国語の真似び(まねび) 受験と授業の国語の学習方法 

中学受験から大学受験までを対象として国語の学習方法を説明します。現代文、古文、漢文、そして小論文や作文、漢字まで楽しく学習しましょう!

大学入試で役に立つ源氏物語のあらすじ 第一部前半 桐・藤・夕顔・紫と続く物語

今日は、大学入試間近ということで、今まで手をつけてこなかった源氏物語のあらすじを追ってみたいと思います。

文学史は当然、試験に出たら得点源にしたい分野なんですけど、それと同時に、どんな話かを知っていることで、文章が読めるようになるという一面もあります。

というか、枕草子、蜻蛉日記、更級日記、讃岐典侍日記あたりだと、知っている前提で、選択肢が作られちゃったり…なんていこともあるので油断できません。

というわけで、私は文学史の解説で結構作品のあらすじ、説明しております。

www.kokugo-manebi.tokyo

www.kokugo-manebi.tokyo

www.kokugo-manebi.tokyo

www.kokugo-manebi.tokyo

という観点で見ると、超長編の源氏物語は、長いがゆえに手つかずできておりました。まあ、実際、いろいろなサイトもあるしね。

でも、本当に古文を読むうえでざっくりと理解できるのか、というのは怪しいかなと思ったり、いつか書かなきゃな…とは思っていて、まあ、とりあえず、やってしまえということで、まとめます。

もっと詳しいことが知りたい人は、他のサイトにいって、研究してみてくださいね。

続きはこちら。

www.kokugo-manebi.tokyo

 

第一部前半を中心に~主要登場人物を中心にあらすじを考える

まず、源氏が理解しにくいのは、あまりにも長編であるがために、たくさんの登場人物がいるかのように感じてしまうことです。

でも、実は、源氏物語というのは、光源氏と母、桐壺、あるいはその代わりとなってしかも女性として愛される藤壺という部分を軸にしています。

つまり、この叶わぬ思い故、光は代償のようにおもかげを求めていく。

桐、藤、夕顔からめて、紫の上と、紫にまつわる花の名前がつく物語、だからこそ書いた人は、紫式部と呼ばれます。最初の妻が葵というのは、紫ではないけれど、主要なところは、この色が問題になっていくんですね。

そして、右大臣家、弘徽殿の女御、一の御子との権力争い。

さらには、この流れの中で、不遇の女性として描かれていると思われる、紫の上。

このあたりが大きな話の流れなんですね。そして、この大きな流れがわかれば、一部の後半から二部、そして宇治十帖もかなり理解しやすくなるはずです。

光源氏~会えなかったお母さんのおもかげ、愛してしまったお父さんの奥さん、つまり義理のお母さんのおもかげを追い続ける

さて、人物紹介といえば、まずは主人公の光源氏です。

桐壺帝と彼に愛された決して身分の高くない女性、桐壺の子どもです。圧倒的な美しさ、気高さを持ち、そして帝の子、さらには帝の愛した女性の子、とありとあらゆるものを持っています。

しかし、彼には母がなく、その面影を持つ女性が、自分の父の妻としてやってくることで、手に入らない、それでも追い求めたいという狭間で、彼は苦悩することになるわけです。

ただの遊び人、女好きのようなイメージですが、そもそも一夫多妻の時代ですし、彼にとっては、最愛の母、そしてそのおもかげを持つ最愛の女性を、順に追いかけているだけの話なんですね。

一方、権力争いとしては、左大臣家につくものの、光の権力を畏れる右大臣家との対立は心ならず、激化し、須磨へと流れる。その後、亡き父の霊によって明石に移り、その後も亡き帝の力によって、京に戻ることになります。ここで、本当は自分の子どもである冷泉帝がつくことにより、権力は絶対的になっていきます。

 

