久しぶりに漢字の学習方法の話です。次回に実際の練習方法を説明しますので、今日は、漢字の学習と、そもそもの「漢字」というものについての説明です。
漢字をずいぶんとほったらかしてしまいました。自分が今、高校生を中心に教えている関係で、彼らのための復習ページや彼らのニーズに合うものを優先して完成させていく必要があったからです。
正直言って、まだまだ、大学受験用のものも継続していかなければいけませんが、一方で、小学生や中学生向けの、国語のページもしっかり作っていきたいという欲はあります。
で、まずは、ほったらかしてしまった漢字の練習ページを作りたいのですが、その前にここまでの漢字の学習方法の復習をざっとしたいと思います。
あなたが中学生や高校生なら、理解できます。ちゃんと読んで理解しましょう。もし、お子さんが小学生だとすると、ちょっと説明が難しいかもしれません。保護者の方が理解していただいて、わかるレベルで説明してもらえるとうれしいです。
- 音読みと訓読みの話
- 形声文字は「意味を表す部首」と「音をあらわす記号」でできている。
- 部首の学習の重要なポイントは、名称よりも「意味」!
- 部首で整理するより、同じ音記号で部首を変えてあげた方が漢字はできるようになる!
音読みと訓読みの話
漢字を学習する中で、混乱をきたすのが、音読みと訓読みの話です。そもそもこの違いって何なのか。なんだか、名詞っぽく読むと「音読み」で動詞とか送り仮名がつく感じになると「訓読み」っていうことは、わかるけど、これ、どういうことなんでしょうか?そして、仮名と漢字っていうけど、そもそもこれは何なのか?本当はちゃんと説明した方がいいんですよね。
そもそも、この話は、漢文の話に通じてきます。
日本人は、日本語をしゃべる。中国人は中国をしゃべる。で、日本人は字をもっていなかった。
だから、日本人は、中国の字を借りたんですね。この段階、日本にある字は漢字だけ。したがって、「かな」、つまり「ひらがな」とか「カタカナ」なんていうものは存在しません。今と同じような日本語を、漢字だけを使って書いた、ということになります。
このとき、おそらく最初の入り方は、「音」を借りるということ。つまり、「安以宇衣於」というようなイメージで、同じ音をするものを当てる、ということだったはずです。もちろん、一字が一音になるわけではないので、一字が二音になったりするケースもあるんです。
しかし、これは非常に面倒くさい。
というわけで、もっと簡略化できないか、簡単にならないかと当時の人たちは考えたわけですね。
そのひとつの方法が意味を借りること。
つまり、中国語の単語を、そのまま日本語で読んでしまえ、という発想です。「読」は音読みでは「ドク」ですね。これが中国人の発音をベースにした日本人の音。だから、これを「よむ」と読むのは、日本人だけで、中国人にはまったく伝わらない。そんな風に読むのは日本人だからです。「意味が同じ字を勝手に日本語風に読んじゃえ」ってことです。「read」を無理やり「よむ」と読むようなものですね。
で、これが漢文を学ぶ意味。初期段階は仮名も完成しているわけでないし、漢字だけの状態で、日本語風に読む。運の悪いことに、中国語と日本語は似ていなかったので、語順まで違う。結果として、中国人が書いたものを、違う順番で読む、というか、日本語を書くのに、違う順番で書く、ということまでしなくちゃならなくなった。
こういうことなんですね。
一方で、もうひとつの簡略化は、音で書いていたものを、もっと楽に書きたい、省略してシンプルにしたい、というものです。これが「仮名」ですね。漢字を「真名」と言いますが、省略した仮のもの、ということです。これができることによって、送り仮名を書くことができるようになっていく。漢字かな交じりの文章が書けるようになっていくわけです。平安期の仮名文学というのは、そういう意味で画期的で、このことによって、日本語を話すように書くことが可能になっていくわけですね。
一方、漢字だけの文章は、政治の場を中心に、公式な文章としてはずっと力をもっています。結果、漢文の文章は、日本人によっても作り出されていき、漢文の勉強がいまだに必要になっているわけです。
今日は、漢字の話です。戻ります。
訓読みというのはただの当て字です。中国語で、同じ意味の言葉、字を聞き出し、それを無理やり日本語風に読む、というのが訓読み。だから、本質的にすべて当て字です。
