古文単語の13回目は、「敬語」です。敬語の中でも本動詞は、結局単語ですので、しっかり覚えましょう。
- 敬語を覚えるコツ
- 尊敬語と謙譲語~補助動詞
- 言ふ~尊敬語と謙譲語
- 「たまふ・たぶ」の尊敬語と謙譲語
- 「参る」「参らす」と「奉る」の尊敬語と謙譲語
- 見る・寝
- 「侍り」「候ふ」は丁寧語と謙譲語
- 「まかり~」の形
- 下二段「給ふる」をおさえておく
- その他の敬語~尊敬語と二重尊敬語の流れ
敬語を覚えるコツ
敬語も、本動詞になってくると、ほぼ単語です。この単語にはどういう意味があるか、ということになります。
さて、この単語を覚えるときのコツは、単語ベースにすることです。
つまり、
× 「与える」の尊敬語は?謙譲語は?
ではなく、
〇 「参る」は、尊敬語だとどんな意味で、謙譲語ではこんな意味
というように押さえいく方が覚えやすいと思います。
しかも、だいたいあるグループで意味が共通したり、差があったりするので、整理しておくと、忘れにくいですね。
尊敬語と謙譲語~補助動詞
まずは、尊敬語と謙譲語の補助動詞ですね。
補助動詞というのは、どんな動詞でもあとに何かをつければ、尊敬語になったり、謙譲語になったりするものです。これは一番わかりやすいパターン。
現代語でも、
尊敬語なら「~なさる」、謙譲語なら「~し申し上げる」とすればいいですよね。これに似ています。
尊敬語
~給ふ・~おはす・~おはします・~ます・~まします・~遊ばす・~めす、など
注意点としては、「おはします」「まします」などの二重尊敬系のものが、ただの尊敬の補助動詞として使われる点です。
訳は「~なさる」「お~になる」「~していらっしゃる」などです。
謙譲語
~申す・~聞こゆ・~奉る・~参らす、など
注意点としては、まず、「聞こゆ」が、「申す」と同じ意味であるということです。そこがわからないと、かなりレベルとしては低いですよ。それから、補助動詞の用法としては「~参る」がありません。ここは注意が必要です。
訳は「~し申し上げる」「お~する」などです。
言ふ~尊敬語と謙譲語
「言ふ」に関しては、「言ふ」から、尊敬語、謙譲語でまとめた方がいいと思いますので、まずはしっかりおさえましょう。
尊敬語
仰す・仰せらる
のたまふ・のたまはす
二つの流れがありますね。あとで、まとめますが、基本的に、尊敬語から二重尊敬語になっていく流れです。厳密には単語一語ですが、大学の先生が作っている大学だと、「仰せらる」の「らる」に線を引いて、助動詞の職能(文法的意味)を聞く問題を出したりします。当然、「尊敬」と答えざるを得ませんが、本来は単語一語というのが現代の受験国語的な解説になります。
謙譲語
申す・聞こゆ
奏す=帝に申し上げる
啓す=宮に申し上げる
「申す」は問題ないでしょう。「聞こゆ」の「~ゆ」ですから、「聞かれる」という感じです。つまり、偉い人のお耳に入れる、というような表現で、要は同じように「申し上げる」ということになります。
「奏す」と「啓す」は絶対敬語、なんて呼ばれたりもしますが、申し上げる相手がわかるという表現です。「奏す」は帝に申し上げること、「啓す」は宮(中宮・東宮)に申し上げること、なんですが、理解してほしいのは、別に帝や宮に言うからって、このふたつを使わなくてもいいんですね。普通に「申す」でいい。
よく「だったら、こんなのなければよかったのに…」という人がいますが、逆です。使ってくれたら、対象が誰か判別できます。むしろ「絶対使うっていうルールだったらよかったのに…」ですね。
ともかく、絶対じゃない、というのが厄介です。
「たまふ・たぶ」の尊敬語と謙譲語
「たまふ」「たぶ」は「お与えになる」という意味でとれば、尊敬語です。「偉い人がお与えになる・くださる」という感じ。
これをイメージをそのまま、偉くない人を主語にして考えると、「偉い人からいただく」という感じになりますね。「たまはる」を入れるとより、このイメージがはっきりしてきますよね。
これは同じイメージを表から見れば、尊敬語、裏からみれば、謙譲語、というような形になります。
「参る」「参らす」と「奉る」の尊敬語と謙譲語
さて、山場は「参る」「参らす」「奉る」です。まずは、ここを共有しましょう。
この3つ、まずはセットでイメージしてくださいね。
謙譲語で「差し上げる」という意味
