国語の真似び(まねび) 受験と授業の国語の学習方法 

中学受験から大学受験までを対象として国語の学習方法を説明します。現代文、古文、漢文、そして小論文や作文、漢字まで楽しく学習しましょう!

敬語で文章読解!敬語の訳出を練習しよう!敬語の訳の作り方 敬語3 古典文法

敬語のシリーズは、3回目です。ここまで、敬語の仕組みを説明してきました。今日は、実際に敬語をどう訳すか、ということについて考えてみます。

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ここまでの復習をよろしくお願いします。

 

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敬語の訳出パターンを覚える!

すでに、ここまでやってきたことですが、まずは敬語訳を覚えることが重要です。これが理解できていないとどうにもなりません。まず、これをしっかりと理解しましょう。

尊敬語「~なさる」「お~になる」「~していらっしゃる」「~していただく」「~ください(命令形)」

尊敬語:~給ふ。~おはす、など。

尊敬語は、主語が偉いとき、でしたね。これらの語を動詞につければいいわけです。

たとえば、「聞く」であれば、

聞きなさる

お聞きになる

聞いていらっしゃる

という訳が考えられます。この中のどれを使ってもいいわけですから、「どれかひとつ」とやりたくなりますが、実際に、入試では、センター試験をはじめ、私立など選択肢から選ぶわけですから、この3つが尊敬語訳であるとしっていないと、選べないですね。

聞いていただく

というのも尊敬語訳の一首。ただし、これは意訳している形ですね。

私の話を偉い人に聞いていただく

という形になっています。聞いているのが、「偉い人」ですから、尊敬語訳系統なんですが、主語を動かして意訳するときに使う訳の形になります。

また、命令形であれば「~してください」がメジャー。もちろん「~なさい」というのも×ではありませんね。

謙譲語「~し申し上げる」「お~する」「~させていただく」

謙譲語:~申す、~奉る、~聞こゆ、~参らす、など

謙譲語は客語、つまり、相手、もっと書くと「~に」「~を」「~へ」にあたるところが偉い人の時ですね。こういうときに謙譲語が使われます。

たとえば、 「見る」だとするならば、

見申し上げる。

見させていただく。

「お~する」は使いにくいですね。

じゃあ、「聞く」だったら、

お聞きする

聞かせていただく

という感じになります。というわけで、謙譲語は面倒ですが、何パターンか覚えておかないと、訳出するときに非常に苦労することになります。

大丈夫ですか?

全部「偉い人のことを」とか「偉い人の話を」とかのイメージですよ。

さきほど尊敬語には「お~になる」という訳出パターンがありました。

謙譲語は「お~する」です。

たとえば、

「私からお話しします」「お話いたします」とやると、相手を敬っている感じになりますよね?

ところが、

「お話になっています」とやると、話している人を敬っている感じになりますよね。

これも間違えないようにしましょう。

丁寧語「~です」「~ます」「~ございます」

丁寧語は、「です」 「ます」「ございます」なのでこれをつければOK。これは簡単です。なんとなく、丁寧な雰囲気にすれば終わりです。

 

敬語の訳出は①「敬語をとる」②「訳を付け直す」が基本!

それでは、以上のことを使って実際に訳してみましょう。

たとえば、次のような例文を訳すわけです。

  1. 聞き給ふ。
  2. 聞き奉る。
  3. 聞き侍り。
  4. 聞き奉り給ふ。
  5. 聞き給ひ侍り。
  6. 聞き奉り給ひ侍り。

こんなのをきちんと訳し分ける、あるいは、訳し分けている選択肢を選ぶわけですね。

これの第一作業は、「敬語をとる」ことです。はっきりといっておきますが、敬語に意味はありません。ただ単純に、敬っているだけの話です。それは身分か、気分か、あるいは両方か、わかりませんが、意味はかわりません

助動詞はそうはいきません。意味が変わります。「咲く」「咲かず」「咲きき」「咲かむ」は全部意味が違います。無視するわけにはいきません。

ところが敬語は意味が同じです。だから、「敬語をとる」。私はよく、(   )に入れましょう、と教えますが、意味はないんですね。

さっきのものです。

  1. 聞き(S給ふ)。
  2. 聞き(K奉る)。
  3. 聞き(T侍り)。
  4. 聞き(K奉り)(S給ふ)。
  5. 聞き(S給ひ)(T侍り)。
  6. 聞き(K奉り)(S給ひ)(T侍り)。

となります。つまり、もし、これが訳出の問題になっていないなら、解釈だけなら、1~6まで全部「聞く」だけです。

えっ、それでいいの?まったく問題ありません。だから、あなた方は敬語を使わないんでしょう?先生が来るのも、先生がいらっしゃるのも同じ。だから、使わない。

敬語に意味なんかないんだから、とにかく(  )に入れてないものと思えば、混乱がなくなります。

さて、でも、訳せ、といわれたら、どうするか?

それが、「付け直す」ということです。意味は全部「聞く」。あとは、さっきの訳を順番に付け直せばいいんですね。

尊敬語:~なさる

謙譲語:~し申し上げる

丁寧語:~です、~ます、~ございます。

では、順番にやっていきましょう。

  1. 聞き(S給ふ)。→聞き(なさる)
  2. 聞き(K奉る)。→聞き(申し上げる)
  3. 聞き(T侍り)。→聞き(ます)
  4. 聞き(K奉り)(S給ふ)。→聞き(申し上げ)(なさる)
  5. 聞き(S給ひ)(T侍り)。→聞き(なさり)(ます)
  6. 聞き(K奉り)(S給ひ)(T侍り)。→聞き(申し上げ)(なさり)(ます)

という感じ。覚えてさえいれば簡単でしょ?

