漢文の漢字シリーズで、まだ手をつけていなかった和漢異義語と人称などの話をまとめておきます。
漢文の漢字をおさえることはとても大事で、これまでもいろいろな人に見てもらっているようです。
今日は、その漢文漢字シリーズの3回目。
ここまでは、
和漢異義語と人称など、漢文ならではの語をまとめていきたいと思います。
和漢異義語~日本と中国で意味が異なる言葉
和漢異義語というのは、日本と中国で意味が異なる言葉のことです。そもそも読み自体が異なっていて、そこが問題になることがあります。
共通テストなどでは、和漢異義語そのものが問になるというイメージよりは、傍線部や根拠の部分に和漢異義語が含まれていて、選択肢で訳し分けられているというイメージでしょう。
では、説明していきます。
故人
漢文:古くからの友人
日本:死んだ人
和漢異議語といったら、まずはこれ。「温故知新」という言葉のように「故」には「ふるい」という意味があります。
丈夫・大丈夫
漢文:立派な成人男子
日本:丈夫なこと、大丈夫なこと
人間
漢文:人の世、世間、社会。関係。ジンカン
日本:人間。ニンゲン
これは現代文の評論なんかでも出ますね。「間=ま」のことですね。
百姓
漢文:人民、庶民。ヒャクセイ
日本:農民。ヒャクショウ
比較的多く出てきます。意味が似ているので、気にしない人もいますが、選択肢に「農民」とあったなら、間違いですので切っていいですよ。
城
漢文:街。城壁の中の街のこと。ジョウ
日本:お城。シロ
これもよくでてきます。城壁の中の街も城も同じだと思う人もいるでしょうが、町と城ぐらいに考えるとまったく違いますね。ですから「町」と覚えましょう。
小人・大人
漢文:徳の少ない人と徳のある優れた人物。ショウジン、タイジン
日本:子どもとおとな。ショウニン・コドモ、オトナ
よく出てきます。立派な人物かどうかってことですね。
父兄
漢文:年長者。自分より年齢が上の世代。父と兄。
日本:両親。
漢文のほうが感じで納得ができますね。
長者
漢文:年長者。徳のある人。
日本:お金持ち。
「長」は「少」の反対で、年長、年少と使います。年を取った人と徳のある、というのが重なるのは儒教的です。
学者
漢文:学ぶ者。勉強する人。
日本:学者。研究者。
漢文のほうがより字義に近いイメージですね。日本では職業として使われます。
庖丁
漢文:有名な料理人の名前。料理をする人。
日本:包丁。
漢文では料理人を指します。
左右
漢文:補佐する人物。側近。あるいは補佐することそのもの。
日本:左と右。
漢文では人物や行為を指します。
遠慮
漢文:深い考え。先を見通した考え。
日本:遠慮。ひかえること。
深謀遠慮がわかっていれば、問題ありませんね。
迷惑
漢文:道に迷うこと。心乱れ悩むこと。
日本:迷惑。
漢字の通り、「迷うこと」か「惑うこと」です。
稽古
漢文:昔のことを考えること。
日本:練習すること。
大部意味が違いますね。「稽」は「とどまる」とか「考える」とかっていう意味があります。むしろ、稽古を昔のことを考える、と知っておくことで「稽」の意味がわかるような気がします。
馳走
漢文:馬や馬車などで走ること。
日本:ごちそう。
「馳」も「走」も「走る」ですから漢文のほうが普通です。
人称=自分や相手などを呼ぶ言葉
寡人 カジン
私=徳の少ない人。諸侯が自分をあらわすときに使う。
孤 コ
私=王侯が自分をあらわすとき。
臣 シン
家来。私=家来が自分をあらわすとき。
子 シ
先生=あなた。孔子の論語で、「子曰、」と始まりますよね。
夫子 フウシ
先生=あなた。年長者などに使う。
小子 ショウシ
お前(二人称)
私(一人称)
自分を指すときは「小」でへりくだっていますが、相手に使うと「小」で見下している感じが出ますね。
