国語の真似び(まねび) 受験と授業の国語の学習方法 

中学受験から大学受験までを対象として国語の学習方法を説明します。現代文、古文、漢文、そして小論文や作文、漢字まで楽しく学習しましょう!

古文常識~難読語「人物・身分にかかわる語」

古文常識シリーズは入試を意識して、読みを覚える必要がある難読語を解説したいと思います。

古文常識シリーズは、古典の楽しい話を中心に、自然と古文常識が理解できるシリーズにしたいんですが、入試が迫ってまいりましたので、先に、入試の得点に直結する難読語を説明したいと思います。

入試に出るポイントとしては、まずはなんといっても読みですね。MARCHクラスでも出題されることがありますので、ざっと目を通すぐらいはしておかないといけません。

それから、そういう語を理解することで、読解に役立つという可能性もあります。

その語がイメージできることによって、情報がもらえる、というようなことです。

まずはそんなことから説明しましょう。

 

その言葉が「男性か女性か」「敬意対象か身分の低いものか」

読みが入試で出題されるから覚える…というのは理解できると思いますが、読みだけでいいのか、という問題がありますね。

今回のスライドには意味というか説明もついています。

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「男性か女性か」と「敬意対象かどうか」を意識してみていきましょう。

このスライドの場合、赤が女性にかかわるもの、青が男性にかかわるものです。

それが左右に二つ分かれています。

右が宮中に入れるもの、敬意対象者で、左が敬意対象ではないもの、というそういう区分けです。

つまり、こういうことを知っていれば、「あ、この呼称からすると女性だな」とか、「この呼称からすると、えらくない人だから、敬語は使われないな」とかがわかるわけです。

こういのが「常識」という部分。偉い人であれば敬語は使う。そうでなければ使わない。主客の判別の基本です。

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というわけで、もう一度書きますが、使い勝手は二つ。

まずは、難読語の読みが出た時に読みが答えられるようにする。

それが男性か、女性か、偉いか、偉くないかをわかって読解に役立てるようにする。

こういうことですね。

 

女性の身分や立場を表す語

平安期の作品、中古なんていう風に呼びますが、中古の作品での女性は、ほぼ宮中の中に限られます。

つまり、宮中にいる「偉い人」と「そうでない人」ですね。

女性は、役職というような形で働いているわけではありませんから、えらい人というのは、基本的に、「帝の奥さん」か「帝の子ども」、あるいは「将来帝と結婚する可能性のあるようなお方」、つまり「身分の高い男性の子ども」という形に限られています。

帝の奥さん、もうちょっと下品にいうと、「帝の子どもを生む役割を持った女性」のことを「女御」「更衣」と呼びます。これが敬意対象者。

「女房」と間違えないでくださいね。これは全然偉くない、おつきの方々。清少納言とか紫式部とか讃岐典侍とかです。

その「女御」「更衣」の中でも、正妻にあたるのが「宮」「中宮」ですね。敬意は「せ給ふ」系の二重尊敬系。このお方の生活する場所が「弘徽殿」です。だから、「弘徽殿の女御」なんて源氏で出てきますね。ちなみに第二位が「藤壺」だったりします。「桐壺」は部屋はあるけど、はしっこです。

「御息所(みやすんどころ)」は、皇太子妃とか、この中でも帝の子どもを生んだ女性を指すらしいんですが、広く「女御・更衣だった人」ぐらいでも用いられているようです。

偉くないほうは広くみんな「女房」。その中でも役職名のような形でよく出てくるのが、「内侍」と「命婦」。内侍は帝にお仕えする女房で、命婦は中級ぐらいの、ちょっと偉い女房って感じ。枕草子の翁丸のところで出て来る、翁丸という犬に襲われる猫が、「命婦」なんですよね、猫なのに。

 

男性の身分や役職を表す語

 男性は、この時代、権力争いというか、身分の上下の中を生きています。

まず、超偉い人といえば、まずは帝ですね。上とか御前とかそんな言葉で表されることもありますが、基本的に二重尊敬系の語句で書かれます。この辺、中宮と一緒。

中宮とともに「宮」と呼ばれるのは、皇太子、次期帝です。「とうぐう」というんですが、東宮と書いても春宮と書いてもかまいません。東は春ですから。

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方角は十二支で。

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次に偉いといえば、「上達部(かんだちめ)」とかですね。これは三位以上を指すわけです。「公卿(くぎょう)」っていうのも同じ言い方。それを含めて、五位以上が宮中に入れます。これが「殿上人(てんじょうびと)」。宮中の殿に上がれるってことでしょうね。あとは「上人(うえびと)」とか「上衆(じょうず)」とかですね。この辺が敬意対象者で「給ふ」系になるわけです。

反対に宮中に入れないのが、「下衆(げす)」とか「地下(じげ)」とかです。敬意がなくなります。しかし、そうはいっても、えらい人に近づいてくる身分だから物語に登場してくるわけで、結構なもんなんですよ。だって六位まで来てたりするんで。

その典型が「蔵人(くろうど)」。六位だったり、あるいは最後、定年間際に記念的に五位になったりするらしいんですが、だから、結構出てきて、実質、宮中に入れます。

だって、五位以上の人は権力争いしているわけで、そうじゃない人がいないと雑用的な仕事はできないですよね。といっても雑用の長ぐらいな感じですけど。そういう意味でつかわれるのが、「舎人(とねり)」と「雑色(ぞうしき)」でしょう。両方とも雑用係的な意味合いですが、「帝のお世話係」と名前を変えたら、雑用でも偉い感じ、すごい感じが出ますよね?今の話はそんな感じなんですよ。
ただ、殿上人とは比べられない、敬語は使われない、というだけです。

「随身(ずいしん)」は、外出するときの付き添いのことを指します。

そんなに真剣に覚えなくてもいいですけど、ちょっと知っていると読みが深くなるかもしれないし、わかりやすくなるかもしれませんね。