古文単語は今回が大きな山場。
頻出単語が多い不快な単語です。失恋したり、死別したり、左遷されたり…ドラマには不快な気持ちがつきもの。というわけで不快な気持ちは2回にわけてお送りします。
不快な気持ちというのは、すごくシンプルにいえば、「いやだ」ということです。これから説明していきますが、日本語にはいろいろな種類の「いやだ」があることがわかります。それに比べて、ポジティヴな言語の少ないこと。まあ、「美しい」という言葉をポジティヴとすれば、同じぐらいになるかもしれません。
失恋、病気、失恋、左遷。世をはかなむことといったら、どの作品でも共通するテーマかもしれませんね。
- 基本の「いやだ」。まさに「不快」グループ
- 悩みを抱えてしまったグループ
- モヤモヤして、それを何とかしたいと、待ち遠しくなるグループ
- 先行きが不安になると、安心
- 「あさまし」は「意外」で覚える!
- 「惜しい」と「あたらし」
- 「都合が悪い」と「不都合」の意味の違いってわかります?
基本の「いやだ」。まさに「不快」グループ
さて、まずは、本当の「不快」。つまり、「いやだ」ってことです。
これがおさえられるとだいぶ楽になります。
典型となるのは、「うし」「うたてし」ですね。これが基本。
で、現代語でも存在しているタイプはだいたいこれ。
「うるさし」「むつかし」「さびし」「わびし」。これに加えて「うし」「うたてし」が、「不快」「いやだ」「つらい」。
そして、ここで一番重要なのは、
「つらい」になりそうな「つらし」をここからはずすこと。
「つらし」は「つれなし」に近い形で、恋愛系の言葉。
というわけで、「つらし」は「薄情だ・冷たい」という感じ。
もう一度おさえると、
「うし」「うたてし」「うるさし」「むつかし」「さびし」「わびし」が「いやだ・つらい」
「つらし」は仲間はずれで、「つれなし」を連想して「薄情だ」
です。
悩みを抱えてしまったグループ
つづいて、そういう気持ちは「悩む」気持ちになりますよね。
まどふ=とまどう どうしていいかわからなくて迷う
かきくらす=心がかきみだれる
ながむ=ぼんやり考え事をしてながめる
というようなイメージですが、要は「悩んで思い乱れる」という共通点があります。
「うんず・くんず」は、
それぞれ、「鬱す」「屈す」ですね。
鬱という状態を「す」、屈折という状態を「す」です。
ちなみに両方、サ変動詞ね。名詞+す、のパターンですよ。困ず、とか、念ず、とかね。
「かきくらす」は複合語なので、たとえば「かきぞくらさるる」なんていうふうに、係助詞と自発あたりがセットになって活用したりします。
「ながむ」は、悩みをもちながらぼんやり眺めるとすれば、「ありく」は「考えごとをして歩き回る」感じだし、「たどる」は「思い悩みながらたどっていく」という感じがあります。
「かこつ」は動詞ですが、嘆く、というのがいいでしょう。百人一首に「かこち顔なるわが涙かな」というのがありますよね。
モヤモヤして、それを何とかしたいと、待ち遠しくなるグループ
これが意外と間違うというか、覚え切れていないグループです。
古文はそもそも
- 擬音のような漠然としたイメージ=和語としてのイメージ
- 漢語(音読み)をベースとした名詞イメージ
のどちらかと見てもいいんですが、
「おぼつかなし」はモヤモヤという感じが一番。
なので、
まず、
モヤモヤしていて、気がかり
という意味があります。
そうすると、次に、
それをなんとか晴らしたい、気を晴らしたい、
というイメージ。
ところが、それが最後に転じると
待ち遠しい
というプラスイメージに転じます。
気がかり と 待ち遠しい って反対ですよね。
これに近いのが、
「こころもとなし」です。
「いぶせし」「いぶかし」は、現代語の「訝しむ」あたりがわかれば出てくると思います。
先行きが不安になると、安心
これと成立としては似ているのが、「うしろめたし」。
漢字で書くと、「後ろ目痛し」という雰囲気。
後のことを考えると不安になる
という意味で、先行き不安。これは実は「おぼつかなし」と似ています。
「うしろめたし」が使われるのは、やっぱり死を意識したときでしょうか。
関連語句でいえば「うしろみ」「後見」音読みすれば「こうけん」ですね。
反対語は「うしろやすし」。安心の「やすし」ですね。もう死んでも大丈夫、みたいな。
「こころやすし」は「心安し」でひっくり返せば「安心」です。
「あさまし」は「意外」で覚える!
あさまし、は「おどろきあきれる」と単語集に載っていることが多いですが、「意外」を入れておきましょう。入試で意外とこれが正解選択肢になります。
不意をつかれておどろく感じです。
「惜しい」と「あたらし」
「惜しい」という意味は、もともと「あたらし」だったんですが、「くちをし」「をし」「くやし」などに負けていきます。
で、そのうち、「あたらし」は「新しい」になってしまいます。
「新しい」って「あたらしい」ですよね?
じゃあ、「新たに」は?
「あらたに」でしょ?
おかしいですよね?
もともと「新し」は「あらたし」だったんです。でも言いにくい。で、ちょうど「あたらし=惜し」もあった。ところがこれが使われなくなる。というあたりで、どうも「あたらし」が「新しい」になっていったようです。
「あたらし」にしろ、「をし」にせよ、不足のニュアンスがあります。その意味では、「物足りない」という訳がうかび、「あぢきなし」あたりが近い感じになります。
「都合が悪い」と「不都合」の意味の違いってわかります?
「便」が「都合」と覚えられれば、
びんなし=不都合
びんあし=都合が悪い
ですね。
厳密にいうと、意味が違うんですけどわかります?
たとえば、おじさんが女子学生をデートに誘います。
どっちで断るべきですか?
「すいません。都合が悪いんです」
と断った場合、
「じゃあ、いつなら都合がいい?」
と迫ってくるかもしれません。
「それ、不都合ですよ」
と断ると、「いけないことしてますよ。訴えますよ。奥さんに言いますよ」的なニュアンスが入るでしょ?
すぱっと振るなら、「不都合」を使いましょう!
というわけで、今回は、不快の1でした。
次も「不快」シリーズです。