ただ、重要なことがあって、その訓読みは「意味」を表している。だから、その漢字には意味がある、ということなんです。音読みは中国の読みに近いものですが、もともと中国でその字には意味があった。それをぼくらは、訓読みとして理解しているわけです。
ですから、音読みしたところで、漢字の「意味」は同じ。これを今や、中国人以上にきちんと理解している可能性があるんです。
中国語は、漢文を教えていて思うんですが、「音」を重視する傾向がある。もともと字に意味があったはずなのに、部首などをはずしても、同じ音になっているので、同じ字とみなす、というやり方で簡略化してしまっているところがあります。音なんですね。
でも、日本人は、音を捨てて意味をとった。だから、字の意味が理解できる。
まずはこれが訓読みと音読みの話です。
1・2・3・4・5・6・7・8・9・10…と数を数えますが、
訓読みは、「ひとつ、ふたつ、みっつ」というように「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ、ここのつ、とお…」ですね。
ということは「いち、に、さん、し、ご…」というのが音読みです。だから「7」は「しち」です。「なな」は訓読みですから。「いち」と「しち」がわかりにくいから「なな」というんでしょうけど、音読みに訓読みをまぜるのは、ちょっとした違和感ですね。
形声文字は「意味を表す部首」と「音をあらわす記号」でできている。
日本語は、中国語の「意味」を借りました。だから、「意味」にものすごく重要なポイントがあるんです。
じゃあ、その意味はどこからきているのか?それが部首なんですね。
私の漢字指導の中心は、形声文字です。
形声文字というのは、「意味をあらわす部首」と「音をあらわす記号」でできているということです。
これを見ただけでも、日本の漢字指導の大きな問題点が見えてきます。
一つ目。「音をあらわす記号」について、ちゃんとした名称もなければ、それに基づく分類もないこと。結果、この記号について、ほとんど何も教えていないこと。
二つ目。「意味をあらわす部首」でありながら、部首の意味についてはほとんど教えていないこと。部首指導は、ほとんど「この漢字のどの部分が部首か」「その名称は何か」であり、それを覚えることが、漢字を覚える助けになっていないこと。
このふたつを改善していくことが大きなポイントです。形声文字とは何かについて、小学校で教えてテストに出したとしても、それを使って漢字指導ができないのなら、ただ余計な知識という負担をかけているだけだと思います。
部首の学習の重要なポイントは、名称よりも「意味」!
というわけで、まず、一つ目のポイントは、「部首の意味」です。
これについては、すでにまとめたので、見てくださいね。
まず、これから漢字を学習するためには、部首が意味をあらわすことがわかる必要があります。部首は意味を持つ。そのことを知っていれば、漢字の意味から部首を推測できるようになるわけです。
この当たり前のことができないのは、部首の名称が意味とは関係ないところでついていて、その名称を聞く問題が出題されているから。
こんな記事も書きました。
なぜかというと、結局、こういう問題が出るからです。
でも、本当は意味がわかったほうがいい。
というわけで、部首を勉強するのに、絶対的なおすすめはこれ。
カルタで遊ぶというよりは、絵札をながめるだけで、部首がなんとなくわかるようになります。とにかく部首の意味を覚えましょう。私の仕事としては、部首の意味を説明しましたので、上の記事を見ておいてください。
部首で整理するより、同じ音記号で部首を変えてあげた方が漢字はできるようになる!
そして、これから漢字を覚える作業に入るにあたり、とても重要なのは、部首で整理するのでなく、「音記号」で整理して覚えた方が、はるかにわかりやすいということです。音読みを中心にして、同じ部品になっている漢字を集め、部首を変えるとどういう意味になるかを検討するわけですね。
これが形声文字中心の整理の仕方です。
これを勉強するには、次のカルタ。
これは本当にすぐれものです。カルタの札に音記号を中心に、部首を変えるとどういう字になるかがまとまっていますから、これを見ているだけで、漢字の覚え方がすっと身につくと思います。
こういうことをしながら、実際に記憶術を使って、漢字の具体的な学習をしていきたいと思います。