古文単語シリーズは、試験によく出る「呼応の副詞」です。本文には必ず出てきますから、ポイントをおさえましょう。
呼応の副詞というのは、ある特定の副詞がくると、文末が決まる、ということですね。現代語でもあると思います。文法上の細かいことをいえば、すべてが副詞というわけではありませんが、呼応のあるものを中心にまとめました。
打消しグループの基本~ず・なし・で・じ・まじ・や・か
まずは、非常に数の多い打消しグループです。意外といい加減になっているのは、受け所。「打消し」と言いますが、それが何かわかっていないと困りますね。
- ず~打消の助動詞。ある意味では本当に打消しはこれだけです。
- なし~形容詞。でも、存在がないわけですから、これも打消し。
- で~打消しの接続助詞。「未然形+で」で「~ないで」と訳します。
- じ・まじ~打消推量(意志、婉曲など)の助動詞。will notで「~ないだろう」ですね。
- や・か~疑問の係助詞ですが、文全体が反語になるとするなら、これも打消しの意味のひとつです。「~だろうか、いや~ない」ですから。
ということで、説明にいきましょう。
「え~ず」は「できない」
まずは、「え~ず」は「できない」ですね。とにかくよく出ますからしっかり覚えましょう。「えさらず」「えならず」「えもいはず」などという形で慣用表現になっていることも多いですね。「えさらず」は「え避らず」で「避けることができない」。「えならず」「えもいはず」に共通するのは「素晴らしい」ということ。「え成らず」で実現不可能なぐらい素晴らしい、「えも言はず」は言葉にできないことです。ただ、こちらは、悪いことにも使いますね。言葉にできないぐらいひどい、ということです。
「まったく~ない」は数が多い
「まったく、少しも~ない」はさまざまなパターンがあります。
- つゆ~打消
- さらに~打消
- よに~打消
- すべて~打消
- たえて~打消
- つやつや~打消
などです。
「つゆ」は「露」。「ちょっと」というほどもない、ということですね。「そんなこととはつゆ知らず」みたに現代語でも使わなくはないです。「つゆほども」なんていうこともあるかもしれません。
「さらに」は「更に」で、「重ねて」「加えて」という感じ。打ち消すことをさらにするので全否定につながります。
「よに」は「世に」で、打消し語がないなら「実に」「非常に」という強調語。打消しも強調されます。
「すべて」「たえて」はそれぞれ「全て」「絶えて」ですから、やはり全部なくなりますね。
「つやつや」は「すっかり」とか「きれいさっぱり」という意味なので、打消しがくるとやはり「まったく~ない」になります。
「ほとんど~ない」
「おほかた」は「だいたい」「ほとんど」ですから、こうなります。
「をさをさ」も「ほとんど~ない」「めったに~ない」ですね。
「よも」は「じ」を伴う。will not
「よも」は現代語では「よもや」という形になって残っていますね。ですから、「~ないだろう」と未来形の打消しですね。
禁止句形の「な~そ」
禁止句形は「な~そ」です。これが現代語では文末について「~な」と禁止を表しますが、古文でもそういう使い方もあります。
「勿来」という地名は「なこそ」と読みますね。漢文で読むと「勿」は「なかれ」で禁止句形。「くることなかれ」「きたるなかれ」などと読みますが、和語にすると「な来そ」で「なこそ」です。覚えておきたいですね。
ゆめゆめ・あなかしこ
「ゆめゆめ~禁止」句形は、現代でも「ゆめゆめ忘れるでないぞ」みたいに聞いたことはある程度には残っていますね。終わりは禁止といっていますが、「じ・まじ・べからず」のようにしてもやはり禁止の意味が出ますからOKです。
「あなかしこ」は「あな畏し」ですので、「ああ恐れ多い」という感じ。これに禁止を加えると強めている感じになっています。
「定めて~推量」
「定めて」というのは、「おおよそ」ぐらいのイメージ。だから「きっと」とつければいいわけですね。
他にもありますが、現代語でイメージできるような表現は省略してしまっています。というわけで呼応の副詞でした。