ここまで、漢字のイメージ化の話をしてきました。今日は実際に、漢字を覚えるステップを考えてみたいと思います。記憶術の話も入りますので、参考にしてください。
ここまでのおさらいです。
漢字を覚えるためには、映像にすることが大事。
イメージ化するためには、部首の意味を知っていることが大事。
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音を作る部分を中心に分類して、部首を変えて整理すると、漢字がわかりやすくなるというお話。
というわけで、ここまでの復習でした。
今日はこれらをもとに実際に漢字を練習してマスターするところに進みます。ちょっとこんなことをやって、漢字を得意にしてしまうのはいかがでしょうか?
- 漢字を覚えるためには、意味をイメージ化する。
- 音記号があれば、みつけ、同じ音記号を探す。
- 覚えにくければ、無理やり映像化する=語呂で覚える。
- 覚えたと思ったら「空に書く」。
- 空に書けたら、IMRシートを使う。
漢字を覚えるためには、意味をイメージ化する。
漢字を覚えるためには、意味をイメージ化することが大事です。
私たちは、漢字という中国の文字を日本語風に読む文化の中にいます。したがって、ある程度漢字が読めると、その漢字から意味が立ち上がってくるわけですね。
ということは、漢字ができればできるほど、覚えなくてよくなる、ということです。だから、大人の場合、たとえば高校生ぐらいをイメージするなら、今まで覚えてきた漢字に意味があることがわかるだけで、かなり漢字が理解できるようになります。
しかし、そのためには部首が必要です。
まして、小学生ではじめて漢字を覚えるとなれば、そもそも覚えている漢字がないわけですから、イメージのとっかかりとして、「部首」が必要になるんですね。
部首は意味を表します。それは以下にまとめました。まずは、ちょっと読んでみてください。本当に漢字がおもしろくなりますよ。
これで、部首の意味がざっとわかりました。これで、漢字を覚えるための準備が終わりました。
では、次が音記号です。
音記号があれば、みつけ、同じ音記号を探す。
これが、漢字に強くなるポイントです。
記憶の仕組みとして、他のものと関連づければ関連づけるほど忘れにくくなります。漢字の場合でいうと、ひとつ覚えるより、同時にたくさん覚えた方が忘れにくいということになります。
とはいっても、全然関わりのない漢字をまとめてしまえば、それは覚えるのに負担がかかるだけですから、その時に有効なのが音記号です。
漢字の大部分は形声文字で、形声文字は「意味をあらわす部首」と「音記号」でできあがっています。ですから、関連づけをするとしたら、部首で行うか、音記号で行うか、です。
で、音記号という概念がメジャーではないために、部首で関連づけようとしても、逆の部品を意識できないので、散漫になりがちです。したがって、音記号でまとめておくのがいいんです。
具体的には、もし、覚えようと思っている漢字に、音記号があることに気がついたら、部首を変えて、どんどん覚えていくんですね。
たとえば、「祖先」というのがターゲットの漢字だとします。
「祖」の音読みは「ソ」。部首は示へんですね。だから、「元祖」とか「先祖」とかです。
これの部首を変えます。
糸へんにすると、「組む」「組織」です。
米へんにすると、「粗い」「粗品」です。
のぎへん(意味は実り)にすると、「租税」「租庸調」。
こざとへん(意味はブロック)にすると、「阻む」「阻止」です。
音は、全部ソだし、部品を何度も書くと、あとは部首を組み合わせるだけです。
「徐行」があるとします。ぎょうにんべん=道ですから、徐行ですね。「徐ろ(おもむろ=ゆっくり)」ですが、道に関わるからです。
音記号は「余」余る、ですが音読みは「ヨ」。
しんにょう=行く、ビュンですので、「途」は「途中」。
こざとへん=ブロックに変えると「排除」「除外」ですね。
又に変えると、「叙述」です。述べること、です。
こんなことを一手間かけてやると忘れにくくなります。
これを簡単にするのがいつも紹介している形声文字カルタです。
本当に漢字の別の面が見えてきますよ。
覚えにくければ、無理やり映像化する=語呂で覚える。
さて、ここからが漢字の練習に入ります。部品がふたつぐらいだと、この程度の作業でできるんですが、部品が3つ以上の組み合わせになってくると、これだけの作業では、漢字がイメージできなくなってしまうことが多いです。そうなるとイメージ化が必要。これは、語呂というか、インパクトというか、とにかくストーリーのある映像にする必要があります。
それはこちら。
このあたりになってきますと、記憶術の手法ですね。イメージにしたり、ストーリーにしたりするんです。トランプのカードを切って、順番を覚えるというような記憶の競技も、それぞれのカードが人や場所やモノになっていて、それをつないでストーリー化する手法が多いようですね。
