国語の真似び(まねび) 受験と授業の国語の学習方法 

中学受験から大学受験までを対象として国語の学習方法を説明します。現代文、古文、漢文、そして小論文や作文、漢字まで楽しく学習しましょう!

古文 大学入試文法題の頻出は「紛らわしい語の識別」1 「なむ」の識別とテスト問題を解くポイント

大学入試問題で、古文の文法がどう生きていくかということを考えます。よく説明されている紛らわしい語の識別ですが、最初にその中でも頻出の「なむ」について、識別と入試でどう得点にしていくかを考えます。

ある程度、最低限の説明が終わりましたので、ここからは入試でよく問われる「まぎらわしい語の識別」について説明をしておきます。

参考書や問題集でも、しつこくされている部分ですので、大丈夫だとは思いますが、このブログでも念の為扱っておきます。

 

大学入試でどうやって「文法」が問われるのか?~文法題・訳出の対応・本文解釈

今日から「紛らわしい語」の識別を説明するにあたって、はたして大学入試では、古文の文法がどのように使われるか、ということを考えておきましょう。

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基本的に、文法がどう役立つかというのは、「試験で得点をかせぐため」に他なりません。究極を言えば、「本文を読めるようにするため」ではないし、「本文が読めるようになれば正解を選べる」というわけでもありません。

文法は、「正解を選ぶため」に必要なんですね。

基本的には、以下の3つでしょう。

  1. 文法に関わる出題に正解できるようにする。
  2. 訳出の問題で正解を選んだり、減点されたりしないようにする。
  3. 本文を解釈する。

私が言っているのは、3番目はないとは言わないまでも、他にやることがたくさんある、ということです。本文の解釈は、文法も含めた「本文解釈の練習」によってなされます。

決して、文法をやったら本文解釈ができるようになるわけではありません。

1と2については、大きく質が異なります。

1は、

「訳してみたら同じで区別できないんだけど、文法的には違うので、ちゃんと理解しないといけないよね」

ということを含んでいるのに対し、

2は、

「訳してみたら違うから、文法的な根拠をもとにしっかり訳出しようね」

という問題です。

1は、文法のための文法で、2は、解釈のための文法。根本的にはまったく同じなんですけどね。

そのあたりを踏まえて説明に入りましょう。

 

「なむ」の識別の4パターン

今日説明する「なむ」の識別は4パターンです。

だから、この中のどれかを理解すればいいわけです。

それは次の4つ。

  1. 花咲きなむ。
  2. 花咲かなむ。
  3. 花なむ咲く。
  4. 花の下に死なむ。

です。

1 強意の「ぬ」+「む」

最初のものは、強意の「ぬ」+推量(意志や婉曲)の「む」のパターン。

花が咲いてしまうだろう。または、花がきっと咲くだろう。

です。

品詞分解すると、

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まず、動詞は「咲く」ですから、活用させていくと、連用形。

なので、連用形接続の何か、つまり「き・つ・ぬ・けむ・たし・けり・たり」のどれかだとすると、「ぬ」。

ということは下は「む」。花が主語ですから「~だろう」の推量ですが、意志や婉曲の可能性もありますね。

推量系の助動詞の上の「つ・ぬ」は、完了でなく強意と答える…

というような手順で理解できると思います。

2 あつらえの終助詞「なむ」

さて、次はあつらえの終助詞、他者願望の終助詞の「なむ」です。

つまり、「~てほしい」ということ。

願望では、

  • 自己願望「ばや」~たい 「がな」「もがな」「にしが(か)・にしがな・てしが(か)・てしがな」~たい、~たらなあ
  • 他者願望「なむ」~てほしい
  • どちらでもとれる 「まほし」「たし」~たい、~てほしい

という感じ。最後のは助動詞ですね。

必ず他者願望「~てほしい」になるのは、「~なむ」だけです。

さっきと同じように、品詞分解すると、

「咲く」が未然形になったわけですから、助動詞を探しに行くと「む・ず・むず・す・る・じ・まし・で・まほし・り」ですからないんですね。

この段階で、助詞の知識が必要にはなります。

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で、未然形接続の他者願望「なむ」に行きつくわけです。

「咲いてほしい」ですね。

というより、今回でしっかり覚えましょう。

 

3 係助詞の「なむ」

次に出て来るのが係助詞の「なむ」です。こいつは原則として、強意の意味を持ち、連体形で結びます。

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というわけで、接続でいえば、いろいろな言葉につきます。これが厄介。というか、ポイントになります。

花なむ咲く。は、「花が咲く」ですね。強調訳は、そのまま、が原則です。

このあと説明していきますが、係り結びがしっかりあるといいんですけど、問題は、省略するパターンです。そうなると、前の二つと急に似てきます。

4 ナ変動詞+「む」

最後は、形だけ、ですね。

「死ぬ」「往ぬ」に「む」がついたもの。

死ぬだろう、去るだろう、というような感じで訳します。

 

上二段、下二段、上一段など、未然形と連用形が同じ語をどう識別していくか?

