受験も徐々に本番が近づいてきました。今日は、記述問題のパターン分析をしてみたいと思います。中学受験から大学受験まで共通の書き方のパターンを理解しましょう!
ここまで、国語の選択問題の説明はしてきました。
「わかること」と「問いに答えること」評論文の問題を解く基本
実は、まず大方針は同じなのですが、
わかる=内容の把握
問いに答える=形式を整える
という両方の問題が出題されます。というか、両方が切っても切り離せない。
ただ、出題者側も意識していることはあって、
前者だと「この部分ってちゃんとわかってるかな?自分のコトバで説明できるかな?」
という感じ。理由を説明する問題なんかが意外とこういう作りになっていることが多く、また、本文自体に言い換えている場所がない、なんていうのが、こういう問題です。
後者だと「傍線部って言い換えるとどういうこと?理由を本文中から探してきて」
という感じ。要は抜出し問題に近いと思います。
厳密にいえば、このどちらの問題かなんていうことは出題者は考えていません。ただ、なんとなく聞いているわけで(もちろん出題の意図、聞きたいことはありますよ。ここはあくまでも形の話です。)、結果として、「自分のコトバ型」か「抜出し型」かが決まってしまうわけです。
難関大学にいけばいくほど、たとえば東大ですね、前者。逆に高校入試を中心にレベルが下がってくれば、後者になります。
もっというと、後者だと採点基準が明確になりますから、採点しやすい。高校入試がさいたるもので、あるいは私立大学にまぎれる記述問題もそうですが、多くの枚数を明確な採点基準で行う入試は、後者になるんですね。
中学入試は、小学生のレベルでいえば、後者ですが、高校入試に比べると、採点枚数が少ないし、考える問題が好まれる。したがって、最近は前者が増えていると思います。
基本は出題に答える。
これから、パターンの説明をしていきますが、その前に重要なことは、とにかく、
出題に答える
ということです。これからの説明は、出題のパターンを分析して、「だったらこう答えるよね」というのを書くだけのもの。ある程度のパターンにまとめられるからです。
しかし、実際には、様々な条件がついたり、指定したり、いろんなことをして、答えをしぼってくるのが試験。
だから、その大前提として、まずは、
「出題に答える。何をしろといっているのか、しっかり読み取る」
ということが基本だということは忘れないでください。
記述問題の答えのパターン5+1
それでは、記述問題のパターンを説明しましょう。基本パターンが5つ。そして、それに組み合わせるのが一つです。
列挙 XはAであり、Bであり、Cであり、…ということ(だから)
まずは列挙パターンです。
問題の特徴としては「ひとつの語の説明を長くする」というような感じでしょうか。
「Xとは何か説明せよ」「Xした理由を説明せよ」というような比較的シンプルな問題が多いと思います。
この場合の型は、
XはAであり、Bであり、Cであり、…ということ(だから)
ですね。
本文の要素の数だけ、列挙するわけです。基本方針としては、「Xは…」とか「Xとは…」とか「…がXである」という場所をしっかり探して、違う要素をきちんと入れることです。
採点基準もたいてい、要素ごとに何点という風に決まっていますから、ひとつ見つけるのでなく、全部書くことが重要。
もっというと、要約問題ですね。
対比・違い XがAであるのに対しYはBであること(だから)
この問題が、2か所にひかれたり、「XとY」みたいになると、対比・違い型になります。
この場合の型は、
XがAである
のに対し、(であるが)
YはBであること(だから)
です。
当然、AとBも対比関係、反対のコトバになるはずです。文章はこういう風に対比的に進むことが多いですから、その違いを説明させよう、というのは多いパターン。
もちろん、Aだけではなく、二つ以上の対比関係を説明しなければいけないこともあるでしょう。
逆 XはBでなく、Aであるということ(だから)
この問題は、タイプとしては「列挙」型のように「Xの説明」だけを求めているはずなのに、なぜか要素が字数に比べて足りないパターンです。
こういう時は
XはBでなく、Aであるということ(だから)
という逆パターンの可能性が高い。
文章自体が対比型で進んでいる。問題は、X(あるいはY)の説明だけを求めている。ただし、字数が余る。だから、「~ではなく」を入れて補う、論旨を追いかける、というパターンです。
中学生ぐらいまでだと、字数が余ると「であるというようなこと」という無意味な字数稼ぎをする生徒がいますが、まあ、だめですね。
列挙型なら、B要素、C要素がないから、字数が余るわけです。もし、要素がもれていないなら、この逆パターンを求めている可能性が高いと思います。
変化 YがBであるということからX(Y)がAであるようになったこと(から)
問題が「YからXになったことはどういうことか」とか「Xへの変化を説明せよ」などというように変化を聞いている問題。これはそのまま、
YがBである
ということから
X(Y)がAである
ようになったこと(から)
というこですね。主語が変わるかどうかは問題によると思います。
近代では~だったものが、現代では~になったこと
というように主語が変わることもあれば、
教育は~するものから~するものへ変化したこと
というようなケースもありますね。
ある意味では、前者が対比型、後者が逆型であるので、わざわざ項目立てしなくてもいいのですが、一応書いておきます。
逆説 Aしようとして逆にBしてしまうこと(から)
大学受験では、必須の逆接型。中学入試でもこのメカニズムを説明する問題は多いと思います。
逆説とは矛盾に近いコトバですが、正当性があり、仕方がない感じ。
たとえば、
生徒がうるさいときに、注意する先生はもっとうるさい声を出さなければいけない
ですよね?
生徒が自立するためには、先生が自立を促さなければいけない
ですよね?
これが逆説。思っていたことと逆のことをいつの間にかやっている。目指していることと逆のことをやらざるをえない。そんな感じです。
ですから、「円環」とか、そういう語の説明でもこのパターンですね。早稲田は逆説大好きです。
このパターンは、
Aしようとして
逆に
Bしてしまうこと(から)
です。
難しいように見えて、これだけ。AとBは絶対に逆(反対)。ですから、どちらかがわかれば十分。
さっきの問題の場合、
静かにさせようとして逆に自分が一番うるさくなること
自立させるために逆に管理すること
というような答えのパターンになります。
平等にしようとして逆に差別を生むこと
幸福になろうとして逆に不幸になること
などなど、意外と簡単ですよね。なので、このパターンは知っておきましょう。
プラス1 理由「~ので」
これに何でも必要となるのは理由の「~なので」です。
列挙 Xは~のでAであり、Bであること。
対比 Xは~のでAであり、Yは~のでBであること。
逆 Xは~ので、Bでなく、Aであること。
変化 Xは~ので、BからAになったこと。
逆説 XはAしようとして、~のために逆にBになったこと。
というようにほぼ万能に付け足すことができます。字数が足らない場合は、こういうあたりの説明不足の可能性もありますね。
記述問題は「箱」を作る。
ここまで説明してきたパターンを私は授業では「箱」と呼んでいます。
まず、こうした箱をイメージする。箱があれば、あとは中身に何を入れるかだけです。それが、自分のコトバなのか、本文から探すのかはともかく、この答えのイメージを箱でおいてしまえば、あとは入れるだけ。
だから、最初のうちは、箱を作る練習をするといいですよ。
難しくないです。
5つのパターンのどれかを選んで、まずXとかYとかの主語をきちんと探す。
そしたら、あとは、AとかBとかの部分を四角い箱で書く。
最後にその四角の箱の中に探した言葉を入れればいいわけですね。
入試が近づいてきます。苦手こどもたちにぜひ、この程度のことなんだって教えてください。
仮に100字とかの要約でも、この中のどれかですから。