改訂した古文単語も、これでいったん終わりです。最後は似ていて紛らわしい単語です。
ここまで、古文単語をある程度すすめてきましたが、音が似ているのに、語源、漢字が違うため、意味が異なる単語というのがいくつかあります。
ここまで紹介してきた中で、そのように形は似ているのに、意味が違う単語をまとめます。
- 「けに」と「げに」
- 「そばむ」と「そばそばし」
- 「ものす」と「ものし」
- 「おぼろけなり」と「おぼろげなり」
- 「うるさし」「うるせし」「うるはし」
- 「あたらし」と「あらたし」
- 「かごと」と「ひがごと」
- 「かづく」と「かしづく」
「けに」と「げに」
最初は「けに」と「げに」です。
漢字が違います。
けに=殊に・異に
げに=実に
です。
したがって、「けに」は「ことに・ことなり」の系統です。特別に、格別に、というような流れ。「ことに」も殊か異かよくわかりませんが、「異」となるのは、「異人」とか「異事」というような「異+名詞」のパターンが多いです。
「げに」は「実に」ですから、「まめ」の方ですね。「本当に・実に」です。
「げに」の反対は「徒=あだ」で、不誠実、非実用的な感じで、古文では浮気心などでも出てきますね。
「そばむ」と「そばそばし」
「そばむ」は「側む」で横を向く、目をそらすこと。「目をそばめる」などという表現は現代語にもあります。
そうすると「そばそばし」は、側にいてくれる感じかな…なんて類推したくなるんですが、漢字が違って「稜々し」なんですね。「角」とか「トゲ」とかをあらわすような感じです。なので、「とげとげしい」イメージで、不愉快で中がわるい感じの語です。
「ものす」と「ものし」
「ものす」は「物す」で動詞。
「ものし」は「物し」で形容詞。
まずは、「ものし」を勝手に「ものす」の活用形にしないようにしましょう。もちろん、連用形、つまり「ものし、」という形ならいいんですが、「ものし。」ということだとすれば、形容詞ととるしかないですよね?
同じ「物」なんですが、
動詞の「物す」は「何かをする」ことで、英語のdoのイメージです。
形容詞は「物」がそのまま形容詞になったわけで「物っぽい」感じです。
邪魔だ、とか、目障りだ、とか、そんな感じになるわけです。
「おぼろけなり」と「おぼろげなり」
「~げなり」というのは形容動詞を作る語尾です。
さびしげ、楽しげ、よさげ、なんていう風に現代でも生き残っていますね。
ですから、「おぼろげなり」が「朧=おぼろ」「げなり」です。
「おぼろけ」は「並」「ありきたり」という意味です。ちなみにこの語は、反対の意味を持つ単語のパターンで、最初は「並」、「おぼろけならず」が「並一通りでない=格別」というところにいくはずなんですが、そもそも「ありきたりでない」だと「悪くない」ぐらいの意味で、そうなると「おぼろけ=普通」「おぼろけならず=普通」のようになっていつの間にか、「おぼろけ」自体も「格別だ」となってしまうという、訳のわからない語です。
「朧げなり」という語は近世以降に生まれた言葉なので、平安時代の作品ならまず、ややこしい「おぼろけ」です。
「うるさし」「うるせし」「うるはし」
「うるさし」は、不快系のところにまとめました。要は「不快でいやだ」ということですね。ここから除く語が「つらし」=薄情だ。
「うるせし」は気が利くとか、賢いとか、巧みだとか上手だとか。
「うるはし」は、「麗し」で、美を表す語。ただし、整った美しさで、性格的に几帳面な感じ、きちんとしている感じをあらわす語です。
「うるさし」の不快は大丈夫でしょうが、まずは「うるはし」をきちんと理解して、そこから「うるせし」を頭に入れる感じでしょうか。
要は、「うるさい」というのをポジティヴな評価にするのが「うるせし」なんですよね。「巧みだ」も「気が利く」も、細かい感じがするから。
そんなところで理解しましょう。
「あたらし」と「あらたし」
「あたらし」=「惜し」
「あらたし」=「新し」
です。
「新しい」=「あたらしい」、「新たに」=「あらたに」ですから、おかしいんです。この感じ。もともとは「新たに」の方が正しくて、「あたらし=惜し」だったんです。
ただし「あたらし」は「をし」とか「くやし」とかに負けて使わなくなってこんなことが起こったようですね。
「かごと」と「ひがごと」
「かごと」は「託言」で、言い訳、口実、愚痴などの意味をもちます。
「ひがごと」は「僻言」で、間違いのこと。
「ひがむ」と動詞になれば、間違うことですね。それが「ひねくれる」感じになります。「ひがひがし」はその形容詞。
「ひがめ」なら「僻目」で「よそ見」、「ひがもの」だと「僻者」で変わり者です。
「かづく」と「かしづく」
「かづく」は、偉い人からいただくこと、あるいは偉い人がお与えになること。行為は同じですが主語に合わせて訳出します。
「かしづく」は、「大切に育てる」こと。
「いたつく」などが近い単語です。