大学受験は、これからますます「主体性」や「思考力」が問われます。そうなると、推薦入試をはじめ、一般入試でも小論文的な出題が増える可能性があります。その下準備となる知識をどう頭に入れるかを説明します。
大学入試改革がいいものであれ、そうでないものであれ、間違いなくすすんでいきます。もちろん改革の是非は、ありとあらゆることを総合的に判断して論じるべきですが、「主体性」や「思考力」を問うということ自体は、その方法が適切なのか、あるいは実際にはかれるのか、知識とのバランスは適切なのかなどの問題点があるにせよ、私はいいことに間違いないと思います。
ということを考えていくときに、小論文が入試であるかないかということはおいておき、「小論文を書く力をつける」とということは、必要なことだと思うんですね。というわけで、今日は、小論文の書く力をつけるために、「テレビ」の重要性を語りたいと思います。
ちなみに今日の話は、受験まで少し遠い生徒向けです。すぐそこに受験が迫っている人はここまでの小論文の説明を読んでくださいね。
大学入試の今後と小論文の書き方
大学入試は改革の真っ只中にあります。これについては、賛否があるところでしょう。ここではそれは論じません。
さまざまな政策の結果として、おそらくこれから、今まで以上に定員の枠が推薦入試に回ることになるでしょう。
そこでは、かつてのような(つまり、すでにそうなっていない、ということです)一芸入試は存在しません。仮に「一芸」であったとしてもそれは、学部や学科の専門に関わるような一芸に限られます。東大や京大の入試を「一芸入試」と呼んでいいなら、一芸入試であって、結局学力だよねと思うなら、一芸入試ではないという程度のことです。
もちろん、スポーツ推薦のような形の一芸入試は残るでしょうが、これは圧倒的なスポーツの実力ですから、別格。これさえも、大学スポーツが目指しているように、アメリカのような学業との両立を課しだすようになれば、そう簡単には「一芸」では入れなくなります。最低限の学業の担保が求められるようになるはずです。
ともかくも、推薦入試は拡大します。この時、「学力」を担保するものとして、小論文はますます必要になってくるはずです。なぜなら、新大学入試は「知識・技能」「主体性」「思考力」の3つを必ず問う必要があるからです。
「主体性」は調査書や志望理由書でみます。(なので一般入試は評定平均値だけが使われる可能性があります。)残る「知識」と「思考力」を一気にみられるのが小論文です。このふたつは非常にボーダーがあいまいで、筆記試験、すなわち「知識」に、記述題など考える問題を入れれば「思考力」ですし、「学力」となる「知識」を問う例に、小論文や英語の外部検定も入っている状態です。
したがって、旧帝大のようなところは、センター試験・共通テストを、ここに加えて学力を担保しますが、私大のようにはやく合格者を確保したいところは、独自試験で両方をはかる必要があり、その手っ取り早いものが、「小論文」であるということです。
では、小論文に対してどのような準備をすればいいでしょうか?
受験生であるなら、大学の過去問をやる中で実践的に学ぶ、という方針が見えますが、たとえば、これから高校に入学する生徒であるならどのような準備が必要になるでしょうか。
大きく分けると、二つになります。「書き方」と「中身」です。さて、どちらが大切でしょうか。
話をわかりやすくするために、今年の受験生の話を使います。
法政大学のT日程、文学部の日本文学科では、あらかじめ本を指定し、読ませておいて、当日その本についての問題を出題するという論文型の試験を国語で課します。
さて、その準備として、あなたはどちらにウエイトを置きますか?
- その本を熟読し、解説などを探し読み込む。場合によっては、先生にも読んでもらって、どんな話なのか、どんなテーマなのか解説してもらう。
- 本を読むのも大変だし、どんな問題が出るかわからないから、小論文の問題集を買って、書き方の練習をする。
さあ、どっち?
そんなの当たり前です。1ですね。2なんてまったくいりません。書く練習をするにしたって、テーマや問題を予測して、それで書きたいくらい。そもそも、絶対に「賛成・反対」型の問題なんて出るわけがない。もとになる文章がないんだから。
わかりましたか?
よほど国語の試験の一部でもないかぎり、間違いなく重要なのは中身です。究極をいえば、書き方なんて知らなくてもいいくらい。
その話はすでにまとめています。
という感じでまとめてきたんですが、今日は、じゃあ、中身ってどうやって作るの?という疑問を、まだ入試が1年後、2年後の人たちに向けて書いてみたいわけです。
テレビを見ない子どもたち~新聞より先にテレビを!
結論から書くと、テレビです。テレビを見ることが中身を作ることにつながります。もうちょっというと、テレビよりいいのは、本を読むこと。小説読んでもだめですよ。いわゆる専門家が書いた文章をしっかり読むことが大事です。
でも、これ、ハードル高くないですか?