さて、それでは、上の4つを踏まえてどんなところが問題になっていくのかを考えましょう。

いずれにせよ、形で見分けられればいいんですが、形で見分けられない時がポイントになります。

まず、最初の想定は、1と2、つまり、「強意+推量」か、「他者願望の終助詞」か、という見分けがつかなくなる状態。

要するに、未然形と連用形が同じもの、ですね。

動詞が、下二段、上二段、上一段、一応書いておくと下一段が同じ形になります。

これらは、形では見分けがつきません。こういう時は意味しか、手がかりがありませんね。

たとえば、

  • 水流れなむ 強意+推量 なら、水が流れてしまうだろう、きっと流れるだろう
  • 水流れなむ 他者願望 なら、水が流れてほしい

ですね。

たとえば、

  • 食べなむ 強意+推量、または意志なら 食べてしまうだろう、食べてしまおう
  • 食べなむ 他者願望 なら、食べてほしい

という感じです。

まず、「水流れなむ」の方から考えます。

他者願望の終助詞ですから、こちらは「流れてほしい」という感じになります。

でも、これを「水が流れてしまうだろう」とか「流れてしまうにちがいない」とかそんな感じでも訳せるとするなら、両方とも成立しうる感じになります。

ただ厳密にいうなら、

  • 強意+推量=実現の可能性が高い推量
  • 他者願望=実現の可能性が高くないからこそ、ねがっている

というような違いがあると思います。このあたりが本文から読めるかどうか…ですね。

次に「食べなむ」です。

これ、終助詞なら「他者願望」ですから、「誰かに」「食べてほしい」わけです。

それに対して、もし、自分が主語なら「自分が」「食べるつもりだ」になるわけだから、これは主語で見分けられます。

「なむ」を願望、なんて覚えていて、自己願望、つまり、「~たい」と混同すると間違えますが、他者願望である限り間違えませんね。

だから、主語が他者だとするときに間違える可能性が出てきて、その場合は、意志でなくて推量、つまり「食べてしまうだろう」となるわけです。

この場合は、さっきの「水」のパターンと一緒の根拠で選ぶことになります。

出題パターンとしては、

  1. 訳させる=その中でどっちととったかチェックする。
  2. 訳を選ばせる=当然、間違い選択肢にふたつあったり、自己願望があったりする。
  3. 動詞の活用形を聞く=動詞の活用でなくて、下の品詞の理解を聞いている

のどれかだと思われます。

最後のは、動詞の活用だけでやるとひっかかりますね。気をつけましょう。

 

係助詞の「なむ」は訳出問題で、出る確率が高い!省略は何か考えるのがポイント

つづいて、意外とひっかかるのが、係助詞の「なむ」の時です。

係助詞は、途中にあって、ちゃんと係り結びになってくれているなら、わかりやすいんですけど、結びが省略されるってよくあるパターンなんですよね。

わかります?見たことないですか?あとに何が省略されているでしょう、的な。

  • ~にや。 原則として「あらむ」
  • ~にこそ。 原則として「あれ」
  • ~にぞ。 原則として「ある」
  • ~になむ。 原則として「ある」

ですね。

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この中でも説明しましたが、

「に」で切れているときは、原則「あり」、(つなげると「なり」だからです)

「と」で切れているときは、原則「言ふ、聞く、見る」など、「~と」につながるものです。(「と」「あり」とすれば、「たり」のパターンで成立はします)

こんな感じが省略されている語彙ですね。もちろん、難関大になると、そんな覚えてすむような典型じゃなくて、ちがう動詞、たとえば「来」とかになって、さらに主体、客体によって、尊敬語とか謙譲語をつけたりするレベルまで問われるんですけどね…

話は戻しまして、「なむ」で終わると、形がだいぶ、1、2に近くなっちゃうんです。

要するに、「文末」に見える。「~なむ。」で終わりますから。

この場合、

  • 1なら、連用形
  • 2なら、未然形
  • つまり、どちらでもない、たとえば、名詞であるとか、助詞であるとかなら、その時点で係助詞 

と考えることができるわけです。

選択肢問題だとしましょう。

  • 1の場合、文末は「~だろう」「~しよう」となる。つまり、これははずす。
  • 2の場合、文末は「~てほしい」「~だったらなあ」となる。つまり、これははずす。
  • 3の場合、文末は省略されている。つまり、「花なむ」となっていたとしても、余計なものがついてくることになる。それが妥当性があれば、選ぶ。