まずは、この3つに共通するのは、謙譲語で「差し上げる」という意味です。
これが共通すること。
注意でいうと、「奉らす」という単語はない、ということ。
もし、見たとするなら、「奉ら」「す」と使役か尊敬の助動詞がついていると解釈する必要があります。
「参る」という意味になるのは「参る」だけ。
謙譲語で「参上する」、つまり「参る」のままになるのは、「参る」だけです。「参らす」は、「参上する」という意味にはなりません。
「参る」は「して差し上げる」という万能型。その代わり、「参らす」「奉る」は補助動詞になる。
「参る」には、「(何かを)して差し上げる」という、何にでも使えるような用法があります。枕草子で、「御格子参らせよ」なんていうのを見たことがあると思うんですが、これがその用法。その時に応じて、適当に動詞を置き換える必要があります。
「参らす」「奉る」にはそういう感じのものはないんですが、その代わり、補助動詞になりますから、似ているといえば似ています。「~して差し上げる」ですから。
「参る」「奉る」は尊敬語になると「召す」のイメージ。「召す」は「召し上がる」と「お召しになる」
「参る」「奉る」は「して差し上げる」の意味が転化して、「召す」と同じような意味になります。「召す」といえば、「召し上がる」と「お召しになる」という形。「参る」が「召し上がる」という意味を中心に、その他の意味にもなります。「奉る」の方が、用法としては「召し上がる」「お召しになる」「車にお乗りになる」という3つに使われるような形でおさえるといいでしょう。
「召す」は「お呼びになる」も当然ある。
「召す」という語は、「見」「す(尊敬)」からの転という話ですので、現代語の「お呼びになる」の他に「御覧になる」とか、先ほどの「参る」「奉る」同様、「召し上がる」「お召しになる」などの意味もあります。
見る・寝
「見る」は尊敬語で「御覧ず」。さっきの「めす」もありますね。
「寝」は「大殿籠る」。「大殿油」なんていうのも出て来ますね。油のことです。要はあかりですね。
「侍り」「候ふ」は丁寧語と謙譲語
丁寧語は「~です・~ます・~ございます」と訳します。これだと補助動詞ですが、「あり」自体が本動詞として「ございます」と丁寧になることもあります。
たとえば、「人あり」が「人侍り」になるようなことです。
丁寧語は「侍り」「候ふ」が基本。これだけ。あるところは会話文の可能性が高いですね。
これが、謙譲語になると「お仕えする」という意味になります。自分が丁寧にひかえているようなイメージですが、謙譲語ですね。
「まかり~」の形
扱いがむずかしいのですが、謙譲語になったり、丁寧語になったりはしますが、「まかり~」の形は「です・ます」で訳すといいです。
「まかりなる」なら「なります」という感じです。
丁寧語は「侍り」「候ふ」とまとめられるのですが、会話文中の「申す」などはかなり丁寧語的な解釈、つまり、聞き手への敬意と捉えないと敬意の対象がおかしいことになるケースがあります。言い換えれば、謙譲語の中のいくつか、たいていは会話文中なのですが、それは丁寧語と同じようにとらえる必要な用法があるんですね。
下二段「給ふる」をおさえておく
その中の代表格が下二段の「給ふ」です。実際には、「給ふ」で出ることはなく、たいてい「給ふる」の形で出ますから、「給ふる」で覚えておくといいです。
特徴は、
- 会話文中で使われる
- 主語は「私」
- 前にとるのは「思ふ」「見る」「聞く」のような単語
です。かなり丁寧語的です。
ちなみに「思ひ出づ」のような単語の中に入ることもあります。「思ひ給へ出づ」のような感じです。
その他の敬語~尊敬語と二重尊敬語の流れ
最後に、その他の敬語を扱うために、尊敬語と二重尊敬語の流れを追いましょう。
先ほどのでいうと、
いふ→仰す→仰せらる
いふ→のたまふ→のたまはす
の流れですね。基本的な単語が多いですが、逆にいえば、しょっちゅう出てますよ。
思ふ→思す→思し召す
聞く→聞こす→聞こし召す
しる→しろす→しろしめす
「しる」は「知る」と「領る・治る」ですね。意味が変わります。
あり→おはす→おはします
あり→ます→まします
見る→御覧ず→御覧ぜらる
というような感じです。
訳出の仕方など、敬語の知識とともに学習してもらえるとうれしいです。