古文単語シリーズは9回目です。今日は「日常生活に関わる語」をまとめます。
今日は「日常生活に関わる語」です。こういうと聞こえはいいですが、いろいろなグループからこぼれてきた単語ですので、まとまりにかけるかもしれません。できるだけ小さなグループにして、少しでも整理できればと思います。
- ののしる・おどろく
- 本文からの類推グループ~ゆかし・ものす
- いとけなし・いはけなし~「稚」をイメージしておく・かたみに=頻出
- 「ぐす」と「ゐる」。「居る」なら「座る」。間違いやすいグループ
- 「まうく・あるじす・もてなす」「おきつ」と「さす」
- 「さはる」と「さす」
ののしる・おどろく
超頻出なのは、まずこのふたつ。
「ののしる」は大騒ぎすること。現代語の「罵る」のイメージはほぼないといっていいと思います。
「おどろく」は、基本は「ハッ」とするイメージ。だから、普通の「驚く」のケースもありますが、もうひとつハッとするのは、起きたとき。だから「目覚める」という意味も出てくるんですね。
本文からの類推グループ~ゆかし・ものす
こちらも頻出のふたつ。共通するのは、本文からの類推が必要になることですね。
「ゆかし」は「行かし」で、行く、の形容詞型です。「心がひかれる様」なんて、単語集に書いてあるかもしれませんが、入試ででてくるときは、
「~たい」
です。読みたい、見たい、会いたい、話したい…などなど。何をしたいのかを考えてあてないといけなくなります。
「ものす」は「物す」ですから、英語の「do」だと言われたりします。だから、こちらも何をしているのかを前後から類推しないといけないですね。
いとけなし・いはけなし~「稚」をイメージしておく・かたみに=頻出
いとけなし・いはけなし=両方とも幼稚の「稚」がもとなんですが、別に「幼い」でもまったく問題はないです。この「~なし」は、「~ぽい」の方の「なし」ですね。古文だと「はしたなし」「うしろめたなし」がこの「なし」。現代語なら「汚い」とか「とんでもない」とかがこのグループ。
かたみに=互いに、なんです。結構入試で問われることが多いので必ず覚えておきましょう。
「ぐす」と「ゐる」。「居る」なら「座る」。間違いやすいグループ
ここは間違いやすいグループです。
具す・率る(ゐる)=居る(ゐる)・居り(をり)
まず、「具す」はbringのイメージ。ものだったり、人だったりはしますが、「連れて行く」感じです。それと似ているのが、「率る(ゐる)」。ワ行の上一段動詞です。
「ゐる」は別の漢字もあって、「居る」。こちらは、「居ても立ってもいられない」という表現を思い出してほしいのですが、「座る」ことです。
ここに居ることも立つこともできないって変でしょ?だから、まず「座る」にしましょう。居座る、なんて表現もありますが、座ることはここに居ることでもありますから、「居る」という意味でとれることもありますが、そうでないときは、「座る」ですね。
「居る」を「おる」と読むことはないです。そのばあいは「をり」でラ変動詞になるからです。
もし終止形が「おる」になるとしたら、
ひとつは「折る」。四段活用です。
それで意味が通じないなら、現代語と形が違うから。つまり二段活用なので「る」をつけます。「おるる」。つまり、「おりる」です。古文だと「る」をとって、uに変えますからね。よくわからない人は必ず復習。
「けつ」はひらがなだとわかりませんが、漢字にすると「消つ」です。四段活用の動詞です。
「目」は「ま」。「守る」は「もる」。
つづいて、体の一部で混乱するのが「目」です。「ま」と読むことが多いんですね。「まぶた」「まつげ」「まゆげ」など、「ま」が基本。「まぐろ」は目が黒いからのはずです。この辺はいい加減ですけど。少なくとも「目が黒い」「めぐろ」がなまったというのは嘘です。もともと「ま」なんだから。
となると「守る」は「もる」です。「子守」とかね。「防人」は「さきもり」ですが、「もり」は当然「守り」です。
となると「まもる」は「目」「守る」で、「見守る」「じっと見る=見つめる」あたりになりますので、注意が必要。
「むすぶ」
水をすくうこと。歌なんかでよく出てくる印象がありますが、現代語と意味が違うので、本文にあるなら聞かれやすいですね。
「ついで」
これも結構問われる印象です。「機会」すなわちチャンスと、「順序」ですね。「ついで」って漢字で書くと「序で」ですから。そんなことを知っていると、後ろは理解できるかな。
「まうく・あるじす・もてなす」「おきつ」と「さす」
さて、間違いやすいのをセットで3つ。
「まうく・あるじす・もてなす」ですね。これ、「接待系」の単語に見えません?さあ、どれだ?
まあ、正解は全部そうなることがあるんですけど、メインは、「あるじす」です。
「あるじす」は「主す」で、まさにもてなすイメージ。
「もてなす」は客人を歓待するという意味もありますが、それよりは「取り扱う」とか「~のふりをする・(~のように)ふるまう」というように、「誰かを何かとしてあつかう」という方が用例は多いです。こちらを覚えましょう。
「まうく」は「設く」であるなら、準備すること。これに「あるじ」をつけると、「あるじもうけ」というような形で宴会、接待になることもありますね。
「おきつ」も同じように「計画・指図」です。これ、聞き慣れないように感じますが、「おきて」といえばわかりますか?
これ、絶対に覚えた方がいいことなんですが、
動詞の連用形が名詞化する
んですね。
だから、「おきつ」が名詞化して、「おきて」。なんですけど、現代にはこのように、名詞だけが生き残って動詞が消えてしまったものもあるわけです。したがって、逆に連用形を探してみると、現代語でその名詞形が探せることもあるんですね。
たとえば、
「もみづ」
なんていうのはどうでしょう?
四段か上二段なら、「もみぢ」
下二段なら、「もみで」
です。
わかりますね?もみじ=紅葉の動詞形が「もみづ」、つまり紅葉することです。
もうひとつ。
「しのぶ」ですが、何活用?
思わず四段と答えたくなりますが、「しのぶれど」とか「しのぶることの弱りもぞする」とか百人一首が出てくると、二段まではわかるわけです。
じゃあ、上、下?
連用形考えると「しのび」「しのべ」。名詞であるのは、「しのび」。なので、上二段だろう、ということになるわけです。
わかりました?
戻ります。
「さた」は「追って沙汰有り」みたいな感じで、なんとなくわかる。
「あらまし」も概要みたいな意味かなと思いますが、ここに入れておけば計画という意味はわかるところです。
「さはる」と「さす」
「さはる」は「障る」です。障害があることですね。「さす」は「鎖」でおぼえてしまうのがいいかもしれません。門を閉じたり、中断したりすることです。やめる、というような感じです。