国語の真似び(まねび) 受験と授業の国語の学習方法 

中学受験から大学受験までを対象として国語の学習方法を説明します。現代文、古文、漢文、そして小論文や作文、漢字まで楽しく学習しましょう!

2019年度入試 センター試験国語 分析速報!

2019年のセンター試験が終わりました。終われば、いったい問題としてどうだったのかを検討することになります。というわけで、分析速報です。

センター試験が終わってしまえば、気にならないかもしれませんが、しっかり復習することは大事ですよね。

 教員の側でいうと、授業で問題解説をやらないかぎり、結局ほったらかしにしたりするので、こういうのは出た日にとりあえずやってみるのが一番です。

というわけで、平均点さえわからない段階ですが、分析してみたいと思います。

 

全体的な印象「特別なことは何もなく、基本的な出題だけど、文法とか単語とかまじめにやった人がうまくいく印象」

問題は、さほど変わったことはなく、むしろ基本的な出題だと感じました。おそらく予備校は「昨年並み」もしくは「やや易化」ぐらいの予想をしてくると思うんですが、どうでしょうか?

私は意外と差がついていて、落としている受験生が多いような気がします。

学校も塾も、国語を教えている先生、特に古典の先生は、基本的な文法事項と単語、漢字の読みなどをおさえていれば、思いの外簡単に答えが選べてしまうので、「簡単」という評価をしていると思うんですが、裏を返せば、いつもフィーリングで内容をおさえて、内容を理解して選択肢を選ぶ人からすれば、最後にしぼる根拠がないような問題作りになっています。

で、こうなると単語とか文法とか、予備校的に徹底的にやっている人が有利になるように感じますが、ここに何問か、テーマ的な、つまりただ答えの根拠を本文を探すだけではなく、物語とか文章の言いたいことをつかんで、まとめあげた言葉が正解になる解釈問題が出ています。だから、単純に単語を徹底した受験生も、やっぱり何問か落とすでしょう。

いつも書きますが、「わかる」ことと「問に答える」ことの両方が必要なんです。

これは共通テストのモデル問題、試行調査でもはっきりしていた傾向。

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そういう意味では、同じように見えてだいぶ傾向が変わってきたようにも感じます。

それは現代文も一緒。

特に評論の選択肢は、本文の言葉というよりは、内容を理解した形のものになっているし、小説は小説で、テーマを意識しないと落としやすい問題が数問設定されているように感じます。逆に両方とも意識してやっていると、拍子抜けするぐらいに簡単だと思うんですが…

平均点が楽しみですが、思ったよりみんな失敗しているかな、と。

もうちょっとわかりやすく言うと、東大受験を意識して、しっかりわかることを考えてきて自分の言葉で書く練習をしてきた生徒にとってはとても簡単。逆に私立の単語、文法を徹底してきた生徒は、簡単なんだけど、やっぱり各ブロック何問かずつ落とす。で、センターをなめくさって、フィーリングで解いて、単語とか文法とかがいい加減な生徒は決定的にミスをする。という作りになっていて、意外としっかりと差がついているような問題になっているというのが私の予想。

平均点は、意外とやや難、ぐらいで落ち着く気がします。

※1月21日センター翌日の段階では河合塾が127点と昨年よりはるかに高い予想です。みんな落とさなかったということで、私の見立てが間違っていたかもしれませんね

 

評論「読みやすく解きやすい。でも、『わかる』ことを意識していないと、意外とひっかかるんじゃないの?」

評論は、「翻訳」でした。しかも、内容的に読めてわからないと、選択肢を選ぶときにだいぶ迷ったんじゃないでしょうか。

つまり、選択肢と本文の照合をしようとしていると、エッセイ的であることも災いしてまったく見つからない、というようなことになって、2~3の選択肢からエイヤーと選ぶしかなくなったんじゃないでしょうか。

その意味では非常に厳しく、内容をわかる力が問われた設問だと思います。

特にやっかいなのは、選択肢が言っていることをわかろうとしたかどうか。

これを本文にあるかどうかでクリアしようとすると、すごく迷ったはずです。逆にいうと、翻訳の問題点がわかっていた生徒にとっては、極端ないい方をすると、本文がなくて、選択肢を読むだけでも、「たぶんこれだよね」ということがわかる問題になっています。

というわけで、予備校が思っている以上に、受験勉強をスキルと思って取り組んできた生徒には厳しい出題だと思います。予備校も気づいた方がいいです。スキルでは解けない方向に、共通テストも進んでいる。文章を読んでわかる方向に行っている。はっきりしてきていることですね。

本を閉じて要約、と私は言いますが、そういう問題意識をもって取り組んだ受験生は簡単ですが、本文を探す、という意識の受験生に厳しいのが、これからの傾向です。

というわけで、たまたまですが、 

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というのをやっていましたが、読んでくれた受験生には貢献できたと思います。

 