ということになりますね。

センター試験の問題でやってみましょう。

2000年の問3です。

「立ち寄り訪ふべき人もなきに、あやしく、おぼえずなむ」の解釈です。

  1. この邸を訪れる者もない境遇ですので、あなたのご訪問が思いもよらぬことで戸惑っています。
  2. 通ってくる男がおらずひとりですごしていますが、私のことを変だと思わないでください。
  3. 訪ねてくる身内のものもいない身の上ですが、意外なことだと思ってほしくありません。
  4. この邸に立ち寄ってくれる知り合いもいませんが、私は特に気にせずに暮らしております。
  5. 訪ねてくる者もありませんので、私のことを身分が低く自分にふさわしくないとお思いでしょう。

傍線部の検討ではなく、選択肢の検討をしましょう。

ラストが「なむ」ですから、

  • てしまうだろう、きっと~だろう、てしまおう、きっと~よう
  • ~てほしい
  • それ以外=係助詞

のどれかです。

では各選択肢の文末だけ見てみましょう。

  1. 戸惑っています。
  2. 思わないでください。
  3. 思ってほしくありません。
  4. 暮らしております。
  5. お思いでしょう。

となっていますね。

さっきのに合わせると、

  1. 戸惑っています。=係助詞の「なむ」
  2. 思わないでください。=終助詞
  3. 思ってほしくありません。=終助詞
  4. 暮らしております。=係助詞の「なむ」
  5. お思いでしょう。=強意+推量

ということになるでしょう。

こういう対応を考えるわけですね。

では、さっきの場所は何なのでしょうか?

「あやしくおぼえずなむ」です。

上が打ち消しの助動詞の「ず」ですから、活用表だけを丸暗記している人は、「未然形・連用形・終止形」なんて感じになってしまうと思います。

「となると、強意+推量か!」みたいなことですね。

しかし、語感で覚えている人からすると、完了の助動詞の「ぬ」とか過去の助動詞の「き」とか、「ず」つけるの変だとわかります。

「咲かずぬ」とか「咲かずき」とか「咲かずけり」とかおかしいでしょ?「咲かずむ」とか変ですよね?

だから、打ち消しの助動詞の「ず」とか形容詞とかは「ず」「あり」=「ざり」とか、「~く」「あり」=「~かり」とかを持っているわけです。

「咲かざりぬ」「咲かざりき」「咲かざりけり」「咲かざらむ」…ね、だいぶ普通でしょ?

じゃあ、意味対応を見てみましょう。センターとか共通テストってこういうくだらないことで答えが出ることもあります。

という風に考えると、これ係助詞ですね。

じゃあ、何が省略されているのか?というか動詞が省略されているから、連用形なんですね。

「あやしくおぼえず」…さあ、何が続くのか?

普通に考えれば、「あり」ですから、「あやしくおぼえずあり」「あやしくおぼえずなむある」ということでしょう。

ということは訳は、「あやしく(=訳が問題ではありますが)」「おぼえず」「います」という感じ。

  • この邸を訪れる者もない境遇ですので、あなたのご訪問が思いもよらぬことで戸惑っています。
  • この邸に立ち寄ってくれる知り合いもいませんが、私は特に気にせずに暮らしております。

上は、「あやしく」が「思いもよらぬ」「おぼえず」が「戸惑っている」で、そういう状態で「います」という感じ。

下は、「私が」「あやしいとは思わずに」「暮らしています」という感じでしょうか。

まあ、無理やりとろうとすれば、とれなくはないですけど、下の方の、省略された「あり」を「暮らしている」ととったり、あるいは、直訳すると「怪しいことだとは思わないで」を「特に気にせず」と意訳するのは文脈上おかしいですね。つまり、「普通は立ち寄ってくれる知り合いがいないと怪しいと感じるけれど、私は気にしません」ということだから。

さらに言うと、内容理解になりますが、これ、男が女の家を訪れたシーンなんですよね。だから、他の選択肢もあるんですけど、「普通は私みたいな女には誰か男とか尋ねてくるけれど、私はそういう人いません。でも、私は気にしないで暮らしてます」って、初対面の男にいう台詞ではないですね。

まあ、今回は「なむ」の識別ですから、二択にまでいければいいんですが…。

というような感じです。

得点源にしてしまいましょう。

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