古文常識の難読語シリーズは、「服装に関わる語」です。
古文常識シリーズは、入試直前ということもあり、試験で出やすい難読語を先にすすめています。
共通テストでは、こうした問題はまったくといっていいくらい(自分の中では全く記憶がありませんが、「絶対」と保証できるわけではないので)見たことがないんですが、私大文系、たとえば明治あたりはかなり頻出系の出題であったりします。
そして、一方、こうした常識語が、状況や人物を示すサインとして受け取れるかどうかで、読解が変わる可能性も出てきます。少なくとも、「完璧にわかる」と「まったく情報として受け取れない」では、かなり変わってくるはずです。
というわけで、今日は人物読み取りに必要な「服装に関わる語」です。
「漢字の読み」と「読解に必要な常識の理解」というふたつがポイントなんですが、読みの方は書いてある通りなので、説明は常識の理解、人物の理解に必要な情報の読み取りを中心に説明します。
服装のポイントは、「男性か女性か」「宮中かそれ以外か」「大人か子どもか」
服装を読解のヒントにしていくと考えた場合、ポイントはだいたい3つで、「男性か女性か」「宮中かそれ以外か」「大人か子どもか」です。
基本的に、二つ目の「宮中かそれ以外か」というのは、男性ベースです。なぜかというと、女性には、参内、つまり宮中に行くという行動がありません。もともと宮中を中心に暮らしているか、あるいは、宮中ではないところで暮らしているか、です。
たとえば、枕草子の中宮定子が、宮中を追い出されて外で暮らしていたとしても、参内という概念がない以上、特に服装がかわるわけではありません。正装でちゃんとしているか、それとも楽に過ごしているかです。
しかし、男性は「参内」という概念がありますから、外なのか、参内にふさわしい服装かどうかというのが現れるわけですね。
逆に女性の方は、服装のセンスが問われ、そして男性から選ばれることもあり、大人か子どもかというのが結構重要です。あるいは髪型とかですね。こちらも、子どもか大人か、出家しているかどうかなどがポイントになります。
男性の服装~参内できるか、できないかを中心におさえる
男性の服装は、正装、参内と、日常的な服装でわけられると思います。
日常的には、烏帽子(えぼし)直垂(ひたたれ)姿です。直衣(のうし)、狩衣(かりぎぬ)に指貫(さしぬき)というパターンもあります。直衣、狩衣が上に着るもの、指貫が下にはくもの、というイメージ。烏帽子が頭にかぶるものですね。
参内するとなると、烏帽子が衣冠(いかん)にかわります。要は冠ですね。下の指貫はそのままで、上が布袴(ほうこ)になります。手には錫のかわりに扇です。
さらに行事などの正装となると上が束帯(そくたい)で、手に錫(しゃく)を持ちます。下は、裾(きょ)がある袴になるわけです。よほどでないと、この場面が出てくることはないので、たいていは下が指貫ぐらいの感じですし、宮中はなれているとなれば、最初の様子になるわけですね。
物語なんかだと場面が宮中であるわけではないので、指貫に烏帽子あとは、直衣あたりの可能性が高いと思います。
女性の服装~大人か、子どもか、出家しているか、そうでないか
女性の場合は、参内するということはありません。なので、ちゃんとしているかそうでないか、子どもか大人か、出家しているかどうかなどが、服装や髪型などによってつかめます。
家から出られない分、場面に合わせて服装が替わるということがない分、逆にどんな身分かどんな年齢かなどがつかみやすいわけですね。
大人の服装は、ちゃんとしているか、そうでないか
女性の場合は、ずっと宮中にいるか、あるいはずっと家にいるかですね。なので、場所によって違いがあるという感じではなく、ちゃんとしているか、だらしなくていいかという違いです。
ちゃんとしているパターンが唐衣(からぎぬ)に裳(も)ですね。この姿が出てきたら、きちんとしている証拠。ピシッとしている感じです。これがいわゆる十二単(じゅうにひとえ)です。別に十二枚着ているわけではありません。
略装になると、小袿(こうちぎ)に打袴ですね。
で、夏とかだと、すごく暑いわけで、そうなるとほぼ下着。これが単(ひとえ)。下は袴ですが、上はほぼほぼ裸に近いような下着のイメージです。
まあ、こんな感じで過ごすわけですから、そう簡単に男性が部屋の中に入れないし、入れちゃうと関係を持つようなもの…というのもわかりますよね。
子どもを表す服装と髪型
子どものポイントは髪型。振分髪(ふりわけがみ)ですね。額に髪がまだかかっているようなイメージ。肩ぐらいまでの感じでしょうか。目がかくれちゃうから、振り分けるわけです。
服装は、衵(あこめ)とか汗衫(かざみ)です。衵は男性の服のひとつですが、宮中に使える少女が着ていたと。汗衫は汗取りの服、というような名前なんですが、少女の普段着として使われていたようです。
出家についても理解しておく
古文の学習の中で、出家はとても大事なキーワード。ただ、隠語で表すので、「出家」と直接出ないのが難しいところ。
単語で仏教を表す語のところにいっぱい載せていますが、本当にちょっとした隠語的表現で気が付かないといけないわけです。
「世をそむく」「のがる」「かる」「いとふ」「すつ」というあたりに加えて、「様を変ふ」「形を変ふ」「身をやつす」などです。
で、「かしらおろす」と「御髪おろす」で「削ぐ(そぐ)」なんていうのもありますね。
というわけで、「尼削ぎ(あまそぎ)」。これで、女性の出家の髪型ですね。
決して、ツルツルになるわけでなく、肩ぐらいまである髪型ですから、振分髪とたいして変わりません。これで出家。
出家前の女性が、外出できるのは、仏教の説経を聞きにいくときですね。
身分が高ければ、車で行けますが、よほどでないと車は使えませんから、そんなときに使うのが市女笠ですね。笠をかぶって、顔が見えないようにするわけです。