古典文法助動詞説明は、今日で「意味」の説明が最後になります。
今日は時制の中でも未来形を、一気に整理して理解します。
古典文法の助動詞説明に入っております。
ここまで
- わからないときに品詞分解をすること。
- 品詞分解をするときに使える形で助動詞を整理すること。
- 記憶のためにも、助動詞ごとに整理せず、分類で覚えること。
という方針でやってまいりました。
というわけで、動詞の説明、形容詞の説明、そして、接続を覚えて、今、意味で整理しているわけです。
ここまでの流れ、助動詞だけどうぞ。
「意味」の分類は、
- 当たり前=打消し、断定
- 現代語=受け身、使役
- 時制=過去・未来、進行(存続)・完了
というところでした。
今日は未来形の説明です。
未来形?の意味
そもそも「む・べし」を「未来形」なんて呼んでおりますが、これをまず説明しなければいけません。
未来形、つまり「Will」と考え見るといいでしょう。
たとえば、英語で考えたときに、willの訳は本当に「だろう」でしょうか?
It will rain.
だったら、確かに「雨は降るだろう。」
でも、
I will write a letter.
のような場合、「だろう」とするのは違和感ありますよね?
ぼくは学校へ行くだろう、そして、勉強するだろう、そのあと家に帰るだろう…なんて続けられると、「どうした?なんか悩みでもあるのか?」って感じです。
こういう時は、「つもり」「~ようと思う」なんて感じで訳すといいですよね。
古文でも全く同じです。
主語が一人称=私、なら、「つもり」
主語が三人称なら、「だろう」
前者が意志。後者が推量。
前回も書きましたが、この理解の順番は、「訳が決まって職能がある」です。
だから、
× 主語が一人称→意志→つもり
ではありません。
たとえば、
「あと50年もしたら、私はもはやこの世を生きていない( )」
に入るのは、
- つもりだ
- だろう
どちらですか?
当然、2の「だろう」ですね。だとすれば、この場合は、推量、ですね。
とはいえ、まずは、この2つを覚えておきましょう。
つづいて、日本語ならではの用法があります。
それは
「体言・名詞に続くとき」「連体形のとき」
です。
なぜ、英語にはないかというと、
時・条件をあらわす副詞節では、willは使わない
からなんです。端的に言うと、ifとwhenの時には、willを使わず現在形であるということ。
つまり、
When it rains, とか、if it rainsとかは「雨が降るとき」「雨が降るなら」と無意識で訳してしまうわけですが、
古文では
「雨降らむ時」なんて表現が出てきてしまうわけです。そうすると、
「雨が降るだろう時」なんてことになって、なんだか、きれいな日本語じゃないよね、という感じになります。
というわけで、このとき、きれいな日本語にすると、
雨が降る「ような」時
となるわけです。まだ降ってないですよね?
でも、これは「つもり=意志」とも「だろう=推量」とも違った訳になります。したがって、「ような=婉曲」ということになるわけです。これが3番目で、結構重要。
さて、ここまでやれればほとんどOKですが、
- 一人称
- 三人称
- 連体形
と説明すると、ひとつ気になりますよね?
そうです。あとひとつ「二人称=あなた」が残っていることです。
これは現代語で考えてみましょう。
このブログを見たのだから、あなたはこれから勉強する「でしょう」
と私から言われてみてください。
さあ、私は、あなたが勉強するかしないか推測しているのでしょうか。
ちょっと強く言ってみましょうか。
あなたはこれから勉強するでしょ!
どうですか?
わかってきましたよね。
あなたは勉強するでしょう、は、
たとえば、
勉強する「とよい」
勉強する「はずだ」
勉強「しなければならない」
勉強「しなさい」
などと聞こえていませんでしたか?