となると、いかに簡単にこういう知識を入れるかというと、現代文と同じになるのですが、入試問題をやること。向こうが必要な知識をえらんで与えて考えさせてくれるわけですから、過去問題をやること、読んで理解することが大切なんです。
www.kokugo-manebi.tokyo
ということは、いきなり入試問題やれっていうことですから、やっぱりハードルが高い。だとすると、多少は入試問題やるにしても、もう少しハードルの低い準備がほしい。それがテレビです。
もうちょっというと、新聞はおすすめしないということでもあります。
新聞の欠点~新聞を読んで入試に使うなら…
新聞を読むことが無駄になることはありません。一応最初に言っておきます。無駄になるなんてことがあるわけがありません。
しかし、効果的ではないし、まして即効性がない。
なぜかというと、新聞は、できるだけ起きたことを正確に客観的に書こうとしていうるからです。わかりますか?
小論文で書かなければいけないのは、意見です。つまり、あったことを知るだけでなく、それをどう考えるかが大事なわけです。
出来事だけ知っていれば、それをどう考えればいいかだけというレベルの高い生徒はともかく、どう捉えるべきかわからない生徒には、参考になりにくいんです。
ちなみに、ですが、参考になる一番の学部系統は、医療看護介護などの系統です。現在では少子高齢化は大きな社会問題になっていますから、新聞紙面の中盤から社会面にいたるあたりに、こうした問題は、さまざまな人の声を集めてリアルな情報を掲載しているんです。ですから、ものすごく参考になります。「医療の今」とか「高齢化社会」とか「在宅医療」とかキーワードがいっぱい出て来ます。こういう話になると、サービス、医療を受けている人の声を、またサービスを提供する側の声を集めて、具体的に何が問題になるかを論じているから、生々しくて勉強になります。
次に参考になるのは、法学部社会科学系統です。新聞は、政治に対峙していることが多いので、社説をはじめとして、さまざまな政策に対して意見を持っています。したがって、こちらは2面あたりから、前半に、国際関係や金融政策をはじめとして、政策論を展開しています。したがって、このあたりも参考になります。こちらは、市民の声は、一部だろって感じがしますが、知識のある論説員がしっかりと書くので、勉強にはなりますね。
もちろん、教育や環境など、社会問題になりやすいものはとりあげる傾向が強いんですが、分量が少ないし、踏み込みが甘い。踏み込むにしても、法学部的な政策論になることが多く、教育的な実践になることは少ないんです。だから、システムとか枠組みの議論にはなっても、教員と生徒の具体的な話にはなりにくいですね。
さっきから書いていますが、意味のないことはないですよ。でも、それで足りるかっていったら足りないっていうことです。
そうなってくると生の声が出てくるのはテレビです。
必要なテレビをどうやって見つけるか?
テレビの場合、とにかくわかりやすい。もちろん、テレビも報道ですから、客観的なことを心がけます。でも、それはニュース番組までの話。
それ以外の番組になると、メッセージとか意図とかいうものを持つようになります。制作者の思いがそこに入ってくるわけですね。番組タイトルから、取り上げて取材する対象から。
だから、意見そのものが番組になかったとしても、そのメッセージがある程度の意味をもって、私たちに訴えてくるわけです。
たとえば、NHKスペシャルであり、たとえばクローズアップ現代であり。プロフェッショナル仕事の流儀もあれば、ガイアの夜明けもあります。カンブリア宮殿とかね。教育問題とか医療系になるとEテレ(教育テレビ)で山ほどやってます。
理工系だと昔は、夢への扉があったんですけど、なくなっちゃったので、とても残念。でも、今言った番組でも、理工系の人を取り上げれば、じゅうぶん勉強になります。
私が好きなのは日曜日で、「テレビ寺子屋」に始まり、「所さんの目がテン」が理系で、「がっちりマンデー」で経済を勉強。
NHKは見始めると意外とおもしろいです。
なぜ、こんなことを強く書くかというと、今の子どもたちはテレビを見ない。教室でテレビのバラエティやドラマの話をしてもついてくるのは、せいぜい5人程度です。まして、こんな番組みない。
家にテレビそのものがないという生徒もいました。もう誰もみないから撤去したんだそうです。音楽にネットに…。そういう時代なんですね。
でも、ハードディスクに録画できたり、キーワード検索で録画できたり、環境は整っています。だから、テレビをすすめたい。
前にも書きましたが、テレビを見る子どもの方が成績がよい、という時代が来ているんです。
では、次回以降は、どういう風にテレビを小論文に生かすか、番組紹介をふくめてやっていきます。