上の記事で、記憶術を紹介しています。「信憑性がない」と思う人は、是非、上の記事を使って、書いてある通りに映像化してみてください。本当に、簡単に覚えて、しかも忘れないようになりますから。
というわけで、漢字もイメージ化です。
たとえば、さっきの漢字のイメージ化のページでは「花壇」とかを扱っています。問題は「壇」ですね。音記号は「旦」です。
だから、部首を変えていくと、
- てへん=手で「担ぐ」「担当」ですね。
- にくづき=肉で、「胆石」胆=きも、です。
- で、そもそもこれだけで、「元旦」。地平線から日があがって、朝という意味です。
みたいなことですが、この漢字の場合、他が多い。
部首として「土」、なべぶた=点に棒です。それから「回」。
これらを組み合わせてストーリーにしたい。
「壇」は「土」でできていて「帽子=なべぶた」をかぶったおじさんが、くるくる「回」ってあけましておめでとう=元「旦」。
みたいなことです。こんな作業をしてみるといいですね。
覚えたと思ったら「空に書く」。
さあ、これができたら、書いてみます。しかし、鉛筆は持たない。いや、持っていてもいいんですが、紙に書かない。
「空に書く」
これが大きなポイントです。
なぜかというと、書かないとアウトプットにならないんですが、書いてしまうと次に書くときに、見えてしまうんですね。見ながら書けばインプット。
記憶にはアウトプットが重要です。
いや、ようやくここまで来ました。本当にあなたがやる気があるなら、「空に書く」べきです。百回書くにしても、空に書くなら、思い出すこと。でも、書いてしまうと、よほど見ないように意識しないかぎり、インプットになるんですね。
親や先生だと頭の痛いところですよね。証拠が残りませんから。でも、証拠を残すことと、覚えることは本来どっちを優先すべきなのか、考えるべきです。
というわけで、上の理論を使いつつ、証拠も残る形にしたのが、次のシートの手法です。
空に書けたら、IMRシートを使う。
次のものが、私が作った「IMRシート」です。
単純なことで、同じような3列のマスが8つ分作られているシートです。で、それを同じように裏表で作っています。
生徒向けにわかりやすいように左に番号を振っていますが、別になくてもいいので、要は、横に3列、縦に8マスあればいいだけ。まあ、これも5であろうが構わないんですけどね。長いのは、お勧めしません。実験済みです。7~8が限度です。
それでは、漢字を覚えるやり方を実践しながら、シートの使い方を説明していきましょう。
というわけで、まず、仮に覚えるべき漢字をあげます。
- 花壇
- 薔薇
- 醤油
- 土壌
- 開墾
- 拍手
- 大砲
こんな感じにしてみましょう。あえて難しい漢字にしましたが、小学生のお子さんでもできるし、自信になりますから、自分でうまくいったらやってみてくださいね。難しいことでうまくいく、というのは大事なことで、そうすると、やろう!って感じになりますから。
では、やってみましょう。
1 花壇
まずは、イメージ化です。「花」は大丈夫ですね。でも一応書くと、「くさかんむり=くさ」と音記号「カ」の「化」です。草が化けて花ですから、結構グロテスク。
「壇」は難しいので、イメージ化を使います。
さっきやりましたが、「壇は土でできていて、帽子をかぶったおじさんがくるくる回ってあけましておめでとうございます」です。
ちなみに「旦」が音記号でしたね。
書けそうですか?じゃあ、空に3回ぐらい書きましょう。
いけると思ったらシートに書きます。一番左の1が、この作業の1、次の7というのはひとつ前の漢字、1が今やった漢字なんですが、今回ははじめてなので、7はないから空欄。
1の1に、漢字、よみ、の順で書きます。
これで終わり。でも、やったばかりですから、書けたのは瞬時記憶かもしれません。
2 薔薇
次の漢字は「薔薇」です。イメージ化の手法を使いましょう。
両方とも花ですから「くさかんむり」があることがわかります。
ではイメージ化。
「薔」。見ていくと、「土」がありますね。その両側に「人」。というわけで「土の中に二人が埋められている。」というところ。その下には「回る」。
したがって、「土の中に二人埋められてくるくる回っている。それできれいな花が咲く」というのはどうでしょうか。
続いて「薇」なんかみたことのある漢字ですね。そうです。「微妙」の「微」ですね。だから、これを知っているなら「微妙だけど、「トゲ」がある。」わかります?山と几(ちょっと違うけど)の間に、一本棒があるんですね。これに気付けば、これでOK。
「微妙」が書けない?中学生、高校生ぐらいでありがちなのは、「特徴」と間違うこと。間違いそうなら、合わせて覚えるのがよいです。「王様の特徴、パイ=πは微妙」で、いかが?