女たちの紹介

それでは、彼に関わる女性たちを順に紹介していきましょう。まずは、先ほども書いたように、紫の花の名を持つ女性たちです。

彼女たちが物語の本流。それ以外の女性が亜流、外伝、スピンオフと見ていけばわかりやすいと思います。

桐壺~帝に愛されたことで不幸になっていく。光源氏を生んですぐ死ぬ女性。

まずは、桐壺。光の母です。桐壺帝に愛された、決して身分の高くない女性。しかし、だからこそ、嫉まれ、いじめられ辛い思いをします。そして、宮中で孤立すればするほど、帝は彼女を守る。そうなれば、また嫉妬の炎は燃えさかる。弘徽殿の女御、一の御子という、次期帝、皇太子の母も、彼女を疎む。

ただ、最初は弘徽殿の女御にとって、彼女は帝の遊び相手ぐらいに思えている。だけれど、光が生まれたことにより、一の御子の座が危ないと感じだし、さらにいじめはましていく。

そして、この心労がもとで、光を生んで間もなく、彼女はこの世を去っていくのです。

藤壺~桐壺に似ている帝の奥さん。光と関係を持ち、帝の子として子どもを生み、出家。

桐壺を失った帝が、その悲しみを癒やすために、そっくりな女性を見つけてきます。それが藤壺。光にとっては、会ったことのない母のおもかげを持つ、そして美しい女性です。いつしか、彼は彼女に心を動かします。

しかし、彼女は光にとって、母であり、しかも帝の妻。かなわぬ恋、なんですね。

だからこそ、彼はその代わりを求めるかのように、相手を求めていく…。

しかし、その隙間は埋められず、ついに彼女と一度の関係を持ちます。

その一度の関係で、彼女は子どもを宿す。

それは、光の子ですが、当然、そんなことを明らかにすることはできず、彼女は帝の、光の父の子として、生むことになります。

その罪の重さから藤壺は、出家をして、光の前から姿を消します。そのあとも光はその心の隙間を埋めないわけにはいかないのです。

さて、先に藤壺を紹介しましたが、藤壺と関係を持つまでには、そもそも紆余曲折があります。ドラマでいえば、彼が最愛の人であり、彼が彼女と関係を持つのはひとつのクライマックス。だから、そこまでにも、さまざまなドラマ、つまり、さまざまな女性が登場するんですね。

 

葵上~光の年上の奥さん。きちきちしていて、あまり好きになれない。六条御息所に恨まれ取り殺されてしまう。

まずは、形式的な最初の女性は、葵上です。彼女は左大臣家。ある意味で光の地位を確固たる地位にするために、選ばれた源氏の妻。

年上で、しっかりしていて、悪く言えばとっつきにくい、そんな女性です。

藤壺への気持ちがある中で、別の女性が妻としてあてがわれるわけで、だからこそ、彼は別の女性を探さなければいけません。

基本的には、源氏は距離を保っているわけですが、しかし、彼が成長していく中で、葵は彼の子を身ごもります。

そうなった時、彼はようやく、葵のもとにしっかりと行くようになる。

その時、彼が関係を持っていた六条御息所という1人の女性。光が葵のもとに行くということは、御息所との距離をとるということ。会えない源氏の姿を一目見ようと訪れた祭りで、葵の家に車を壊されるというようなことも重なり、御息所は最終的に葵のもとに生き霊として現れ、ついには取り殺してしまうことになります。

こうして、源氏の正妻、葵上はこの世を去るのです。

夕顔~光が藤壺のおもかげを求めて、町でみつけて関係を持つ女性。しかし、女の霊に取り殺されてしまう。

光が、妻葵上以外で、心から愛する女性を、藤壺の代わりとなる女性を探す最初が夕顔です。

後で紹介しますが、親友とも言える頭中将から女性や恋愛というものを、若き源氏は学んでいきます。

彼女は、源氏が町を歩いていて、はじめて興味を持った、センスを感じる女。頭中将がいっていたことを思い出しながら。

そして、関係を持つわけですが、最終的に2人でいる時に、女の霊に取り殺されてしまいます。彼女の死のあと、この女性こそが、頭中将が話していた女性であることがわかります。

 