じゃあ、助動詞が入っているパターンでやってみましょう。

聞き給ふらむ。

聞き(S尊敬)「らむ」

ですね。まず、敬語をないものとして考えますから、

聞い「ているだろう」

ですね。現在推量ですから。

だめな人はこちらで確認を。

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 というわけで、

「聞いているだろう」に尊敬語訳をつければいいわけです。

たとえば、

聞きなさっているだろう

とか

聞いていらっしゃるだろう

とか

お聞きになっているだろう

とかです。

これだけ。

敬語訳は、

1 敬語をとってないものだと思う。

2 敬語訳を覚えて付け直す。

というたったこれだけの作業です。特に1を忘れずにね。「侍り・候ふ」なんて、まったく意味ないのについてると急に訳しにくくなりますから、とにかくないものと思いましょう。

 

入試のポイント1 複合動詞の敬語訳~とる→付け直す

ちょっとマニアックになりますが、複合動詞の話に入ります。ここまで、基本的に「補助動詞」といって、あとにつけるタイプの敬語を説明してきました。面倒くさいものに、動詞そのものが敬語として入れ替わるものもありますよね?

見る→S御覧になる→K拝見する

来る→Sいらっしゃる→K参る

みたいな感じの奴です。これは敬語を覚えるしかないんですが、これが複合動詞になると、一部だけが入れ替わったりするんですね。

たとえば、次のものを見てみましょう。

仰せられかく

さあ、なんでしょう?どうやって訳せばいいでしょうか?

これもさっきと同じで「1とる」「2付け直す」でやってみてください。

「仰せられ」「かく」ですね。

敬語になっているのは「仰せられ」です。これを敬語をまずとってしまえば、当然「言う」です。

「言い」「かく」

うーん、まだいまいち。古文ですから、見覚えがないとすれば二段活用の可能性が高い。つまり、「る」をつける必要がありますね。

だめな人はこちらで復習。一番最初ですよ。

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「言い」「かく」の「~かく」がわからないので「る」をつけて「~かくる」にしてみます。現代語では「~かきる」か「~かける」です。お、見つけました。「~かける」 

でしょう。

というわけで、この段階で訳は、

言いかける

もしくは意訳して

話しかける

でどうでしょうか。

これで1の「とる」が終了。あとは、付け直すだけ。

というわけで、尊敬語訳の「~なさる」をつけて、

話しかけなさった

となるわけですね。

 

入試のポイント2 敬語「本動詞」は単語だと思って覚える!

となると、次の作業として、本動詞を覚える必要があります。これはまた、次のときにまとめます。なぜなら、これは単語だから、ですね。覚えるコツやポイントはありますが、結局は、覚えるだけですから、ここでの説明を省きます。次にやりますね。

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ここまで理解したら、最後は単語だ、覚えるだけ、ということです。

入試のポイント3 受身の敬語訳「見え給ふ」と「御覧ぜらる」

さて、最後のポイントは受身についてです。この話の前提として、いくつか復習しておきましょう。

二重尊敬は「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」=「れ給ふ」「られ給ふ」は受身の可能性が高い

まず、このことを覚えておいてください。

二重尊敬は、「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」だけです。

したがって「れ給ふ」「られ給ふ」は受身の可能性が高くなります。ほぼほぼそう疑って間違いありません。

ちなみに、ですが、「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」となったら、必ず二重尊敬ではありません。使役+尊敬の可能性もあります。そして、単独の「す」「さす」が尊敬になることもありません。

ただし、大学の先生が「のたまはす」の「す」に線を引いて、尊敬と答えさせる問題は出る可能性があります。私たちが教えている高校の文法では、この正解は「一語」で「のたまはす」という語の一部、というのが正解なんですが、こう聞かれれば、尊敬と答えざるをえません。

詳しくは、こちらで。

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「~ゆ」で終わる動詞は受身動詞。受身の他、自発的な訳の可能性もある。

という話もふまえて、次に「~ゆ」というのが受身動詞だという話です。これは、さきほどの助動詞8でも触れていますので、見てください。

「見ゆ」であれば、「見える」の他「見られる」「自然と見る」「会う」などの訳が生じてくる、ということです。

 

「見え給ふ」と「御覧ぜらる」

以上を踏まえて、敬語を考えてみます。

「見え給ふ」は、「見られ」「なさる」と訳します。

「~なさる」は主語に対する敬語ですから、

「偉い人が」「見られ」「なさる」ということですね。

偉くない人が、偉い人を見ている。それを偉い人から語っている、ということです。

次に、「御覧ぜらる」です。

これは、最後に尊敬語がついていません。したがって主語は偉くない人です。一方、「見る」ではなく、「御覧ず」という尊敬語を使っています。これは、見ている人が偉い、ということを示します。

つまり、動作だけで見れば、「偉い人が偉くない人をみている」わけです。これを偉くない人から書いたのがこの文章。

「偉くない人が」「偉い人に」「見られている」

ということ。これなら意味がわかっていいのですが、「見る」ではなくて「御覧になる」という敬語訳をいれようとすると、問題が…

御覧になられている。

なんか、変ですよね?敬語が重なっていて、偉い人がみているみたい。

これでは通じません。というわけで、この場合、

御覧になっていただく

というような訳を使うわけですね。

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というわけで、敬語訳の話でした。次回の敬語は、本動詞でポイントとなるところをおさえたいと思います。

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