今日は「形声文字」を使って、漢字を効果的に学習したいと思います。
漢字の学習方法は残すところ
- 部首の説明の残り(部首の意味一覧を作っています)
- 形声文字の説明=音記号で整理すること
- IMRシートを使った具体的な練習方法
というあたりになりました。
それ以降は、具体的な漢字の説明とか、中学受験レベルでの漢字の整理とか、そんな感じなんでしょうか。
というわけで、部首の説明をやっていきたいところですが、先に形成文字と音記号を説明した方が、部首の説明もやりやすいので、先にやってみたいと思います。
この話の前提はこちら。
形声文字って何?
すでに何度か説明してきましたが、
形成文字とは、
意味をあらわす部首と音をあらわす部分によってできた漢字
のことです。90%の漢字がなんとこの形成文字。だから、これをきちんと理解することは漢字のほとんどを理解することになるわけです。
そのほかでいえば、
象形文字…絵が字になるイメージですね。山とか川とかです。
指事文字…抽象的な概念、図が字になったイメージ。上とか一とかです。
会意文字…上のふたつを組み合わせて複雑な意味を作ろうとしたものです。森・林・炎などがあげられますが、一見わかりにくいのもあります。今日の形声文字がわかると、音記号にあたるものがなく、読みと一致しないもの、ととらえるとわかりやすいです。
というわけで、ここでやはり重要なのは、
部首は意味をあらわす。
音をあらわす部分がある。
というこのふたつ。だからこそ、部首の意味を覚えてもらおう、ということなのですが、一方で、音をあらわす部分=音記号とでもいうような、ここの理解も重要ですよね。
今日はこれを説明します。
音記号で、知らない漢字を無意識に読んでいる
はじめて見た漢字、習っていない漢字なのに、なんとなく読めてしまうことってないですか?
まあ、これはたいてい音読みについて起こる出来事ですね。
(訓読みで読めてしまう場合はその漢字を含む熟語が頭の中に思い浮かんで、その熟語を和語=訓読みにする、という作業で読めるわけです。これは、日本語と漢字の関係から起こることなのですが、また別の機会に。)
たとえば、
酢=す ですが、音読みはわかりますか?大人ならわかりますが、小学生ぐらいだととまどうかもしれませんね。
酢酸 なんていうときに出てきます。
これ、左側が部首で「酉」ですが、これはトリではなくて「酒」へんだという説明はしましたよね。
残った右側が「音」をあらわす記号です。
わからなければ、部首を変えてみるといいですよね。
日に変えると「昨日」で「さくじつ」 。音読みですよ。
人に変えると「作成」で「さくせい」。
手に変えて穴をあけると「搾乳」できたりしますね。
言ベンで言葉にすると、「詐欺」で「サ」。そういえば作業ですから、「サ」とも読みますね。
わかりますか?
乍が「さく」という音をもっているわけです。
だから、酢酸とか搾乳とかも昨日とか作成とかの「乍」をみつけて、「もしかして、サク?」と思っているわけです。
まあ、やっかいなことも多少はありまして、中国は広いですから、地域によって、あるいは時代によって、この発音が違うんですね。だから、日本にどのように入ってきたかによって、多少、発音がずれてしまったりするので、このへんは許してください。呉音とか漢音とかいうんです。あんまりわからなくても大丈夫ですから。
たとえば、京は「キョウ」といきたいですが、
日をつけると、風景でケイ
魚をつけると、捕鯨でゲイ
水をつけると、涼風でなんとリョウ
これがリョウだとわかると、言葉の言ベンで、諒解なんて感じですね。
まあ、こういうぐらいの読みの「ゆれ」があるにしてもだいたい同じになるわけです。
音記号で整理する=部首を変えてまとめて覚える
では、少しやってみましょう。
且は、「かつ」と読みたくなりますが、訓読み=和音=日本独自の読み、ですから、どんな音になるかは、部首をつけるとわかります。
糸をつけると、ぐるぐる巻いて、「組む」ですが、音読みは 組織 で ソ ですね。
部首を変えてみましょう。
のぎへん=禾 は みのり をあらわすので、租税とか租庸調の ソ。お米でしたものね。
よく間違うのは、しめすへん=示 は神様へんですよね。祖先 の ソ。祖先を租税と書き間違えた日には、「あなたのソセンはお米ですか?」って感じです。
こざと は ブロックへんでしたよね? 阻止のソ。ブロックしてくれましたね。
けものへん は 獣ですから、狙撃 の ソ。
米にすると、バラバラのイメージで、バラバラへんですから、粗品のソ。
こんな感じです。
姐御なんて書くと、当然「アネゴ」なんですが、音読みしたら、きっと「ソ」ですよね。
この形で整理したら、漢字が一気に書けると思いませんか?
記憶は、整理した方が覚えられるんですよね?
もう少し、補足すると、ひとつずつ覚えている限り、漢字はひとつずつ独立していて無限に覚えるわけですが、まとめてしまえば、部品を、しかも部首ですから意味がある部品を変えるだけで、一気に覚えます。しかも、意味がないように見えていた部品が実は「音」という何かのくくりをあたえてもらえるわけで、これを使わない手はないですよね?
たとえば、前回イメージ化で紹介したのは、「襄」です。
紹介しましたが、「六」つの「表」を上からくしざし、の「襄」ですが、部首を変えてみれば、
土がつけば、土壌
女がつけば、お嬢さん
言べんになると、謙譲表現で、ことばのジョウになりました。
酒をつければ、醸造してみたり…。
もちろん、「六」つの「表」を上からくしざしでいいんですけど、仮にここで部首を変えてまとめると、おんなじ「ジョウ」を何回も繰り返して、意識できるようになりませんか?小学生にとっては意味がない記号もまとめてしまうと、ちょっとした意味になるし、何度も何度も練習できる。どうですか?
さあ、出てきた漢字を見てみましょう。
「繰り返す」の「繰」は音読みなんでしょう?
部首を変えてみると、体操なんてうかびませんか?正解は「ソウ」ですね。
火にしてみると、そうです。乾燥しています。
水にして草をたしてみれば、海藻です。
どうでしょう?一番間違える部分をいろいろな感じで練習できるのってよくないですか。
間違い は 違反 で イ。
部首を変えましょう。
人にすると、偉人で偉い人。
行がまえで囲ってみると(まさに行くってイメージです。)、動きが入って、衛星。
なんでも、音がみつかります。だって、90%は形成文字なんですから。
漢字は決して、ひとつひとつ違うものではなくて、おんなじ記号、つまり
意味をもつ部首
音をもつ記号
の組み合わせでしかないと思えば、漢字は実は、書いて覚えるものではなくて、意味をイメージするものだとわかるはずです。
このシリーズは、形声文字の音の紹介として、続けることにして、とりあえず、形成文字についてわかってもらえましたか?
というわけで、この間も紹介しましたが、こちらのカルタを使えば、私が説明しなくても大丈夫。
こちらは、もちろん、見て覚えるためにも使えますが、意外とカルタ遊びも悪くないです。なぜかというと、音が大事だから。音でとる、という作業は、音記号の理解に最適です。
読み札が、「おんなはは姓名、こころで性格、うしへんで犠牲…」なんて読んで、「生」の漢字をとるんですね。だからこれはカルタ遊びが漢字の勉強になります。
あとは部首の理解。部首カルタは遊ぶより、眺める方がおすすめ。しかも読み札を、ですね。