若紫・紫の上~光が藤壺のおもかげを求めて、北山でみかけた女性。連れ去って、自分好みの女性に育てるが…

藤壺に思いを寄せながら、どうすることもできず、夕顔は死し、そんな中、訪れた北山で「垣間見」た幼い女の子。尼君、おばあちゃんといっしょに暮らす、藤壺に似た彼女をなんとか自分のものにしたい、と申し入れるものの断られる。おばあちゃんが死んだと聞いて、彼女を連れ去り自分のものにする。

光は彼女を自分で育て、しかしまだ幼いうちに自分のものとしていく。しかし、光自身は、須磨、明石へと姿を消しますから、彼女はともにいるわけではありません。

葵の上の死んだあと、彼女は正妻であり、京に戻ったあとようやく彼女が…というところではあるのですが、残念なことに子どもができません。

また、権力を光が持つということは、多くの女性と関係を持ち、姻戚関係をつくりあげるということ。

後半は、彼女の苦しみ、光とのすれ違いがひとつのストーリーになっていきます。

明石の上~光が都を離れたあと、明石で関係を持った女性。

光が明石にいたときに関係を持った女性で、光の子ども、明石の姫君を生みます。ほどなくして、光は京に戻ることになりますが、明石の上は、姫君とお母さんの尼君とともに、父入道を残して、光の屋敷に行くことになります。

 

その他の女性たち

その他にも源氏が関係を持った女性達がたくさんいます。この人たちが物語をおもしろくしている一方で、「複雑」とか「大変」という印象を与えるんですよね。それではざっと説明しましょう。

朧月夜~ライバル右大臣家の女性、朱雀帝に嫁ぐ予定の女性に光は手を出して…

その中で、最も重要な役割を果たすのは朧月夜でしょう。

彼女は、光のライバル、右大臣側の女性。右大臣家というのは、弘徽殿の女御、一の御子、つまり朱雀帝の家。帝は桐壺を愛し、その子どもが光源氏。帝は、光を次の帝にすることは断念するものの、しかし、右大臣家からすれば、その権力がいつ光源氏に行くかわからないと感じているわけです。

そんな中、光は、右大臣家が朱雀帝に差し出す予定の、この朧月夜に手を出してしまうのです。

わかりやすく言えば、誰が帝に愛されるか、という争いで権力を狙う最中、光は敵方の女性をかっさらってしまうわけですね。

このことによって、弘徽殿の女御、右大臣家の怒りを買い、光が京を離れ、須磨へと流れていくことになるのです。

末摘花~スピンオフ的物語

愛される物語ですが、スピンオフ的で物語の本流ではありません。

あまり顔がよろしくない女性として出てきます。若紫のころのお話です。

花散里~のちに光に迎え入れられるが、物語としてはスピンオフ的

同じように、光の女性遍歴の中の一人、ぐらいでいいでしょう。

誠実な人柄が売り。のちに光の屋敷に迎え入れられ、紫の上につぐ位置にいます。

明石の姫君

明石の上の子ども。のちに、紫の上に育てられることになります。

秋好中宮

六条御息所の娘。伊勢の斎宮として、御息所と一緒に伊勢に向かう。御息所の死後、光が御息所の遺志をつぎ、後見人として迎え入れる。まず、朱雀帝に愛されるが、この時は生きていた御息所の反対で実現しない。光も心惹かれるが、これも御息所の遺志により、あくまでも後見人に徹する。最終的には冷泉帝に入内していく。

 

光をとりまく男性たち

さて、ここまでにもだいぶ、男性たちが登場してきました。ここからは男性目線で物語を見ていきましょう。

桐壺帝~光の父。光を帝にすることは断念するも、死んでからも光を助ける。

まずは、桐壺帝です。光源氏の父です。とにかく桐壺を盲目的に愛し、そのことが桐壺を苦しめます。しかし、後見人のいない桐壺は帝を頼るしかない。結果、桐壺はこの世を去るわけですが、帝からすれば、最愛の人の子ども、つまり源氏を、愛するわけですね。なんとかしたい。一の御子をさしおいて、帝にしようと試みますが、占いで凶と出て、断念し、左大臣家、葵上と結婚させることで、その後見を盤石にします。

