漢文の漢字シリーズの一応ラストは「複合語」です。要は熟語のようなもので、どう読むか、どんな意味かおさえましょう。
漢文で得点を重ねるためには、最後は「漢字」にたどりつきます。
構文と句法だけでは満点はとれないということです。最後は、漢字の知識をつめこむ必要があります。
というわけで、今までやったのがこちら。
今日は、その最後で、「複合語」と呼ばれるものです。
まあ、熟語みたいなものですね。ある漢字の組み合わせが来たら、「必ずこう読んで、こういう意味になるよ」っていう形です。
そんなに数が多くないので覚えてしまうといいでしょう。
日本語として定着している語
已矣哉・已矣乎
読み:やんぬるかな
意味:もうどうしようもない。残念だ。これまでだ。
「已」が「やむ」で、「終わる」というこです。
不得已
読み:やむをえず
意味:やむをえず
まさに日本語になってしまった言葉です。読めれば、意味はとれます。
為人
読み:ひととなり
意味:性格、人物像
これも漢文から定着した言葉です。どんな人か聞くときに「人と為り」を聞いたりするわけですね。
所謂
読み:いわゆる
意味:いわゆる・俗に言う
日本語であてて読んでいるイメージです。読めることが重要
所以
読み:ゆえん
意味:理由・手段
これも同様に日本語であてています。理由にあたるものは、この語の下に来ます。
所以~者 所2以~1者
読み:~するゆえんのもの
意味:~する理由のものは
「所以」のあとに理由がきて、ここから戻り、その全体が「者」にかかっていきます。
就中
読み:なかんずく
意味:とりわけ・ことに
漢文が日本語に定着した…といいたいところですが、ほとんど使わなくなってしまったので、覚えないとだめな言葉かもしれません。ある程度の年齢層は知っている言葉ですから、当たり前のように出す可能性があり、しかも現代の高校生にはかなり厳しい言葉ですから、やっかりですね。
居数日
読み:おることすうじつ
意味:数日経って
「居」を「おること」と読むのですが、解釈としては「数日が過ぎて」となるので、注意しましょう。
疑問の意味を持っている語
何為・奚為
読み:なんすれぞ
意味:どうして
疑問句法でも入っている表現です。
「何をか為す」と読むこともできます。そうなると、「何をするのか」ですね。
何為者
読み:なんするものぞ
意味:何者だ?
「何を」「為す=する」「者=人」という感じ。
何如・何若・何奈
読み:いかん
意味:どうなっているのか
「何如」ですから語呂合わせで「男女の関係」で、「どうなっているのか」です。
如何・若何・奈何
読み:いかん
意味:どうしようか
「如何」ですから語呂合わせで「女難の相」で、「どうしよう」です。
無奈何
読み:いかんともするなし
意味:どうしようもない
「いかん」ということが「ない」という構造です。つなぐために「いかんともする」と読みます。これも日本語になっていますね。「いかんともしがたい」なんて使います。
幾許・幾何・幾所
読み:いくばく
意味:どれくらい
疑問の基本句法です。
何謂也
読み:なんのいいぞや
意味:どういう意味か
読めれば、なんとなく訳せるかもしれません。
何則
読み:なんとなればすなわち
意味:なぜなら
「則」は「レバ則」で「~すればすなわち」です。というわけで、「なんとなればすなわち」ですが、「なぜなら」となります。
何者
読み:なんとなれば
意味:なぜなら
「何則」が読めれば、その延長線上で大丈夫。
孰与・孰若
読み:いずれ
意味:どちらか
「孰」が「いずれ」と読めればさほど難しいことではありません。
接続詞のような役割をする語
是以
読み:ここをもって
意味:そういうわけで
以是
読み:これをもって
意味:「このような方法」で。「このこと」から。「これ」を用いて
「是以」と「以是」で読みも違えば、意味も若干違うというややこしいところです。
「これ」とおぼえて上の是「ここ」、下の是「これ」というのが読みの覚え方のおすすめ。意味は「以」が上にある方が「by」のイメージに近いので、それに近づけて訳出するといいでしょう。
於是
読み:ここにおいて
意味:そこで
さっきのとごちゃごちゃになるとつい「これ」と読みたくなりますが、違和感を感じて直してくださいね。
無寧
読み:むしろ~んか(や)
意味:むしろ~のほうがよい。どちらかといえば~したいものだ。
「寧」だけでも「むしろ」ですが、「無寧」にならないと文末は「んか(や)」にはなりません。
不則・否則
読み:しからずんばすなわち
意味:そうでないと、そうでなければ
「不」だけでは読めないので前に足します。「不」と「否」は部首抜きのイメージですね。文末の「不」を「~いなや」と読むときと逆の感覚です。
「しからずんば」は「しからざれば」とも読みます。
不者
読み:しからずんば
意味:そうでないなら
「何者」と「何則」と同様に、「不則」と同じ形になります。
そのほかの語
以為・以謂
読み:おもへらく(もって~となす)
意味:以下のように思う
「~く」という読みは、英語のthatの役割に近く「~する。以下のように」というイメージ。「いはく」「きけらく」「よろしく~べし」「すべからく~べし」など。
「以為〇」は、「以〇と為す」と読むこともでき、「〇と思います、〇とします」という感じ。そこであててしまって、「おもったよ、〇とね」と読んでしまうわけです。入試では「以て~と為す」と「おもへらく」の両方の読みを知っている前提で変えるような出題もあります。
「おもへらく」は「おもへり」に「ク」がついた感じ。
由是観之
読み:これによりてこれをみれば
意味:このことによって考えてみると
「観る」は観察からもわかるように「よく見ること」。
庶幾
読み:こいねがわくは・こいねがう・ちかし
意味:願います。以下のことを。~に近い、ほとんど同じ。
「く」というのは「おもへらく」と一緒で「以下のことを」。「近い」と読むこともあるので、注意。
今者
読み:いま
意味:今
昔者
読み:むかし
意味:昔
「者」が無視されるパターンですね。
大率・率・大概
読み:おおむね
意味:ほとんど
「大概」はわかりやすいですが、「率」が一番イメージできないかも。覚えておきましょう。
少焉・頃焉
読み:しばらく・しばらくして
意味:少しして、しばらくして
時間をあらわすイメージができれば簡単です。
仮令・縦令
読み:たとひ~とも
意味:たとえ~だとしても
「縦」は「たとひ」がありますよね。「仮」は「もし」のイメージなんですが、「令」がつくと、「たとひ」になります。
聞道・聞説
読み:きくならく
意味:聞くところでは以下のようである。
「~く」のパターンですね。以下のように聞いた…という感じです。
以上です。漢文の漢字はちょっと見ているだけで、どこか記憶に引っ掛かりますから、入試が近くなったら、ざっと全部を眺めてみてください。