小説「テーマが意識しないと見過ごされる。テーマを見過ごすと、ひっかかる問題がある」

この小説の問題は、厳しいと思ったのは、問2、問3入れて、問5のあたりです。

問2は妹の関係、問3は友人と自分、問5は全体的な解釈になるんですね。

問4は、これは妻の病気のことを言っていて、これを読み落とした人はおそらくいないでしょう。つまり、この文章をだらだらっと読んでいると、問4の妻の病気の話のような気がしてしまうんですね。これが問題。

ここに引きずられると、問3と問5が一気に、妻の病気の選択に動いていきます。ところが、わかると思うんですが、問題は問2の妹の問題。

確かに、妻の病気は大きな問題ではあるんですが、そもそもこの話は、月見草から始まって月見草で終わっているんですね。

この月見草が、妻の病気が治る願掛けであるとか、妻との思い出であるとか、そういう話になるなら、それは問4メインで、妻の病気の話でおさえてもいいんですが、そうではない。これはあくまでも、「私」の気持ちの問題で、ふさぎこむ私の気持ち、それをなぐさめていた月見草が抜かれる、それを取りに行く、という自分の問題。

だからこそ、妹の問題も出てくるわけです。

ポイントは実は問2。これがあるからこそ、妹や妻や、そういうものを含めた自分の心、ということが読めていくわけですね。

というわけで、当たる人は当たりますが、どっかで思い込みで妻の話とした受験生とか、そういうことも意識しないで設問ごとに向き合っちゃうと意外と間違う形になっています。

なので、この作品は、特にテーマの取り方ということを意識していないと意外とやらかしてるんじゃないでしょうか。

一方で、問2、問3、問5ともに、傍線部の表現にこだわって、しっかり「形」を見ていこうとする受験生は、答えがしっかり選べている可能性もあります。それぞれ「気が引けたので」、「友人=喜ばしい図」、「→花の天国」などに着目すると、正解に近づいていったはず。これを遠ざけるのが、なんとなくの妻の病気、というのは良くできていると思います。

小説は、小説として読む。センターで、私が強調したいことです。

 

古文「基本的な単語の訳を覚えていればとれる問題が多い。単語と文法をさぼった人は最悪。一方で全体的な理解と本文対象も求められている」

問1の「思ひ奉る」「あさまし」「いかにして~ばや」「御おぼえのほど」、問3「いたづら」「うらめし」、問5の根拠となる「必ず御身いたづらになりぬべし」など、単語、文法的知識が直接的に生きる問題も珍しいのではないでしょうか。

特に問1のア、「あさまし」が驚きあきれる、だなんて、ありえないぐらい。また、「奉る」という謙譲語の訳が、敬語なしひとつ、尊敬語2つ、謙譲語2つ、ですから、敬語がわかるだけでもはずせる簡単なもの。問5の「御身」も敬語がある以上、自分ではなく姫君であることは簡単。

とにかく、文法、単語が生きる試験でした。

一方、問5、問6と、2問も全体的解釈のように見える問題を出していますし、そもそも、問5を読んで、狐が娘に化ける、ということを早くつかんで、つまり、その前の問4の娘が狐であるとわかって読んだかどうかは差がついたポイントでしょう。

だから、全体的な解釈力も必要です。

なんですけど、問5の答えの根拠は、きっちりと本文の中で見つけられちゃう、というか、見つけないとだめなんですよね。

だから、フィーリング型の受験生は、完全排除。

実力差が出た問題です。だから、もし、あなたがこの古文をぽろぽろ落としたなら、私大や二次に向けて、勉強をし直してください。

 

漢文「漢字の基本的な読みを知っているかどうかが鍵。それさえやっていれば目標点はとれる」

これもセンターっぽい出題でした。

句法、句法と言われますが、漢字ですね。漢文は漢字で決まる。それから構文で決まると思います。

問1、対と乃です。基本です。「乃ち」を「やっと」とするのは、多少のジャンプかもしれませんが、「そこで」からのジャンプですし、他がひどすぎるからいけると思います。

問4は構文、問5は「卒」でだいぶはじけます。問2は傍線部の説明ですから、これもそのまま、という感じでしょう。

問3はそのあとの例をまとめていくような形ですね。つまり自分の言葉。問6も同じような作りです。

問7は、前半が全部同じ訳になっているので、注ではなく、それを与えておいて、そこから、この文章全体と絡めて答える形。これは、本文に根拠を探しにいくテクニックで解いていく人にはきつかったのではないでしょうか。

漢文は、句法だけでなく、構文と漢字。で、例から言いたいことをつかんだり、全体として言いたいこと=テーマをつかんで、その部分と合わせていく形。

やっぱり、現代文、古文と共通する展開ですね。

 

というわけで、全体として、基本的な知識とともに、テーマ的な解釈という両極端な、でもとても大事なふたつのことを問うていく形が、共通テストでもしっかり受け継がれていくんだろうな、と感じる出題でした。