一方、桐壺のおもかげを持つ、藤壺を迎え入れ、これがそのあとの、光と藤壺の禁じられた恋へとつながります。

桐壺帝は死んだあとも、須磨に流れた源氏の夢枕に立ち、光を明石に行かせ、また、京でも、夢として、あるいはたたりとして、世を騒がせ、光源氏を京都にもどすようにもっていくのです。

頭中将~光の親友、あるいは先輩、あるいは悪友。

頭中将は、光源氏の親友であり、先輩であり、悪友といった印象。

左大臣家、葵上の兄、というところで、光との関係が生まれ、そして長い間、続いていきます。お仲間、ですね。

当初、葵上では満たされず、藤壺のおもかげを追う光源氏に、「女性」というものを教えるのが、この頭中将。

「雨夜の品定め」と呼ばれるんですが、要は、光源氏に「こういう女がいいんだぞ」ということを教えるわけです。それをきっかけに光源氏は町を歩き、そして、夕顔と出会い、関係を持つ。

夕顔が死んだときも、戻ってきて言い訳をする相手、ごまかす相手がこの頭中将です。

で、実は「こういう女がいいんだぞ」といっていたまさにその女性がこの夕顔だったりするわけですが、このように光とは、同じ女性と関係したり、須磨に流れている時に見舞って励ましたり、あるいは関係が悪化したり…と物語の最後まで関係します。

そして、その子どもたちまでが、物語を引き継ぐことになっていくのです。

ですから、この頭中将というのは、源氏の親友として、覚えておく必要があります。

 

一の御子・朱雀帝~桐壺をいじめた弘徽殿の女御の息子。次の帝。源氏の敵。

さて、敵側は、なんといっても右大臣家、弘徽殿の女御の息子、一の御子です。しかし、彼自体が光源氏に何かする、というよりは、左大臣家や弘徽殿の女御が何かをするのであって、彼はただ、光源氏のライバルとして、君臨しているだけの話。

摂関政治の時代ですから、彼は象徴であって重要なんですけど、権力は左大臣家や母の弘徽殿の女御がコントロールしようとするわけです。

一の御子ですから、順当に彼は朱雀帝に。しかし、源氏を追い落としたこともあり、よくないことにたたられ、(父、桐壺帝は光びいきですから、死後も光が苦しむと、たたっちゃうんですよね)結局出家します。

基本的に、ちゃんとした妻がいない。もともとは葵上の予定がこれを光源氏にとられ、次が朧月夜ですが、これも光源氏にとられたことで、取りやめ。愛したのは、御息所の娘、斎宮ですが、これも御息所の反対でだめに…。このことも、次の帝が冷泉帝(弟)になる要素です。

それでも、人柄としては源氏と対立するようなことはなく、仲よくやっていくような印象です。

だからこそ、後半、源氏に娘をたくすような物語の展開へとつながります。

冷泉帝~藤壺と桐壺帝の子ということになっている源氏の息子。朱雀帝の次の帝

藤壺と光源氏の子ども。でも、世間的には父桐壺帝と藤壺の子どもです。

朱雀帝の次に、帝になります。

光源氏が京に戻ったころの話で、こういったことも含めて、光源氏の権力が強固になっていくわけですね。

妃は、秋好中宮。物語の後半にこの人の役割が大きくなっていきます。

桐壺と弘徽殿の女御、そして藤壺。光は葵の上と結婚

それでは、ここまでもだいぶ物語の説明をしていきましたが、今度は時系列、つまり、巻の順番にしたがって、同じことを整理していきます。たぶん、両方読んでもらうと、だいぶ理解できるんじゃないかと思います。

物語は、桐壺帝と桐壺から始まります。

桐壺は身分の高くない女。なぜかこの女性を帝は愛す。しかし、その盲目的な愛し方に、周囲の人は眉を顰めます。一晩一緒に過ごして、そのままそこにお仕えさせたりとか…。

周りの女御からは嫉妬、男からは帝をだめにする女と心配され、病んでいきますが、後見人もいないし、頼るのは帝しかなく、そうなるとますます…という悪循環。

そんな中、男の子を身ごもり、出産。この世にも美しい男の子を帝はかわいがりますが、そうなると、おもしろくないのが、弘徽殿の女御です。すでに一の御子を持ち、つまり、次期帝を生んでいるわけですが、「もしかしたら…」ということを考えると、桐壺をいじめることになっていきます。

