古典文法のシリーズは助動詞、敬語などの大事なポイントが一通り終わり、徐々に入試の得点につなげる段階に入りました。今日は、その前に助詞をまとめておきたいと思います。
今日は助詞について学習します。
助詞は一見難しく感じます。なんだか、すごく細かいことが書かれている割に、入試そのものでは出題されないように感じるし、先生もあまり細かく説明しない。なんて思っていると突然、模試の解説で「助詞が…」なんて説明が始まる。
というわけで、このあたりを解決しておきたいと思います。
- 助詞は種類ごとに理解するポイントが違う!!
- 格助詞と接続助詞~主客の判定に使おう!
- 格助詞「を」「に」「が」「の」などは全て「連体形」につく~「の」を補う形になる。
- 「の」と「が」はそれぞれ、主格と連体格をとる。テストに一番出るのは、同格の「の」。
- 接続助詞の「ば」~覚えるよりも理解
- 「ば」の清音化に注意
- 「ものの」「ものを」「ものから」は逆接!
助詞は種類ごとに理解するポイントが違う!!
助詞が難しく感じてしまう人は、助詞が種類ごとに大事なポイントが違っているからです。逆に言えば、得意にしている人は、どうでもいいところをさっと流して、覚えなければいけないポイントだけをうまく覚えてしまっているんですね。
なので、ここが一番のポイントです。
助動詞だと、それぞれの説明は異なっても、「意味」「接続」「活用」と、必ずこの3つのポイントにそって、整理して覚えればすむわけです。
でも、助詞は、その種類によって、何に重きを置くかを考える必要があるんですね。もっというと、そのポイント以外のことは、そもそも日本語だから、なんとなくわかるものが多い。
「が」とか「も」とか「に」とか「より」とか「へ」とか、いちいち用法がどうだなんて説明しなくても、正直言ってなんとなくわかりますよね。もっというと、小学生・中学生の現代語文法問題みたいなもので、せいぜい出題されたって、「次の中から用法の違うものを選べ」みたいなやつで、細かい説明ができなくても、なんとなく違うかなぐらいで正解できるものがほとんどです。
だから、本当に覚えるポイントは少ない。
では、まず、ざっと種類別のポイントをまとめておきましょう。
格助詞
基本的に、「を」「は」「の」「が」「に」などの言葉です。ほとんど覚えることはありません。ほぼ無視で大丈夫。むしろ、文を切る、主客の見分けが重要です。
接続助詞
格助詞と同様、文が切れるかどうかが一番重要です。実際には、「順接」と「逆接」、「仮定条件」と「確定条件」という、ふたつの大きな意味の境目がありますから、格助詞に比べると、理解しなければいけないことが増えます。
副助詞
「だに」「すら」「さへ」「し」などの、いわゆる入試で問われるポイント満載の部分です。意味そのものをしっかり覚えるのが重要で、さらにそれを読解につなげるのが重要な部分です。
係助詞
ほとんどが係り結びに関わります。疑問・反語の「や」「か」と強調の「ぞ」「なむ」「こそ」がポイント。これに組み合わせて使うことの多い「は」と「も」を絡めて覚えればほぼ完了しますから、ベースは係り結びの理解になります。
終助詞
もっとも助動詞に近い理解が必要になるのが終助詞。ただし活用はしませんから、「意味」と「接続」を覚えることになります。
間投助詞
文法書によってゆれるのが、この部分。副助詞の「し」や終助詞の「や」「よ」などを間投助詞といったりします。あまり、真剣に分類を覚えなくても大丈夫。極端なことをいえば、存在を無視して、終助詞や副助詞にまぜてしまっても問題ありません。
格助詞と接続助詞~主客の判定に使おう!