妾 ショウ
私=女の人の「私」
二三子
お前たち。
人や人物を表す語
聖人
知、徳の優れた人物。すごい人。昔いた優れた人。
主上 ショジョウ
天子のこと。君主。
天子
君主。
君子
徳のある人や為政者。
佳人
美人のこと。賢臣として使うこともあるが、まずは美人。佳人薄命。
孺子 ジュシ
子ども
豎子 ジュシ
小僧、青二才。同じ子どもですが、馬鹿にする感じ。「このガキ」というイメージでしょうか。
時間を表す語
一日 イチジツ
ある日。one day という感じですね。
一旦 イッタン
ある朝。「旦」は朝を指します。
他日
ある日。過ぎてしまった「ある日」で、日本語のように未来の「別の日」ではありません。
須臾 シュユ
少しの間。結構試験で出ていると思います。
食頃 ショクケイ
少し間。「食事をするようなわずかな時間」ということです。
千載・~載 センザイ・~サイ
千年。「載」は「年」をあらわします。
旬 ジュン
10日間。上旬、中旬、下旬なんていう風に使いますね。
他生 タショウ
前世。
光陰 コウイン
年月。月日。光陰矢の如し。
四時 シジ
四季のこと。
望 ボウ
満月。またその日のこと。
年齢を表す語
弱冠
二十歳のこと。冠をつけて元服する。「弱冠~才で…」というような用法は日本語のもの。
還暦
60歳。十干と十二支の組み合わせで、60パターンできあがる。詳しくは以下。
古稀
70才。杜甫の詩がベース。「人生七十古来稀なり」。
論語の年齢
有名な論語の一節は常識化されているので一応あげておきます。
志学
15才。十有五にして学を志す。
而立
30才。三十にして立つ。
不惑
40才。四十にして惑わず。
知命
50才。五十にして天命を知る。
耳順 ジジュン
60才。六十にして耳順う。(したがう)
旅や自然にかかわる語
遊子 ユウシ
旅人。「遊」には、旅とかあるいは動き回る、歩き回るという意味がある。
過客 カカク
旅人。
客舎 カクシャ
旅館。
逆旅 ゲキリョ
旅館。「逆」に「迎える」という意味がある。
江上 コウジョウ
川のほとり。
乾坤 ケンコン
天と地のこと。
状態や性質を表す漢語
意外と知っておくといい部分ですので、ざっと目を通しておきましょう。
従容 ショウヨウ
ゆったりとしたさま。
棲棲 セイセイ
あくせくしているさま。
悄然 ショウゼン
憂いがあり、もの寂しい、思い悩む感じ。
蕭然・蕭蕭・蕭条 ショウゼン・ショウショウ・ショウジョウ
寂しい様子。
憮然 ブゼン
がっかりする様。日本語と若干違うニュアンスになりがちなので注意。日本語だと怒っている感じがありますね。
忿然 フンゼン
むっとして。怒って。こちらが怒る感じ。
欣然 キンゼン
よろこぶ様子。欣=喜び
惻隠 ソクイン
他者をいたわる心。思いやり。孟子で出てきますね。
旦旦 タンタン
誠意がある感じ。毎朝、毎日という意味で、おそらく、毎日続ける誠意という感じです。
区区 クク
わずか、小さいという感じ。
喟然 キゼン
溜息をつく様子。
生活を表す語
陋巷 ロウコウ
路地裏。「巷」は「ちまた」ですね。舞姫に「狭く薄暗い巷」なんて出てきました。
恒産 コウサン
職業。仕事。これも孟子で出てきますね。
家書 カショ
家族からの手紙。「家書万金にあたる」
起居 キキョ
立ち振る舞い。
涕・涕泗 ナミダ・テイシ
涙ですね。
思想の中で使われる語
海内・四海 カイダイ・シカイ
天下。
科挙 カキョ
中国における官吏、官僚になるための過酷な試験。本文よりは注に出て来ると思いますので、これに受かろうとみんなが猛勉強することを知っていてください。
進士 シンジ
科挙の合格者。進士に登第するんですね。
今日はここまでです。あとは「複合語」をアップロードする予定です。