そして、桐壺はこの世を去る。

嘆く帝は、光源氏を東宮にすることを考えますが、占いでそれはだめだと言われ、断念。それでも愛する人の忘れ形見をなんとかしようと、左大臣家との縁組を考えます。それが葵上。光源氏が葵上と結婚することで、左大臣家という後見を手にします。

一方、愛する人を失った帝は、そのおもかげを持つ女性、藤壺を招きいれます。同じように弘徽殿の女御にとって邪魔な存在ですが、藤壺は後見がしっかりしているので、桐壺のような状況にはなりません。

しかし、母を見たことのない光源氏にとっては、母のイメージとともに、美しい女性として、父の再婚相手、帝の妻に、恋心を持つことになるのです。

 

頭中将と雨夜の品定め。夕顔と六条御息所

葵上と結婚した光源氏ですが、まだ若く、恋愛というものがよくわかりません。あるとすれば、藤壺への思慕のようなもの。

葵上は光には年上で、性格的にもきちんとしすぎていて、なんだか親しみがわきません。

そんな光ですが、葵上の兄、頭中将を通じて、男のふるまい方、女への接し方、女というものを学んでいきます。有名な「雨夜の品定め」というところなのですが、要は、男が集まって、「あんな女がいい」「こんな女がよかった」なんてことを話すわけです。男が集まって、女の話をしあうわけです。経験がない光は聞いているだけ。

でも、こういう話を聞きながら、女の扱い方、男としての振る舞い方を学ぶわけです。頭中将が、「つきあうのは中程度の身分の家がよい」と言われて、そういうところを歩いて女を見つけます。

最初は「空蝉」と言われる女性です。半ば強引に関係を結んだあと、この空蝉には思いをよせながらも、彼女はさまざまな理由から、光の前から去っていきます。こうした女性との関係を通して、さまざまな経験を積んでいく光源氏です。

そして、六条御息所に通うようになる、その途中の、夕顔が咲く軒先で興味を持った、センスのいい女性と関係を持ちます。それが夕顔。身分を明かさない彼女に光はのめりこみ、通い続けます。

しかし、ある夜、光が訪れている時に、女の霊があらわれ、夕顔は突然この世を去ります。源氏は慌てて戻り、その事実をごまかします。

夕顔の死後、雨夜の品定めの時に、頭中将が話していた女性がこの夕顔であったことに気づきます。

 

燃え上がる藤壺への思い。山で見つけた若紫を連れ去って育てる…その間に、藤壺とは禁断の関係に…

このように、葵という正妻はいるものの、空蝉、夕顔と光の気持ちが満たされることはないわけです。

心の底には藤壺への思いがあります。

光がわらはやみになって、北山へ加持祈祷に行ったところ、場所に似つかわしくない高貴な雰囲気の漂う家が。彼はそこで「垣間見」、覗き見をします。

すると、そこにはあこがれの藤壺に似たかわいい幼女が。話からすると、母はすでに失い、祖母の尼君と暮らしています。

「こうやって頭中将たちは女を見つけるのか」と思いながら、なんとかこの女の子を自分のものにしたい光は、尼君に申し入れますが、断られます。

この間、藤壺が病で里に下がります。その時、女房の手引きもあって、藤壺と禁断の関係に。年齢差は5歳。この時、源氏18才です。

後悔にさいなまれる藤壺はその後、光からの手紙を一切無視し、会わないようにしていきます。

北山の尼君と女の子は都にうつりました。しかし、尼君はついにこの世を去ります。どうしても自分のものにしたい光は、葵の父左大臣家に先んじて、拉致するかのように自邸に連れて帰り、自分好みの女性に育てることにするのです。