とよい=適当
はずだ=当然
なければならない=義務
しなさい=命令
ですね。
「先生明日の試合どうでしょうか」
「君は勝つだろう!」
とくれば「~できる=可能」ですね。
このように二人称は聞こえ方次第で、訳が変わる感じです。だから、文法題で出すなら、選択問題が多いはず。多くの場合、絶対にこれ、と決めにくいからです。選択肢なら答えをひとつだけ混ぜられますよね。
また、怖いのは、参考書によって、このあたりの職能は紹介されている数に差があること。唯一絶対で決まっているわけではないんですね。だから、あまり入り込みすぎずに、「ああ、こんな風に訳す場合もあるよね。」という感じで、例文と訳を見ておくことがいいと思います。
というわけで、まとめ。
- 一人称が主語のとき=つもり・よう=意志
- 三人称が主語のとき=だろう=推量
- 連体形のとき=ような=婉曲 ※連体形になるのは、多くの場合、下が体言・名詞になるか、「は、が、を、に」などの助詞がくるときですね。
- 二人称のとき=さまざまな訳がある
という感じで第一段階を整理して、そのあと、細かい用例を頭にインプットするといいと思います。
未来の輪
というわけで、ここまで「む・べし」が未来形であること、そして、その未来形の場合に応じた訳し分けについて、説明してきました。
これから、残りの助動詞=残りの未来形の助動詞について、整理したいと思います。
基本的には「will」であるということ。
つまり、先ほどの3つ、ないし4つ以上の訳し分けについては、同じだと考えてもらってかまいません。それでは説明しましょう。
ロボットのような形をイメージ
まずは、覚えやすいように、図のような形をイメージしてください。
上の3つが頭。両手を左右に広げ、2本の太い脚があるようなそんな生物・ロボットです。ランドセルを背負わせるイメージも必要です。
これから、たどるときには、この映像がうかぶように、つまり、実際に書けなくても、
横、足2×2、反対の横、頭に3つ、ランドセル2つ
というようにイメージ化して再現することが大事です。
それでは説明します。
べし
「む」とほぼ同じですが、「む」よりやや強い。
職能についてはほぼ同じと考えてよいと思います。厳密にいえば違いますが、初期段階は気にしない方がいいですよ。
らむ・けむ
ここは「現在」と「過去」の対比です。
まず、このセットを覚えましょう。
「らむ」は「り」つまり存続「ている」がついたイメージ。
「けむ」は「けり」つまり過去「た」がついたイメージ。
というわけで、
「らむ」は「現在なんとか」
「けむ」は「過去なんとか」
という感じ。
「なんとか」は最低3種類、「つもり・意志」「だろう・推量」「ような・婉曲」を覚えておくこと。「らむ」なら「ている・つもり」「ている・だろう」「ている・ような」の3種類ということです。
実際には、違う用法もありますが、1周目はこんなもんでいいと思います。また、大事な1周目が終わったら、細部についてはきちんと説明しますね。まだやってないことは実はたくさん。でも、この「細部」がMARCHレベルで問われるので、逆にいうとこの基本がわからないようではかなり厳しいですよ。
めり・なり
めり=見あり=語呂なら目でもいいですね。
なり=音あり=語呂なら鳴りでもいいですね。
要は目で見た推量と音で聞いた推量です。
目で見るというのは、「私が見たところ〇〇だろう」ということ。根拠もとぼしく、決めつけに近い。だから、主観性の強い推量。職能は推定なんていったりします。
読解レベルでいうと、使われる確率が高いのは、日記、ですね。物語なら、地の文ではないです。だって作者が主観的に推量する必要がないですから。たいてい会話文中にあります。
なり、は音による推量。「ザー」「雨が降っているようだね」「噂で聞いたんだけど〇〇らしいよ」なんてことです。逆に言えば、「見ていない」。
伝聞推量とか推定とかですね。
めり・なり、とも「ようだ」が一番通用しますが、「なり」は「そうだ」も使えるときがあります。「らしい」も悪くないですね。
まし
これは、
~せば~まし
~ましかば~まし
で使われることがほとんど。この用法は英語の仮定法に似ています。
訳は「だろう」なんですが、前半に「ありえないこと」が来ると、つまり「せば」「ましかば」がくると、受けるところは「まし」で「む」とか「べし」はだめなんですね。
ありえないことというのは、
もし、ぼくが女だったら
もし、僕が鳥だったら
なんていうやつ。
世の中に絶えて桜のなかりせば、春の心はのどけからまし
なんていう歌は、
前半が、「もし桜がなかったら」で「ありえないこと」ですよね?
そうすると、最後は
のどけからむ
とか
のどけかるべし
とかではなく
のどけからまし
と「まし」を必ず使うんです。訳は「だろう」なんですけどね。
職能は、反実仮想です。事実に反することを仮に想定する、ということですかね。
違う用法もありますが、これもまた後で。やっぱりMARCHレベルはこの違う用法ぐらいが結構答えになるんです。
まほし・らし・たし
現代語グループと私は呼びます。
まほし=ほしい
らし=らしい
たし=たい
という感じ。
書かまほし=書いてほしい、ですが、書きたいぐらいの感じ。
咲くらし=咲くらしい
歌で使われますね。
咲きたし=咲きたい、という感じですが逆に、咲いてほしい、ぐらいの感じ。
つまり、全部、希望・願望というところ。
じ・まじ
最後です。これはwill not。
「ない〇〇」。〇〇は未来の3つですから、
- 一人称=ないつもり、まい 打消意志
- 三人称=ないだろう 打消推量
- 連体形=ないような 打消婉曲
- 二人称=いろんなパターンですね。
という感じですよ。
じ、と、まじ、では、まじの方が強いです。
許さじ
と
許すまじ
では、許すまじ、の方が怒りが強いです。
ちなみにですが、
「む」「じ」は未然形接続
「べし」「まじ」は終止形接続
で呼応があります。
これで、本当に助動詞の意味がおおよそ終わり。
というわけで、助動詞の「接続」「意味」「活用」のうち、2/3が終わりました。そして、品詞分解の話を思い出しましょう。
そうなんです。品詞分解に活用は使わない。
だから、これで品詞分解ができるはずなんです。
というわけで、その話はまた、あとで練習しましょう。でも、とりあえず、ここまでの話を復習してくださいね。
では。