格助詞と接続助詞については、基本的には、主客の判定として理解する、ということが一番大切なことです。極端なことを言えば、覚えることは一切ありません。大事なことは、すでに書きましたが、こんな感じのこと。
基本的には、
- 「て・つつ・ながら」は主語が変わらないのが原則なので、係所を探す=つまり、直下に係るとは限らないということ。
- 「を・に・ど・ば」は、主語が変わる可能性があるので、注意すること。
- 「~を見る」のような場合は、主語が必ず別。
- 「言へば笑ふ」のように、客語が自明な語が「ば」「ど」の上にくる場合、次の主語は客語にあたるもの。
- 上記ふたつに敬語の理解を混ぜると主語が明確に決まる場合がある。
というようなことです。したがって、助詞そのものについて理解すべきことが他に何かあるかというとあまり多くありません。簡単におさえておくべきポイントをまとめます。
格助詞「を」「に」「が」「の」などは全て「連体形」につく~「の」を補う形になる。
最初のポイントは、格助詞「を」「に」「が」「の」などの上に来る動詞・形容詞は連体形になるということです。
こういうのは、現代語で考えるとよくわかります。日本語ですから。
遊ぶ+を=遊ぶ「の」を
遊ぶ+が=遊ぶ「の」が
というように、私たちは「の」、つまり「こと」「もの」にあたる部分を補ってしゃべっているんですね。古文では、この補いがないんですが、でも、形は連体形になっています。
たとえば、
「遊ばむを」
というような場合、「む」が連体形になります。そうすると、「む」の連体形は、「ような」と訳して婉曲ですから、
「遊ぶ」「ような」「の」「を」
と訳すことになります。覚えておきましょう。
「の」と「が」はそれぞれ、主格と連体格をとる。テストに一番出るのは、同格の「の」。
格助詞の中で、そのものがテストに出るとしたら、たいていは「の」「が」の訳し分け。
現代語では、
「が」=主格 「私が行く」「学校が休み」
「の」=連体格 「私の家」「学校の授業」
と、ほぼ使い分けられています。
古文では、これがそれぞれ両方の意味を持つわけです。実際には、現代語でもその用法を使っているので、そこを覚えておけば大丈夫。
「が」が連体格になるのは、
「我が家」とか「我らが母校」とか「我がクラス」みたいな使い方をしますよね。古い映画だと「誰がために鐘は鳴る」とか。
「の」が主格になるのは、
「君の住む町」とか「彼の行くところ」のような形で使います。
だから、現代語にも残っています。
同格の「の」が試験で頻出
試験でもっとも出るのは、同格の「の」ですね。
ポイントは、「の」の後が体言、または連体形になること。
主語が名詞であるとすると、「の」をはさんで連体形になるからこそ、「同格」ですね。
僧 の 清げなる衣着たる 言ふ。
n の 連体形=n 動詞
こんな感じです。一見、主格のように感じますよね?ただ、同格の場合は、その動詞部分が連体形になって、当然、受ける動詞が別にあるわけです。
主語のあとの「の」で動詞で終わりなら、主格。
主語のあとの「の」のあとの動詞が連体形で、さらに動詞があるなら、同格。
です。
接続助詞の「ば」~覚えるよりも理解
接続助詞の場合は、意味もなく覚えるよりは、きちんと理解しておきましょう。
咲かば、行かむ。
咲けば、行かむ。
の意味の違いですね。
「咲かば、行かむ」は、未然形+「ば」ですね。未然というのは、「いまだしからず」ということ。「まだそうなっていない」という意味です。未然形接続の助動詞は「ず」や「む」など、「まだそうなっていない」言葉です。したがって、花は「まだ咲いていない」。
というわけで、「花は咲いていない。花が咲いたら行こう。」です。
「咲けば、行かむ」は已然形+「ば」です。已然というのは、「すでにそうなった」ということ。つまり、花は「すでに咲いている」。ということで、「花はすでに咲いた。咲いたので、行こう」ということです。
「ば」の清音化に注意
これが、「ば」なんですが、もうひとつ試験でよく問われるのが、「ば」の清音化です。
花咲かずは、~
というような文章。思わず、「花が咲かないのは」と、「~のは」と訳したくなりますが、なぜだめかわかりますか?
先ほど、格助詞(実際は係助詞ですが)のところで書きましたが、もしこれが主格に当たるとするなら、当然、連体形なんですね。「~のは」と訳したくなるように。
というわけで、もし、主格にあたるなら、
「花咲かぬは」とならないといけない。しかし、ここは、「咲かずは」と、一見終止形。もちろん、終止形+「は」はありえないんです。「ず」がもうひとつあるのは連用形ですね。連用形というのは、形容詞もそうなんですが、未然形が原則ないとしている以上、連用形しかない、という逃げ方なので、実質未然形と一緒なんです。
つまり、本当は、
「花咲かずば」なんですが、これが、清音化して、「花咲かずは」となるんです。
つまり、「花が咲かないならば」ですね。
国立二次の記述では好きな出題ですので、覚えておきましょう。
「ものの」「ものを」「ものから」は逆接!
最後に、受験生が苦手とする接続助詞が、
「ものの」「ものを」「ものから」
の3つ。
すべて、逆接を表す接続助詞ですね。
逆接は意味としても落とすと大変なことになります。まったく意味が逆になってしまう可能性が高い。
というわけで、この3つは、覚えておきましょう。
逆接という意味では、ほかに「ながら」がありますね。
では、助詞もだいぶ長くなったので、次回に続きます。