その後、藤壺は懐妊を知ります。宮中は帝の子と思っていますから、大喜びです。一人、事情を理解している藤壺は、罪の重さにおそれおののきます。

光源氏はそれでもなお、手紙を送ります。

やがて、出産。光源氏にそっくりなその子どもを見て、藤壺は罪の重さを感じるのです。

 

六条御息所の「あくがる魂」。とりころされる葵上。

光源氏は、六条御息所という女性と関係を持っていました。光にとって、とっつきにくい女性に感じる葵上に対して、美しく、気品も教養も、身分も、何もかも備えて完璧にふるまえてしまう女性。一方で、光を独り占めしたいというような気持ちも持ちつつ、でも、そうはふるまえない、というような感じ。

徐々に光がこの完璧さから逃げ出そうとするときに、葵上が懐妊し、光はそちらに通い出し、訪れは少なくなる。

そんな折、賀茂祭で光を一目見ようと、車で訪れるのですが、同じく葵上の車と出くわし、場所争いに発展し、御息所の車はさんざんに壊されます。

これ以降、葵上を苦しめる霊が現れるようになります。御息所はその噂を耳にしながら、夢の中で自分が苦しめていることを覚えており、また朝目覚めると、加持祈祷のお香の匂いが自分にしみついていることから、自分が生霊として苦しめていることを自覚し、苦しめないようにしたいと思いますが、「思わない」と思うことも思っていることだと紫式部は書いています。

「あくがる魂」ですね。私は「あくがる」は憧れる。憧れると「あくがる=離る」ということです。

加持祈祷が行われる中、光は葵に呼ばれ、部屋の中、二人になります。臨終の間際、何か言い残したいのだろうと思いますが、葵は六条御息所の声で、苦しいから加持祈祷をやめてくれ、というメッセージを残し、そして、葵は出産後、絶命します。

六条御息所は、むすめが伊勢の斎宮となるということで娘とともに野宮に入り、姿を消します。

正妻、葵上が死んですぐ、美しくは成長したものの、まだ幼い若紫を光は妻としてしまいます。

 

朧月夜との関係をきっかけに源氏は須磨、そして明石へ。亡き桐壺帝によって、ふたたび京へ。

話は少し前に戻りますが、朧月夜です。この話は巻で言えば、葵の前になります。

光源氏は、宮中で催された宴のあと、朧月夜(ここでは人名ではなく)に誘われ、弘徽殿、つまり、右大臣側のエリアに入り込みます。そこで詠まれた素敵な歌を耳にして、素性もわからぬまま一人の女性と関係を持ちます。それが朧月夜。

しかし、彼女は右大臣家の女性で、実は朱雀帝と結婚する予定の女性でした。源氏は朧月夜と逢瀬を重ねます。

そして、葵上が世を去り、若紫と結婚。

このあたりから、風向きが変わっていきます。

桐壺帝が病でこの世を去ります。罪の意識にさいなまれる藤壺は、出家。後見を失い、愛する女性に拒絶された源氏は朧月夜と逢瀬を重ねますが、それが右大臣家の知るところに。朧月夜と朱雀帝の結婚はとりやめに。右大臣家、弘徽殿の女御は怒りくるいます。

このあたりから光の状況は悪化。要するに権力争いに敗れ出すわけですね。

現状、桐壺帝の子ども、朱雀帝の弟であるのちの冷泉帝が東宮です。これ、源氏と藤壺の子どもですが、このままでは、東宮の地位が危ないと感じ、光は自ら須磨へと流れることになります。

須磨は連日の嵐。実は京も嵐であることを知るのですが、この光が流れたことが関係のあるような印象です。

ある嵐の夜、光の夢枕に亡き桐壺帝が現れます。そして、「ここにいるべきでないこと、自分が朱雀帝に伝えることあること」などを告げて去ります。

夢の通り、同じように桐壺帝からの夢のお告げのあった明石の入道が、光を迎えに訪れ、光は明石に。

明石では明石の入道が娘を源氏に嫁がせようと画策します。結局は源氏も明石の御方を受け入れますが、そのことを知った紫の上からなじられ、明石の御方と疎遠になるなど、明石の入道をやきもきさせます。