小学生でまだ書けない?う~ん、じゃあ、全部イメージ化して微妙と特徴覚えてもらいましょう。ぎょうにんべん=道、のぶん=ムチ、あとは山。だから、「山に続く道を
ムチをうって歩く」なんて感じでベースを作って、さっきの「王様の特徴、パイは微妙」でどうですか?えっ、まだ「パイ」がわからない?じゃあ、テーブルは微妙でどう?
で、さっきの「薔薇は微妙だけどトゲがある」に行くわけです。
書けます?じゃあ、空に書きましょう。3回ぐらい。
そしたら、さっきのプリントを裏返します。
ここで、「薔薇」を書きたくなりますが、それは書けて当たり前。なので、ここで、ひとつ前にやったものを書きます。
なんでしたっけ?そうです。花壇です。思い出してね。「土でできてて、帽子をかぶったおじさんがくるくる回ってあけましておめでとう」です。
それを2の1に書きます。2回目の、1番の漢字です。同じように、漢字、読みと書きます。見ちゃだめですよ。見ないで思い出して書く。
もし書けないなら、覚えていなかったんで、もう一回、もどって最初からやり直します。
で書きました?そしたら、今やった「薔薇」を書きます。
そうすると、2の1と2が埋まります。2回目の2番の漢字、ということですね。
3 醤油
さて、3番目は醤油です。
音記号に着目すると、「将」が将軍で、ショウですね。たとえば、「大きい」にすると、奨励。推奨です。
だから、無理やり覚えるにしても、この3つぐらいをまとめて書くといいですね。
醤油は、下が酒です。ひよみのとり、なんていう名前の部首ですが、「暦のとり」という名前の通り、「こよみでは「トリ」と読むけど、本当はトリじゃないよ」っていうことです。これはもともとお酒を入れるかめ、壺ですから「酒へん」です。
というわけで発酵するので、お酒の将。
書けます?大丈夫なら空に書きましょう。で、大丈夫ならシートを裏返し。
で、忘れないうちに「醤油」と書きたくなりますが、我慢して、一個前を思い出します。一つ前は「薔薇」ですね。なので、裏返すと、まだ1しか書いてありませんが、2の薔薇と3の醤油を書きます。
思い出したいからって見ちゃだめですよ。
4 土壌
次は「土壌」です。「㐮」が音記号ですね。土の㐮で土壌。女の㐮でお嬢さん、言葉の㐮で謙譲語。お酒の㐮で、醸造。実りの㐮で、五穀豊穣。
このぐらい書くだけでも、書きにくいジョウが、練習できます。でも、覚えにくいから、分解しておくと、「六」が見つかりますね。で下が難しい。横が二本、縦が二本とかやってると、その場はいいけどあとでわからなくなる。私がやるのは、「表」見つけて、上から「棒」でつきさす…。みたいなことをやります。「六つの表を上からつきさす」。
じゃあ、空に書きましょう。書けたら、紙を裏返す。
書きたいところですが、まずはひとつ前、まず、醤油を書いて、そして、土壌です。
5 開墾
さあ、続いて「開墾」。これは、音記号は「コン」ですから、艮ですね。
木の艮で、根っこ。心の艮で、恨み。ブロックの艮は、限度、限界。金の艮は銀。病の艮は、痕。
で、残ったのが、土はいいんですけど、もうひとつは「むじな」ですね。動物です。
「 豕」が豚ですが、「つめがあって、しっぽがない」で覚えるといいです。「つめ」は、爪ですから、「受」とかの上のやつです。
「むじな」が書けたら、「むじなと土でたがやすコン」ですね。「むじなと心のコン」は、懇親会のコン。このふたつを一緒にやっておくといいですよね。
書けます?じゃあ、空に。
大丈夫なら、裏返します。書きたいところですが、一個前の土壌を書いて、確かめてから、それから開墾です。
6 拍手
ちょっと簡単になりましたが、音記号の確認です。
白が音記号でハク。手の白ですね。白い手袋して拍手。さんずいの白で、泊まる。昔は船に泊まったんでしょうか。そこから来てるんでしょうか。船舶はそのまま船。しんにょうでグイーンとくると迫力。人の白は伯爵。木の白は柏の木。竹と水があったら、金箔貼れるんでしょうか。
