。
もうひとつ忘れがちな係助詞は「も」ですね。
「も」が並列を表すのは、
「ぼくもやりたいです」みたいな表現でよくわかると思うんですが、もうひとつ大事なのは、強調の意味を持っていることです。
遠くも来るかな
みたいなものを、「遠くまでも来たなあ」とやるとわかるでしょうか?強める表現になるんです。
これを原則にして、「ぞ」「こそ」と結びつくと
危惧「~でもしたら大変だ」という訳になるんですね。
現代語でも、「雨でも降るんじゃないか」なんていうときの「も」はこの危惧に近い形になっていますよね。
源氏物語の若紫に
烏などもこそ見つくれ。
というのが出てきますが、これも「烏なんかが見つけたら大変だ」ですね。
特に「~こそ」になると結びが已然形ですから、たまに命令形っぽい訳を書く、あるいは選ぶ人がいますが、絶対だめですね。まずは、ただの強調ですから、もとの形に戻す。そして、「も」があるので、「~したら大変だ」の形に持っていく、ということが必要になります。
終助詞は、「単語」。意味と接続をとにかく覚える!
最後に終助詞です。「や」「よ」「を」は間投助詞として別枠になりますが、ほぼ終助詞と同じような扱いといって過言ではありません。分類の仕方の問題。文末と見るなら、終助詞。文の途中に投げ入れたとみるなら、間投助詞です。古池や、とか、~よ、とかです。文と見るかどうかで解釈が変わるだけで、大きな問題ではありません。
この終助詞グループですが、要は単語だと思って意味を覚えることがポイントです。ここが、今までの助詞とは大きく違うところ。いくつかの語は、接続も覚えておかないと、あとで識別の問題の時に困ります。
実は意味は大きく分けて、3つから5つしかありません。
禁止
な・な~そ
です。
勿来という地名は「なこそ」ですね。
漢文読みで、「来たるなかれ」。和語で「な来そ」です。
文末に「な」がくれば禁止はわかりますね。
自己願望
未然形+ばや
連用形+てしがな・にしがな
体言・助詞・形容詞の連用形(=く)+もがな・がな
自己願望ですから訳は自分が「~たい」という感じ。
他者願望
未然形+なむ
これが他者願望。誂え(あつらえ)の終助詞、なんて言い方もします。
訳は「~てほしい」ですね。
連用形+な+む
だと、確述用法です。未来完了形ね。
「む」を意志ととらえると、終助詞の「なむ」と区別がつきにくいですね。まだ、四段活用の動詞ならいいんですが、二段になると、未然形と連用形で形の見分けができません。
でも、意志は主語が自分、終助詞なら他者願望で「~てほしい」ですから、ここで見分ける形になっていきます。
詠嘆
残りはほとんど詠嘆。
か・かな・は・な
です。
間投助詞の
や・よ・を
も要は詠嘆ですね。
念押し
かし・ぞ
などがこれに当たります。別に詠嘆でもいいと思うんですけど、訳としては、
「~(だ)よ」とか「~(だ)ね」
という感じです。
以上で、助詞が一通り終わりました。このあと、試験に出る「紛らわしい語の識別」に入る予定です。