京では、たたりであるかのように、朱雀帝が目をわずらいます。光を流したことが原因ではないかと噂され、そして、光を京に呼び寄せることに。

京に戻った光は、権力を取り戻していくのです。

 

そして、源氏の息子冷泉帝が誕生、源氏の栄華に…でも紫の上の苦悩は深まる

京に戻って間もなく、朱雀帝は病が癒えず、世間的には弟、そして光と藤壺の子、冷泉帝が誕生することになります。いよいよ権力は光のものに。

ここからはここまで、光と関わった女性たちのその後を回収していくような展開。

明石の上には姫君が誕生し、末摘花、花散里、空蝉などと再会を果たしつつ、六条御息所はこの世を去ります。娘、斎宮の後を御息所は光に託し、光は養女とした上で、冷泉帝に入内させ、彼女は梅壺女御(後に秋好中宮)となります。

頭中将は娘を先に入内させていました。この娘がこのときの弘徽殿の女御、です。絵の好きな冷泉帝は絵の上手な梅壺女御に心がかたむきます。弘徽殿は帝の気持ちを向けようと、贅を尽くした絵を集めて梅壺、つまり光側と競います。これが「絵合はせ」。源氏の須磨の絵日記で、光側、梅壺側が勝ちます。

その後、光の二条東院が完成します。花散里を呼び寄せ、そして明石の上と姫君も呼び寄せます。悲しむのは、紫の上。結局、紫の上だけは、自分だけが愛されるという時間がないんですね。

このころの関係は、明石の上と紫の上という構図。しかし、明石の姫君は、紫の上になつき、今後の教育を考えても、明石の上はどうしても田舎の出という印象が強く、きちんと紫の上に育てさせたい。紫の上は同意しますが、これはこれで明石の上は悲しみます。

しかし、今後を考えれば、仕方のない状況。明石の姫君は紫の上が育てていきます。

梅壺院はこの二条院に下がり、光と「春と秋とどちらが好きか」と論じあい、秋が好きと答えて秋好中宮と呼ばれます。

このころ藤壺が亡くなり、そしてそのタイミングで、源氏は冷泉帝に、出生の秘密、つまり、自分が実の父であることを明かします。冷泉帝は帝の地位を源氏に譲ろうとしますが、源氏はこれを固く断ります。

それでもなお、光は、朝顔の君という女性に言い寄ります。そのことが紫の上を苦しめ、源氏は過去の女性達について紫の上に語る。

その夜、夢枕に藤壺が現れます。罪が知れたことを恨み、光は供養をするのです。

 

いかがでしたか?特に源氏が須磨、明石から京に戻るあたりまでを押さえられるといいですね。

いろいろな女性と浮き名を流す、というのは間違っていませんが、実は、そんなに同時にたくさんということでもないんです。

葵を正妻とした上で、空蝉、夕顔。2人とも光のから姿を消します。末摘花と花散里は確かに間に入ってしまいますが、メインは藤壺のおもかげのある若紫を見つける話。この間に藤壺と関係を持ちますが、若紫はまだ子どもです。藤壺が出産すると、藤壺との関係は途絶えますから、このあとは朧月夜ははさみますが、このころは六条御息所への思いが冷めつつあり、だからこそ、葵と御息所との争いになる。

葵が死んだあとは、御息院も去り、紫の上が正妻に。そして流れて明石の上。

こういう状況の中、実は紫の上だけが、愛を独り占めした時期がない。

京に戻ったあとは、光が関係した女性達のその後を物語が回収して、光とともに暮らすようになってしまう…。だから紫の上だけが辛い状況にあると言えるかもしれません。

このあとは源氏が栄華をきわめつつ、彼らの子どもに物語の軸足が移りはじめます。ポイントは親友であったところの頭中将、今は内大臣ですが、彼との関係。源氏の子夕霧と、内大臣の子柏木。二人の恋と、いまだ現役である源氏が関係しながらすすんでいきます。

www.kokugo-manebi.tokyo