こんな感じ。
じゃあ、空に書いて。で裏返します。
一個前は?開墾です。見ちゃダメですよ。
で、拍手。
7 大砲
最後です。大砲の音記号は「包」これがホウ。包装ですね。同じホウソウでも、病気になると水疱瘡。ホウの中が微妙に違うんですけど…。ちなみに「ソウ」は倉でソウですね。手で包で抱く。さんずいなら、泡で水泡。にくづきになったら、同胞ですね。
ちなみに「包む」っていう感じは、お母さんのおなかです。その中に「己」がいるんですね。
大砲の砲は石ですね。昔は石でうってたんでしょうね。
空に書きましょう。書けたら、裏返します。
一個前をまず思い出します。拍手。書けてから、大砲です。
8 7~8書いたら、折ってみると…すぐにチェック!
7つか8つ書いたら、ここで一度ストップ。
記憶は、7つが限界。ここで先に行くと、覚える限界を超えてしまいます。
というわけで、ここで折ってみます…。すると…。
ね。なんで、もう一列あったかわかったでしょう?
今まで、書きながら自分で確認テスト作ってたんです。折らないでかくしてもいいですよ。ここで、一気にもう一度復習。で、できなかった漢字があったら、それは苦手漢字として、チェックしておいて、あとでやり直す。
ちなみに裏も同じモノができています。ただし、7つ目は、8つ目をかかないと、一回しかやっていないので、7でとめると、7と6の復習。8でとめると、8と7の復習。
この1回になったものは、次回の最初に入れるようにすると、平等に復習できるようになります。
よくできてると思いません?自画自賛。
お子さんとかに言うときは、「たった3回書くだけで覚えられるよ」です。表で1回、裏で1回、確認で1回です。
本当は、空に何回か書いたり、音記号で違う漢字書いたりしてますから、10回ぐらい書いてるんで、だから完璧になるんですけどね。
それから、裏に同じ確認テストがあるんですけど、7つやって表で確認できたら、すぐ裏やってもできるに決まっているので、やっちゃだめです。美しい響き。練習をしちゃだめ。
やるなら、時間をおいて。もったいないですから。たとえば、翌日。たとえば、テスト前とかね。
表が全然だめだったら?そりゃ、裏行く前に、もう一回最初からやり直さないと。裏だけできても、それは瞬時記憶。だからだめです。
私の指導の経験だと、時間がかかってもせいぜいここまで10分。部首変えて漢字を探す…というのを辞書でやったりすると、もっともっと時間がかかりますが。辞書引くっていっても、音記号で分類されないので、超大変です。だから、形声文字カルタがおすすめ。
しつこいけど、時間短縮のためには持ってるといいですよ。
で、最初は10分かかっても慣れてくると、5分もあるとできると思います。
お父さん、お母さんに指導上、アドバイスをしておくと、これ、意識中心の割に、シートという証拠が残るので、宿題向きなんですね。
でも、「宿題」で「強制」にしすぎると、さぼります。
たとえば、今、やったほうから書く。
今、やったのを同時に表、裏と書く。
ひどいと、そもそも見て写す。
だから、結局は「意識」です。「これでやれば覚える」という経験をさせて、自分から取り組ませるようにしてください。
だいたい、確認テストしてるから、自分で、「書けた!」っていう喜びがあるはずです。
で、気がついたと思いますが、このシート、英単語とか歴史とかでも使えますよね。暗記にはおすすめですのでうまく使ってみてください。
英単語なら、訳と単語の順番を表と裏で変えると、スペルチェックと意味チェック。英作文用と読解用ですね。
また、この単語の欄を横に伸ばすと、例文用ができあがり。うちの学校では、両方作ってあります。あんまり使ってもらえないですけどね。
というわけで、小学生とか中学生は、やってみてください。原理さえわかれば、シートなんてなくして、表、裏と書いておけばいいだけですよ。