古文単語のシリーズは17回目です。今日は指示語や疑問文に関わる古文単語を説明します。
- 「さ」「しか」は「それ・その・そう」を表す
- 「と」「かく」は両方とも指示語。
- 「ずは」は「ずば」の清音化。「さは」の場合は…
- 「など」「などか」は「どうして」。「なんでう」は「なん」「といふ」
- 「いか」は「どう」。「いかに」「いかが」「いかで」「いかでか」
- そのほかの疑問を表す言葉
「さ」「しか」は「それ・その・そう」を表す
まずは、基本的な指示語の「さ」ですね。これは「それ・その・そう」などを表します。「か」とくれば、「これ・あれ・この・あの・こう」などの意味になります。
その流れで、「さながら」「さればこそ」などの慣用的表現がでてきます。
「さながら」は「さ」「ながら」です。現代語の場合、「さながら」は「それはまるで」みたいな意味になりますが、古文の場合、「さ」「ながら」ですから、まずは、「そのまま」です。この場合の「~ながら」は「食べながら歩くんじゃない!」という感じのやつですね。古文の「ながら」は逆接になったりもしますので、近世では「そうではあるが」という意味にもなりますが、平安時代であれば、「そのまま」です。中世では「全部」という風に意味がうつってもきます。
「さればこそ」ですが、まずは「されば」は考えてみると「さ」「あれば」ですから、「そうあるので」ですね。已然形+ば、ですから。その後は、「あれ」が省略されている感じです。係り結びですね。だから。「そうだから、こうなるの」みたいな感じ。だから「やっぱりね」です。
「さ」を使うのは、「さて」とか「さては」などもありますが、指示語の流れで解釈しましょう。
「しか」は、「かくかくしかじか」なんて使ったりしますが、要は「さ」と一緒。漢字で書くと「然り」で「しかり」。漢文でよく見ませんか?「自然」が「おのづからしかり」とか「当然」が「まさにしかるべし」とか。已然形は「すでにしかり」で、未然形は「いまだしからず」ですね。
漢文だと、「しかして」「しかるに」「しかれども」「しからば」などの読みがありますが、それぞれ「そして」「だけど(そうではあるが)」「しかし」「そうであるなら」という感じです。
「さる」「しかる」はそれぞれ「さ」「ある」、「しか」「ある」の組み合わせですが、「そうある」というのは理想的な状態を指したりもしますから、「しっかりした」「ちゃんとした」という意味を指すわけです。現代でも「しかるべき人を出しなさい」とか「しかるべき時にやってね」みたいな使い方をしますよね。
「と」「かく」は両方とも指示語。
続いて、間違いやすい指示語は「と」ですね。
これは「とかく」「とにかく」「とやかく」「とにもかくにも」といった表現を思い出すことが大事。全部、「あれこれ」です。「とにもかくにも」なら「こうにもああにも」ぐらいの感じ。
古文では「とありかかり」とか「とまれかうまれ」なんていう表現も出てきます。
「とにかく」という表現に加えて「兎に角」って見たことありません?今も打ち込んだら変換してくれたし。これ、漱石さんが考えた当て字です。漱石さんは余計なこと結構やってくれて、「妻君」を「細君」て書いたりとかね。細かいうるさいやつ、ってことですよね。このおかげで、少なくとも「と」が指示語っていうのがわからなくなっているわけです。
時間をあらわす語で「とばかり」を説明しましたが、「と」が格助詞、つまり「~と」というのでなければ、この「と」(文法的には副詞ですが)に「ばかり」がついて、「これぐらいの間」で「ちょっとの間」になるわけです。
「ずは」は「ずば」の清音化。「さは」の場合は…
「さは」を説明するために、清音化の部分を作ります。
まずは「~ずは」という表現です。
たとえば、「花咲かずは」というのをイメージしましょう。なんとなく「花が咲かないのは」というような訳が思い浮かびませんか?
これ、そうだとすれば文法的におかしいですよね?
気が付きます?
そうです。「~は」というのは強調の係助詞なんですけど、主語をあらわすイメージが強いですよね。間違ってませんが、本当は、区別したり、強調したりしてる語なんです。
で、現代語の「~は」だとイメージすると、上にくるのは、名詞、つまり連体形になりませんか?現代語だと、動詞がきていると「の」をいれたくなるでしょ?「花が咲かないのは」というように。
だから、もしこれが係助詞なら、「花咲かぬは」のはずなんですね。だから、これは係助詞ではない。
で、清音化です。もともとは「花咲かずば」です。「ば」ならわかりますね。接続助詞で、「未然形(連用形)+ば」は、仮定条件、「已然形+ば」は確定条件という、あれです。というわけで「~でないなら」と訳す必要があります。
さて、「さは」です。この場合はどうかというと、今のふたつの可能性が両方あるんですね。
「さ」は名詞的に使うこともできますから、そうだとすれば、「それ」「は」で通じてしまいます。「そうは」とか「そのようには」とか訳すこともあります。「は」は区別しますから。
一方、さっきと同じように、「さ」「ば」、おそらく「さ」「あら」「ば」、もっといえば「さらば」の詰まった感じとみてもいいんでしょうが、「それならば」「それでは」と訳すこともできるわけですね。「さば」の清音化です。
「など」「などか」は「どうして」。「なんでう」は「なん」「といふ」
疑問文については、文法のところで説明しました。
「や」「か」が疑問文を作りますが、実際には、連体形で終わらせて、係助詞はないけど、疑問文で解釈するようなケースもあります。
さて、そういう中で、現代とは違うけれど、死ぬほど出て来る筆頭格は、「など」です。「なぜ」といえば、わかるんですが、もともとは「など」だったんですね。係助詞がつけば、「など」「か」です。「なぞ」となることもあります。
もちろん、会話文のあとなどに「『 』など」という形で出て来る「など」もありますが、それとは当然違います。
続いて「なんでふ」ですが、「てふ」を「ちょう」と読むぐらいまでは中学校で覚えていると思うんですが、これはもともと「といふ」がつまったものです。要は口語。「してしまう」を「しちゃう」というようなものに近いんです。だから、「なんでふ」は「何という」という形になるわけです。
「いか」は「どう」。「いかに」「いかが」「いかで」「いかでか」
「いか」は「如何」ですね。「どう」と覚えておくといいです。
「いかに」は「どのように」
「いかが」は「いか」に係助詞の「か」がついて「いかが」。そのまま「どうか」。
「いかで」になると、
- どうして
- どうしても=なんとかして
という二つの意味が考えられます。
1のケースですが、疑問ですから、「か」がつく確率が高い。「いかでか」となっていることが多いです。なっていなくても、疑問になりますよ。で、疑問ですから、推量系の助動詞が入る確率が高い。つまり、「む」「べし」「らむ」「けむ」「まし」とかですね。
2のケースの場合、「か」はつかないことの方が多いですが、「いかでか」で「どうして」ととるケースがあります。この場合、文末は、意志や願望です。願望系の終助詞がくるとわかりやすいですね。「ばや」「なむ」「にしがな」「てしがな」「もがな」とかですね。ところが、「む」や「べし」は、意志ととることもありますよね。
そうなってくると、1と2の見分けはやはり文脈に頼らざるをえなくなります。
そのほかの疑問を表す言葉
場所をあらわすのは、「いづこ」ですが、「いづく」とか「いづち」とか「いづら」になったりすることもあります。このように、現代語に近い形で多少変化しているものを許容して覚えないと、無限に覚えなければいけなくなりますので、ここでは、載せていませんが、多少の形が変わるものには慣れておいてくださいね。